前号(SMU第173号)では、ライブドアの堀江社長と、楽天の三木谷社長の、お買い物が下手であることを書きました。その中でお約束した「孫正義は、狼中年」ということについて、約束どおり、論理的にそれを書きましょう。
まず、彼のよく使う言葉ですが、「企業価値の最大化」というのがあります。
これ自体は、株主にとって、最も興味のあることですから、否定するつもりは全くありません。それどころか、そのメカニズムをよくご存知のようで、この言葉に限定すれば優れた経営者だと言えるでしょう。
(いつかこのエッセイで、「孫正義氏は、ゲーム理論を実践に生かそうとしている」とか何とか書いたことがありますが、その文章は、今でも否定しません。)
「企業価値の最大化」とは、(セミナー卒業生は百も承知ですよね)当該企業の生み出す「将来キャッシュフローの最大化」とイコールです。詳細には、これと同時に、ROIC(投下資産利益率)-WACC(加重平均資本コスト)=スプレッドの最大化が必要になります。
何度も書いていることですが、企業価値創造の根源は、(ROIC-WACC=SPREAD)*IC(投下資産)ですから、この原理に忠実に経営を行っているように、「一見」見えるわけです。
たとえば、足元の現金を温存することなく、新規事業への再投資に回し、その投資のおかげで、将来のキャッシュフローが期待できるというわけです。
また一方で、その資本調達は、ソフトバンクの自己資本比率が極めて低い(わずか11%!)事からも分かるように、社債などの有利子負債に依存しています。つまり「高レバレッジ」というわけです。「ハイギアード」とも言えます。
よって、イクイティーよりデッドに頼る結果、WACCは、自動的に低くなります。
以上をもって、僕は、彼の経営は、「企業価値創造のメカニズムをよく知っている」と評価しています。
しかし・・・・
将来キャッシュフローを現在価値に資本コストによって割り引いた結果が、企業価値であることは、認めますが、本来、その「将来キャッシュフロー」は、時が進み、過去に「将来」と言っていた時間が、現在になったときに、「足元のキャッシュフロー」となるはずです。よって、時が進むごとに、過去の時点で「将来」と言っていたことが、「足元」に変化し、結果、企業価値が現実的に増大していくわけです。
ところが、彼の経営は、どうでしょうか?
結論から言えば、「いつまで経っても、将来の話」ばかりなのですよ(笑)。
ブローバンドに殴り込みをかけ始めているときは、そのときの投資によって、将来、ブロードバンドが生み出すキャッシュフローを予見させ、それが「約束の時間」に到達すると、(計画通りのキャッシュフローを生み出す見込みがなくなってしまったため)今度は、「ケータイをやらなくちゃならない」ということに持っていくわけです。結果、ブロードバンドが生み出すキャッシュフローは、次のビジネスに投下され(いや、ブロードバンドがキャッシュを生み出す前にだな)、結局投資家に帰属するはずのフリーキャッシュフローは、一向に生まれないという結果になっています。
営業C/Fが約束どおりプラスになって、その上で、それ以上の投資C/Fがあり、結果としてフリーキャッシュフローがマイナスになるのなら、話しは、ちょっとだけ理解できますけどね。ソフトバンクの場合、そもそも営業C/Fがずうっと(最近では)マイナスですからね。
確かにROIC-WACC=SPREADがプラスであるならば、その年に営業活動の中から生み出されたキャッシュフローの多くを、フリーキャッシュフローとするのではなく、再投資に向けたほうが、企業価値は増大します。ですが、極端な話、その年の営業活動から生まれたキャッシュフローを、「すべて」再投資するようなモデルの場合、当たり前ですが、「永延にフリーキャッシュフローは生まれない」ということになり、論理的には、企業価値は「ゼロ」です。
ところで、ソフトバンクの営業C/Fが、プラスだったことって、(最近)あるのですか?
無いですよね。
つまり、この会社、「足元のROIC」が常に低い・・・というかマイナスです。
企業の成長期には、ROICがマイナスなのも仕方ないことですが、いつまで経っても、成長期ではねぇ・・・・
営業C/Fがマイナス、よってROICがマイナス、よって企業価値創造は、一向に「足元では行われず」、時間が経過しても、常に「将来のキャッシュフロー」を匂わせるだけと、僕は思うのです。
以上のこと、皆さん、イイカゲン気がついたらどうですか?
あっ、そっか、「孫の代」への贈り物なのですね。ソフトバンクの株式は(笑)
(これ、ソフトバンクを一節で表現するのにいいですよね。「ソフトバンクの株式は、孫の代への贈り物」)
さらに孫正義・・・・
彼は、自分自身の首を絞める快感がすきなのかもしれません。
なぜなら・・・・
今度始めるらしいケータイのビジネスでも、これまでのブロードバンドのビジネスでも、彼の手法は、最初に「価格破壊」から始まります。(付加価値という発想が生まれないのかもしれません)
これから自分が商品を提供しようとするマーケットに、当該商品の価格破壊を持ち込んでしまったら、自分が儲けようとするときに、全然儲からなくなるじゃないですか(笑)。
確かに、「価格破壊」によってマーケットに殴り込みをかけるという手法は、極めて一般的で、成功例も多数あります。ですが、その場合、違った何か付加価値の高い商品の提供を目論んでいる場合があるわけです。
たとえば、ビルゲイツの言うところの「Get share at first , Profit later」のように、まずシェアーを押さえ、その後に、もっと付加価値の高い商品提供によって儲けるというのは、ベンチャーの常套手段です。マイクロソフトの場合、OS(Windows)は、安く配布しシェアーを伸ばし、その上でアプリケーション(Microsoft Officeなど)によって、収益を上げるという構造です。
ところが、ソフトバンクの場合、どんどん、儲からないインフラ事業に首を突っ込んでいくばかりで、その上での高付加価値戦略が見えないと・・・すくなくとも僕には見えません。
そんな戦略があったのなら、イイカゲン営業C/Fはプラスになってしかるべきでしょう。
まあ、彼の頭の中では、初期の頃、彼の会社が投資する、上記のアプリケーションに相当する企業(たとえば、Yahoo!、イートレード、などなど)への、バックアップに、ブロードバンドが助けになるということだったのでしょう。
ところが、これらのアプリケーションビジネスは、競合の出現により、おそらく彼の目論見より低い収益率しか達成できないで居るのではないでしょうか?
というより、彼のブロードバンド価格破壊によって、彼のアプリケーション会社と同等の環境を、競合のアプリケーション会社も得てしまったといったほうが良いでしょうか。
彼は、以上のことに、気がついているはずです。
よって、市場や世間の矛先をそこに向けさせないように、「注目を浴びる派手なビジネス展開」でごまかそうとしている・・・少なくとも僕には、そう写ります。
いつまで経っても「将来キャッシュフロー」のソフトバンク。
だから、いつも世間を騒がせないと、生き延びられないソフトバンク。
よって、狼少年ならぬ、狼中年の孫正義。
以上をまとめると・・・
「孫正義(=ソフトバンク)は、企業価値創造メカニズムを(イイワケとして)巧みに利用した狼中年」ということになります。
何か反論があるなら、どうぞ。
どんな反論にでも、論理的に答えますよ。
ただし、反論は、(企業価値創造メカニズムをベースに)常に論理的にしてくださいね。
酔っ払いと議論するほど、不毛なことは無いですから(笑)
もっと、書きましょうか・・・・
結局、NTT無し(=物理インフラなし)では生きられないソフトバンク。
内部に居る人材は、キャリアと報酬にしか興味の無いソフトバンク。
以上、何か、僕、間違っていますかねぇ?
以上は、僕の主観ですから、たかがブログを気にしないでください(笑)
ということで、(ああすっきりした、「社長失格」を読んだ方ならお分かりだと思いますが、彼は平気で、約束を反故にする人間です。僕は、会ったことも無い人の評価はしませんからね。)
ここまで書いておいて、何ですが、彼の良いところを・・・
「消費者にとっては、頼もしい存在ですよ。がんばってください。」
そしてNTTの皆さんへ
御社の敵は、ソフトバンクなんぞではありませんからね。
ソフトバンクなんて、放っておけばよいのです。
ちゃんと、企業価値評価を実施すれば、自ずと誰が敵なのかよーくわかるはずです。
密かに、そして確実に、バリューを伸ばしている第三者が居ますからね。
話しセミナーに変わります・・・・
どうやら、「財務が良く分からない」という方が、セミナー受講に二の足を踏んでいるということが、分かってきました。
なので、セミナー初日、「エクセルセミナー」と同時間に、「企業財務の基礎」という講座を設けることにしました。(有料、10500円です。)
出来れば、受講前に、案内ページで推奨している「財務諸表の見方」ぐらいは、読んでみてください。
「お金の理屈を体得すれば、一生金に困ることはありません。」
板倉雄一郎 2005年1月27日(分)
PS:
そうだ、先に孫さんに断っておかなければならないことがあったよ。
孫さんの所有するオンライン証券会社に僕の「お遊び口座」があります。
この口座、「(馬鹿馬鹿しい)デイトレードの体験」のための口座ですからあしからず(笑)
枠は300万ぐらいだけですよ。昨年は損失を出しましたよ。
あくまでもバリュエーションとは無関係の、「人の噂」に基づいた結果ですけどね。
「あの情報、信じるんじゃなかったぁ〜(笑)」




















