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「いい会社ってどういう会社？」
と聞かれて、あなたはどう答えますか？

こんにちは！板倉雄一郎事務所パートナーの石野雄一です。

この質問に答えるために、まずは、
「誰にとってのいい会社なのか？」を定義する必要があります。

投資家には、株主と債権者の二種類あります。
実は、株主と債権者とでは、「いい会社」の定義が異なることがあるのです。

もちろん、両者ともに「キャッシュフロー」をより多く生み出す企業が、
いい会社であると考えていることには違いありません。
しかし、しばしば利害が対立することがあるのです。

これは、株主と債権者とでは、
とっているリスクに違いがあることから生じるものです。

ここで、損益計算書にしたがって、
企業と企業を取り巻く利害関係者との関わり方を復習してみましょう。

企業は売上による収益を顧客から、
サービスや商品の提供の対価として受け取ります。
そこから、原材料費などのコストを取引先（仕入先）に支払い、
人件費を従業員に、労働力提供の対価として支払います。

次に、社債や借入金の利息を債権者に対して、
資金提供の見返りとして支払います。
そして、法人税や役員賞与を支払ったあとの残りが、
ようやく株主の手にわたるわけです。

このように、株主は企業の利害関係者の中で、
収益の配分を受ける順番が最後になります。

したがって、株主の取り分は、
企業が成長すればするほど大きくなります。

場合によっては、有利子負債を増やし、
企業の成長にレバレッジをかけることもあるでしょう。

ところが、債権者の場合、
企業の売上が急激に伸びようが、
獲得するリターン（＝利息）は変わりません。

したがって、債権者は、たとえ成長しなくても、
安定的なキャッシュフローを生み出す企業を好みます。

また、債権者は、自分がお金を貸すくせに（笑）、
有利子負債が少ない会社が大好きです。
なぜなら、有利子負債が少なければ、
倒産するリスクが少ないからです。

たとえば、債権者が一番重視する財務指標は何かといえば、
株主資本比率（＝株主資本/総資産）でしょう。
見た目には、返済する必要のない株主資本が多いほど、
倒産する危険の少ない安全な会社というわけです。

このように、企業をみる場合、株主は成長性を重視し、
債権者は安定性（＝安全性）を重視する傾向にあります。

つまるところ、
株主にとっての「いい企業」とは、
将来成長し、価値創造してくれる企業。
成長してくれればくれるほど、
株価上昇益や配当という形でのリターンが
大きくなるわけですから当たり前です。

一方、債権者にとっての「いい企業」とは、
たとえ成長しなくても、
キャッシュフローが安定しているということです。
これは、いくら企業が成長したところで、
債権者にとってのリターン（＝利息）は、
あらかじめ決まってしまっていることにあるわけです。

私が銀行員だった頃のことです。
ある社長が目を輝かして、計画中の新規事業の説明をしてくれました。
その新規事業がどれだけ、
企業の売上増加に寄与するかを力説する社長に、
私は、あいづちをうちながら、内心で
「下手に新しいことをやらずに、売上と利益を確保してくれればいいのに。」
と思ったりしてました（なんていう銀行員だったんだ！笑）

今でこそ、変わってきているかも知れませんが、昔は、
銀行員は「農耕民族タイプ」
証券マン（or ウーマン）は「狩猟民族タイプ」
と言われたものです。

これは、両者のビジネスの形態の違いからくるものです。
銀行業務はストックビジネスです。
つまり、過去からの貸出という資産（＝ストック）があるために、
銀行員が寝ている間にも、その資産が利息を稼ぎ出してくれます。
安定的ではありますが、どでかいリターンは望めません。

一方で、証券業務は、フロービジネス。
バランスシートを使わず、手数料で稼ぐビジネスなわけです。
したがって、自分たちが獲物を探しに、狩りにでなくては
稼ぐことはできないわけです。
不安定ではありますが、
でっかい獲物にありつける可能性はあるわけです。

銀行がリスクを好まないということも、
このような農耕民族的なビジネスの形態が影響しているかも知れませんね。（笑）

2006年8月11日　石野雄一
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