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統計のお話 第11回「飛行機事故を予測する?!」

(毎週火・木・土曜日は、パートナーエッセーにお付き合いください。)

板倉雄一郎事務所パートナーのK.Shimodaです。

本日も統計の時間がやってまいりました!

“読むだけで数字に対する直感力が身に付く”
「統計のお話し 第11回」をお届けいたします。

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1. 【日常生活編】飛行機事故を予測する?!
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あっ!電球が切れた!

3年持つと言われる、電球が2年ほどで壊れてしまいました。
こんな経験は、どなたでもありますよね。

・眉毛が書いてある”当たり”のコアラのマーチを見つける
・あるデパートで子どもが迷子になる
・ある交差点で交通事故が起こる
・街を歩いていて、100円拾う

これらのような滅多に起きないことが予測できるとしたら
どうですか??

そういった滅多に起きないことを
確率的に、予測することが、実はできます。

例えば、ある年に1回だけ、アメリカで飛行機事故が起こる確率は、
0.00003945%です。
(日本の飛行機事故の例は数が少なすぎるため米国の例です。
元データはこちらのページ参照。)

かなり少ない、ですよね。小さすぎて感覚的には解りません(笑)。

ちなみに、知らないと損するエアライン“超”利用術よりますと、
東京─ニューヨーク間約1万キロを12万5,000回往復して死亡事故に遭う人数は0.04人、
10時間のホノルル─福岡の飛行を14万3,000回往復して事故に遭う回数は0.07回、とのことです。

自動車事故の確率が0.03%といわれていますので
(ソースは失念しましたが)、
それに比べても、凄く小さい確率であることがわかります。

ところで、この
“今年1回、アメリカで飛行機事故が起こる確率”
0.00003945%というのはどのように求めたのかといいますと
ポアソン分布、を使いました。

ポアソン分布??なんじゃそりゃ。
という声が聞こえてきますね(笑)。

式にすると下記のような感じです。

うーん、ますます解りにくくなってしまいました(笑)。
でも簡単に使えますので、もう少しお付き合い下さい。

この式の中で、変数はμとxだけです。
μは1年間に飛行機事故の起こる確率
xは1年間にx回起こるというあなたの指定の数

例えば、平均して年間に0.5回起こることが(μ=0.5)
今年の間に1回起きる(x=1)確率は、上式に
(μ=0.5、x=1)を代入すれば求まります(30%強になります)。

(ちなみにeは自然対数といわれるもので、
エクセルに=exp()と入力して出てくる数のことです。
また“!”のビックリマークはビックリしているわけではなくて、
“階乗”を表しています。4!=4×3×2×1という意味です。)

このように滅多に起こらない事件が、今年起こる確率を
求めることができるのが、ポアソン分布、というわけです。

さて、ここまで読み進めて、
日常生活でどうやって活用するんだろう??
と思われた方はスルドイですね。

実は、日常生活ではあまり使えません(汗)。
スイマセン。その代わりビジネスでは非常に使えます。

というわけでビジネス編いってみましょう!

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2. 【ビジネス編】統計をあなたのビジネスに活かす方法
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本日のテーマはポアソン分布です。
ポアソン分布は次のような場合に使えます。

・ 1ヶ月間に製造する製品の不良率を5%以内に減らす
・ 豆大福の製造において、豆が2個以上入っているようにする
・ 交通事故を減らすために交通規制を何回行うか
・ サッカーで実力下位のチームが番狂わせを起こす確率

例えば豆大福の製造の例で見ましょう。
ポアソン分布に当てはめると、
平均5個(μ=5)の豆が入るようにしたときに、
豆が1個しか含まれない(x=1)確率は、
式に当てはめると、約3.4%になります。

これは、平均5個の豆を入れておけば、
不良率(豆が1個しか含まれない)を3.4%に下げることができる
ということです。

不良率をどこまで下げる必要があるかを決めて、
それを達成するのに、豆を平均何個入れるかを求めるだけです。
これで、過剰サービス(豆の入れすぎ)も避け、
コスト削減が出来るかもしれません。

結構カンタンですね!
実際に製造現場ではこういった計算を元に意思決定をしています。
もし自社工場をお持ちの方がいらしたら、
計算してみるのも良いかもしれませんね。

さて、このように便利なポアソン分布ですが、
使ってよい3つの重要な条件があります。

それは、下記の3つです。
1. 滅多に起こらないことであること
2. 起こりうる状況が沢山あること(試行回数が多い)
3. それぞれの事象は独立でお互いに関係しないこと

例えば、交通事故は、
・滅多に起こらない(という程ではないですが)
・起こりうる状況が沢山あり(自動車は今日も大量に走っています)
・さいたま市で起きた事故が横浜市には影響しない
(それぞれの事故に関連性がなく独立している)
ため、ポアソン分布を使ってよいことになります。

この条件に注意しつつ、是非あなたのビジネスに
適用できないか考えてみてくださいね。

2007年3月27日 K.Shimoda
ご意見ご感想、お待ちしております!

PS
冒頭で飛行機事故の話をしましたが、
飛行機のパイロットの平均寿命は短いという話を
(現職のパイロットさんから)聞いたことがあります。
理由はX線を浴びる量だとか、身体に掛かるGだとか
諸説あるようです。

飛行機事故に会う確率は低かったとしても、
本当に寿命が減るとしたら恐ろしいことですね。

統計のお話バックナンバー
統計のお話 第10回「検定の危うさ」

次回のパートナーエッセーは3月29日(木)にTakamura氏が担当します。 





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