板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

企業価値評価・経済・金融の仕組み・株式投資を分かりやすく解説。理解を促進するためのDVDや書籍も取り扱う板倉雄一郎事務所Webサイト

feed  RSS   feed  Atom
ホーム >  エッセイ >  パートナーエッセイ >  By 橋口寛  > パートナーシップのココロ 第2回「価値観なるもの」

パートナーシップのココロ 第2回「価値観なるもの」

(毎週火・木・土曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

皆様こんにちは。板倉雄一郎事務所パートナーの橋口寛です。

「パートナーシップのココロ」の第二回。

今回は、パートナーシップが成功するためのインフラとして、
極めて重要な要素となる「価値観の共有」について述べたいと思います。

パートナーシップにおいて、「価値観の共有」は極めて重要な要素です。
これなしに、パートナーシップの成功はありえないと言ってもいいでしょう。
いや、パートナーシップだけでなく、
すべてのチームにおいて、「価値観の共有」は必要不可欠なものなのだと思います。

ここで注意すべきなのは、
「価値観」という言葉が、非常に曖昧な言葉だということです。
そもそも、パートナーシップで共有すべき「価値観」とは何なのでしょうか?

私が『パートナーシップ・マネジメント』を書いた時に、受けた反論の中に、
「価値観が同じ人間だけでメンバーを集めるなんて、異常だ。
価値観のぶつかり合いの中からこそ、新しいものが生まれるんじゃないか。
金太郎飴からは、イノベーションなんて生まれようがない。」
というものがありました。

私は、この反論についても、しごくもっともなことだと思います。
この方の言い分も正しい。
しかし、私の言い分も正しい。
両者は、ただ「言葉の定義」が違うだけなのです。

完全に共有化された価値観とは、決して金太郎飴を意味するものではありません。
それは、むしろ対極ともいえるものでしょう。

海外のビジネススクールでは、「ダイバーシティ」という言葉が、強調されます。
日本語に直訳すると、「多様性」という言葉になるでしょうか。

性別、言語、国、年齢層、前職における役職レベル、出身業界・・・。
さまざまな切り口で「ダイバーシティ」を確保することに、ビジネススクールは躍起になっています。
これは、多様性こそが生み出す「ゆらぎ」や「相克」の中からこそ、新しい気づきを得られることを、長年の経験の中で会得しているからでしょう。

同じ事象を見ても、さまざまな「切り口」や、「ものの見方」や、「意見」があります。
自分という一人の人間の中にある、均質化された視点からは気づかないもの。
それらに触れる「気づき」こそが、人のフロンティアを押し広げていきます。

これらは、「ものの見方」「視点」とでも呼ぶべきものです。

一方、パートナーシップの根底に存在すべき、共有の「価値観」とは何か。
それは、「哲学」であり、「行動原理」であると思います。

その人が、何のために生きているのか、何を大切にしているのか、何を譲れないのか、何を恥と思い、何を誇りに思い、何のために命をかけ、何のために命を投げ出せるのか。
つまり、その人の生き様そのものだと思います。

仮に、金のために人を騙すことに何らの精神の痛痒を感じない人と、人を騙すことほど恥かしいことはないと思っている人とが、パートナーシップを組んでしまった場合、その結末は必ず悲劇的なものに終わります。
世の中には、そうした悲しむべき組織がいかに多いことか。

我々板倉雄一郎事務所のメンバーは、「ダイバーシティ」に溢れています。
アントレプレナー、戦略コンサルタント、投資銀行マン、会計士、弁護士、ベンチャー勤務、メーカー勤務、個人事業主・・・。
バックグラウンドが異なれば、当然「ものの見方」もまた、さまざまです。

私自身、自分では思いもよらないものの見方に、
「そんな発想があるのか・・・」
と気づかされることもしばしばです。
(一番そういう機会を多く提供してくれるのは、takamura氏ですが)

しかし、「行動原理」としての「価値観」については、極めて強いレベルで共有化されていると思います。

我々は、本質的な「価値」の創出を伴わないインカムには、恥を覚えます。
したがって、そうした方法での事業拡大は、決してありえません。
(価値増加を伴わない時価総額向上策などはありえないことです)

我々は、さまざまな情報の非対称性を利用した、不当な経済価値の移転を許せません。
したがって、フィナンシャル・リテラシーを高めるための活動を、今後も改良しつづけます。

我々は、ものごとの本質は、「名前」や「見てくれ」にあるのではないと思っています。
したがって、見た目を取り繕うことに、ほとんどお金をかけません。

我々は、「人」こそが、あらゆる価値を生み出す源泉であると強く信じています。
したがって、セミナーにおいても、人とのつながりを何よりも重視しています。

こうした価値観の共有の凄さを感じたのは、
真っ当な株式投資』を執筆していた時でした。

私はこれまでにも共著本を書いたことがありましたが、
共著本の執筆というのはなかなか難しいものです。
特に今回の『真っ当な株式投資』のように、「哲学」や「本質」に関わる内容の場合は尚更です。

A氏が書いた内容を、B氏が直し、それをまたA氏が直し、、、
そうしているうちに、さっぱり統一性を失った本になってしまうようなことも、少なくありません。

しかし、「真っ当な株式投資」においては、ほとんどそうした気遣いは無用でした。
一人で原稿を書いている時でも、あたかも「複数人で書いている」ような気がしたのでした。
そして、その後の原稿統合化作業は、必要最低限度のものに収まりました。
それは、価値観が共有されていたからこそ、なのだと思います。

これは、一例にしか過ぎませんが、
「共有化された価値観」は、さまざまな価値提供物の、
コストを引き下げ、
スピードを引き上げ、
クオリティを引き上げる方向に働くのだと思います。

そして何よりも、関係者全員のストレスレベルを劇的に軽減し、
チームにダイナミズムとハッピーを生むのだと思います。

2007年3月24日  橋口寛
ご意見ご感想、お待ちしています!

PS
最後に宣伝です(笑)。
真っ当な株式投資』間もなく発売です。
是非読んでくださいね!

次回パートナーエッセイは、3月27日(火)にShimoda氏が担当します。

パートナーシップのココロ 第1回「パートナーシップとは何か」