板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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幸せに生きる経済学 第4回 「キャピタルゲインはオマケ」

(ITAKURA’s EYE 「お金のなる木」 を、
 幸せに生きる経済学 第3回 「お金のなる木」 と、タイトルとカテゴリを変更しました。)

前回の幸せに生きる経済学 第3回 「お金のなる木」の続きです・・・

 

「手っ取り早く儲けたい!」

まあ、誰しもお金があるに越したことは無いですから、そう思いますよね。
けれど、そういった儲け話は、儲ける可能性(←アップサイドリスク)がある一方で、損する可能性(←ダウンサイドリスク)も当然あるわけですから、願ったところで儲けが現実になるとは限りません。

いわゆるデイトレードやオプション取引などは、正に高リスクということになるわけです。
「ごく稀に」、特殊な能力を持った方が、トンでもないキャピタルゲインを得続けるケースがあるようですが、それはあくまで「稀」であり、ついでに言わせてもらえれば、たまたま「運が良かった」ということですから、お金儲けの手段としては、一般に推奨されるべきではないと思います。

お金を稼ぐために、資産を運用するために、こう考えたらどうでしょう・・・

「現在の確かなキャッシュを差し出し、安定的なキャッシュフローを手に入れる」

 

たとえば・・・

割と安定的に、年に1000万円のキャッシュフローを生み出す「お金のなる木」があったとします。
この木の権利が、仮に1億で売られていたとすれば、利回りは税引き前で、10%。
長期金利が1.5%~2%の間で推移すると仮定すれば、決して悪い利回りではありません。
で、今権利を手に入れたとします。

権利の価格は、それが上場されていないものでも、明確な価格が提示されないだけで、日々上下します。

アップサイドリスク・・・

もし、この木の権利が、購入後1年で3億に上昇したとしましょう。
3億でこの木の権利を取得した人の利回りは、わずか3.3%。
「こんな利回りで良く買うよなぁ」と思うのであれば、さっさと売却すべきだと思います。
1年で、1億が3億になったわけですから、年間1000万円の配当分を除いたとしても、年率200%の「キャピタルゲイン」を得ることができるわけです。
ここで重要なことは、「そもそもキャピタルゲインを目的としていたのではなく、キャッシュフローの利回りに満足したから購入した」、という点です。

仮に、この木の権利の価格が、1億で変わらなかったとしても、毎年1000万円のキャッシュフローが得られるわけで、それを目的にしていたの「だが」、市場が勝手に非合理的な価格をつけたので、「オマケとしてのキャピタルゲイン」を得てしまったというわけです。

悪い話ではありません。

また、「そもそもキャッシュフローを目的に投資した」わけですから、仮に1億と100万円に、わずか1%上昇しただけで、「今売れば100万円儲かる」なんて間抜けな考えを起こすことも無いわけです。

 

ダウンサイドリスク・・・

もし、この木の権利が、購入後のある時、3000万円になったとしましょう。
キャピタルロス(評価損)は、7000万円!です。

かなりがっかり・・・でしょうか?

「~していれば」とか、「~だったら」、という視点で見れば、3000万円の時点で購入していれば、年率33%もの利回りを得ることができたわけですから、「購入タイミング」を見誤ったということにもなりますが、これは言ってもしょーがないことです。

もし、当初「キャピタルゲイン」を目的にしていたとしたら・・・

「ほっといたら評価損がドンドン膨らむかも!!!」

なんてパニックになって3000万円で売ってしまって、キャピタルロス(評価損)が実損になってしまいます。

けれど、冷静に考えれば、年1000万円のキャッシュフローに変化がないとすれば、何も市場価格に翻弄されてキャピタルロスを蒙る必要は無いと思いませんか?

むしろ買い増ししたってよいぐらいですよね。

 

 

まずは、キャッシュフローを手に入れる。

ウォーレンバフェットの投資術が正にこれです。
彼は、(バークシャーハサウェイ社を通じて)、「(投資家に帰属する)キャッシュフローが安定的に継続するであろう企業」を、「市場が間違って安い価格を提示したとき」に、「大量に」、投資してきたわけです。
仮に株価が大暴落したとしても、(それが実体経済に深く影響しない限り)、評価損は出るが、毎年のキャッシュフローがあるわけですから、「評価損なんて気にしないもん!」ってことになるわけですし、手元に過去のキャッシュフローの積み上げである潤沢なキャッシュがあるわけですから、上記の様に買い増しすることもできるわけです。

 

人は、どうしても、「手っ取り早く儲けたい」と思うあまり、高リスクの「キャピタルゲイン」に魅力を感じてしまう傾向があります。
けれど、毎日博打に勤しむことより、「まずは安定したキャッシュフロー」を得ることによって、精神的にも、経済的にも、安定していられる・・・こちらの方が「幸せに生きる」ためには重要ではないでしょうか。

 

安定したキャッシュフロー・・・

それは、「労働」でもいいわけですよね。
最初のキャッシュフローは、多くの人にとって労働でしょう。
労働で得られたキャッシュフローを生活費に充て、将来の成長のための勉学に充て、人生を楽しむための遊興に充て、その残り=個人としてのフリーキャッシュフローを蓄積することによって初めて、投資の原資を確保できるわけです。

投資原資を確保できたら、慌てて「キャピタルゲイン」を狙いに行くのではなく、「安定した労働以外のキャッシュフロー」を手に入れるべくチャンスを待つのが良いでしょう。

その投資が成功していれば、毎年投資によるキャッシュフローが得られます。
放っておけば、ドンドンキャッシュが増加します。
そのキャッシュを、これまた慌てて「キャピタルゲイン」を狙いに行くのではなく、「更なる投資によるキャッシュフロー」を手に入れるべくチャンスを待つ・・・これの繰り返しです。

これを基本としていれば、時として、上記の「アップサイドリスク」が顕在化し、思いも因らぬキャピタルゲインを手に入れるという「オマケ」が付いてくる場合もあるわけです。
キャピタルゲインは、その程度に考えるのが妥当だと思います。

 

人が儲けるための方法を大きく分ければ・・・

労働などの「価値創造」。
安く買って高く売るという「裁定取引」。
そして、「かっぱらい」(笑)ですが、その人の状態別の儲け方で言えば・・・

お金を持っているなら、お金で稼げばよい。
お金を持っていなければ、頭を使って稼げばよい。
頭を鍛えるのが億劫なら、体を使って稼げばよい。

 

どれがいいですかね。

 

2009年6月8日 板倉雄一郎

 

PS:
なんだか梅雨っぽい感じになってきましたね。
1年の中で最も嫌いな季節ですが、やってきてしまうのは仕方ないので、何とか楽しむようにしています。
意外と良いのが、屋根のあるオープンカフェなどで、シトシト雨を見ながらのBBQとか。
悪くないですよ。

てか、本日思いつきで、当事務所プレミアクラブ会員の皆さんに、「海と夜景を見ながらのオープンBBQ(屋根付き)」の募集をしてしまいましたぁ。

楽しみ(ニコニコ)  ケータイじゃないと絵文字がねぇ・・・