板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

企業価値評価・経済・金融の仕組み・株式投資を分かりやすく解説。理解を促進するためのDVDや書籍も取り扱う板倉雄一郎事務所Webサイト

feed  RSS   feed  Atom
ホーム >  エッセイ >  パートナーエッセイ >  By K.Shimoda  > 統計のお話 第5回「アンケートって…」

統計のお話 第5回「アンケートって…」

(毎週火・木・土曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

板倉雄一郎事務所パートナーのK.Shimodaです。
本日も統計の時間がやってまいりました!

“読むだけで数字に対する直感力が身に付く”
「統計のお話し 第5回」をお届けいたします。

=====================================
1.【日常生活編】聞き方一つで答えが変わる
=====================================

仕事の昼休み、あなたは同僚と一緒に
街に繰り出しました。

すると突然、街頭インタビューされました。

『あなたは憲法の改悪についてどう考えますか?』

さて、この質問に対して、
「今回の改悪には賛成ですね?」
と、答えられる人はいますでしょうか(笑)??

改悪、と質問に含まれている時点で、
回答者の答えがある程度限定されてしまいます。
まぁ、こんなわかりやすい例はマレでしょうけれど・・・。

仮に
『あなたは憲法の改正についてどう考えますか?』
という質問文章であったとしても
インタビュアーが、いかにも否定的な雰囲気で
聞いてきたら、答えに大きな影響を及ぼすでしょう。

多くの人にとって、
“今、自分の身に関係ないこと”(例えば憲法改正)を質問されても、
漠然とイメージで答えるしかないのではないでしょうか。

いきなり街角で、上記の“改悪”と限定を受けたり、
あるいは否定的な雰囲気で質問を受けたら、
テキトーに、そしてインテリっぽく(笑)、
何かしらの意見を答えるのではないでしょうか。

答えの統計結果がどうなるかは目に見えていますし、
そうなることを望んで、データを取りに行っていることは明白です。

このように収集されたデータがテレビで並びます。
で、ハキハキとしたキャスターが、フリップを見せながら、
『憲法改正は多くの人の望んでいないとの結果が出ています』
などと言ったりするわけです。

うーん・・・(苦笑)。

ちなみに私はテレビが行う調査は100%信じていません。
そのぐらいでちょうど良いと思っています。

なぜなら、テレビが調査を(お金をかけて)行う目的は、
正しいことを世の中に知らしめること、などではなく、

1.視聴率をとりたい(スポンサーの金がもっと欲しい)
2.特定の方向に世論を誘導したい

の2点に尽きるからです。

なぜこういった目的が必要なのかというと、
調査には結構なお金がかかるからです。

それでも、あえて調査を行うと言うことは、
決裁権者が“それに見合うリターンがある”と判断するからですね。

そういった調査は、鵜呑みにすると危険です!

ちなみに、アンケートから話は少しそれますが、
世論作りにも当然メディアは用いられますね。

最近の例ですが、
近頃イジメに関するニュースが頻発していますよね。

これの裏側に、“ある意図”が隠されていることは
分かりますか??

ん?何のことだかサッパリ・・・
という方は是非考えてみてください。










答えは、“教育基本法改正”ですね!

イジメが2006年になり、突然増えたわけはありません。
皆さんご存じのように、昔からありました。

が、教育基本法改正の世論作りのために、
今!イジメのニュースが増えるのです。

メディアって怖いですね(笑)。

逆に言いますと、
ある特定の話題がたくさん扱われるようになったら、
要注意ですね。

そのニュースを知った後、あなたが考えることは、
“そのニュースを目立たせることにより得をする人は誰か?”
です。

もし他愛もない話題が世の中を席巻したら、
そのニュースが目立つことによって、代わりに隠れてしまった
話題がないかを探してみましょう。

きっと面白いことが見えてくるのではないでしょうか。

今日はちょっと統計以外の話も含まれましたが(汗)、
是非、今後この考え方をご活用いただければ、
様々な場面で、メディアに翻弄はされない選択が
できるのではないかと思っています。

============================================
2.【ビジネス編】あなたのビジネスに統計を活用する方法
============================================

アンケートは、多くの企業が実施したことがあるかと思います。

その際、なんとな?く作ることも多いのではないでしょうか。
本日はすぐに使えるアンケートの文章作成のコツをお送りいたします。

■1.具体的に改善案をいただきたい場合
(定性的回答が欲しい場合)

選択肢は2択か4択にします。
選択式質問の後に自由解答欄を設置します。

例えば、サービスの改善のためのアンケートを考えます。
--------------------------------------------------------------
Q1「弊社の○○サービスは良かったですか?」
1. 良い
2. やや良い
3. やや悪い
4. 悪い
--------------------------------------------------------------
といった具合です。
その後に
--------------------------------------------------------------
Q2 「Q1で、3.やや悪い、4.悪いと
お答えいただいた方に質問です。
どういった点がお気に召さなかったですか?」
(自由回答欄)
[ ]
--------------------------------------------------------------
といった具合に、
Q1で、サービスが良かったか、悪かったかを
思い出していただいた上で、Q2を出しています。

Q1で「普通」という選択肢があると、
多くの人が普通を選択し、
Q2の回答を得られない可能性がありますので、NGです。
(さらに言うと、普通の定義は人により様々で、
ポジティブな普通とネガティブな普通があります。
“普通”を使う場合は“普通”の定義を明確にしましょう)

また、いきなりQ2のような自由記入の質問を出しても、
お客様の頭が切り替わっていませんから、
質の良い回答を得られる可能性が下がります。
(余談ですが、相手の不満足の理由を聞く場合は、
回答者にプレッシャーを与えない丁寧な言葉遣いも重要です)

改善点をお客様から出していただきたい場合は
上記の点に気をつけて質問文をつくりましょう。

■2.満足度の平均やバラツキを見たい場合
  (定量的回答が欲しい場合)

選択肢の数をある程度増やし、
具体性を持たせてあげると良い結果が生まれやすいです。

ある意味当たり前ですね(笑)。

例えば、社内のアンケートを考えて見ましょう。
--------------------------------------------------------------------
Q3「新規事業についてあなたのお考えをお聞かせください」

1. 興味がある
2. やや興味がある
3. どちらでもない
4. あまり興味がない
5. 興味がない
--------------------------------------------------------------------
これにより、多少はバラツキが見えやすくなります。
これをさらに良いアンケートにするためには・・・、
--------------------------------------------------------------------
Q3「新規事業についてあなたのお考えをお聞かせください」

1. 自分で立ち上げてみたい
2. 良い事業であれば積極的に参加したい
3. 良い事業であれば参加を検討したい
4. 興味はあるが、現実的に難しい
5. 既存事業が魅力的であり、参加は考えていない
6. 興味がない
--------------------------------------------------------------------

このように選択肢を増やし、
各項目をより具体的に明記していくことで
社内の人材の平均やバラツキを調べること以上の結果を
得ることもできます。

■3.その他のコツ

ここでは、一般的なアンケート文章作成のコツから
代表的なものをご紹介します。

・ アンケートの冒頭部分の説明は丁寧に。
・ 回答しやすい質問を前の方に。
・ 社会通念が含まれる質問はなるべくしない。
・ 自由回答形式の場合は、回答例を挙げると回答率がアップ。
・ 質問は時系列にならべる

アンケートの質問文作成の最後のチェックポイントとして
活用いただければと思います。

■4.注意点?満足要因と不満足要因について

また、アンケートの質問文作成にあたり、
・満足要因を聞いているのか、
・不満足要因を聞いているのか、
を考えることも重要です。

満足要因とは、
“満たすことによって顧客の満足度が上がり続ける要因”
不満足要因とは、
“満たさないことによって、顧客の満足度が下がる要因。
 かつ、満たされたとしても満足度が上がるわけではない要因”
のことです。

満足要因の例は、ディズニーランドですね。
他のテーマパークに比べて、より多くのサービスを提供しています。
顧客もその分だけ満足し、支持しています。

不満足要因の例としては、商品の購入です。
購入ができて当たり前ですから、
購入の際にトラブルがあったりすると
不満足要因になりますね。

そして、いくら素晴らしくスイスイ購入できても、
それにより顧客満足度が劇的にあがることは望めません。

今回は、満足要因と不満足要因の違いから生じる
誤った意思決定の有名な例として、下記を取り上げます。

--------------------------------------------------------------------
ある飲食店が来店客を増加させるために
アンケート調査を行いました。

その結果、飲食店を来店する際の決め手になる要素として、
1位:「トイレが綺麗」
2位:「料理の美味しさ」
3位:「従業員のサービス」
の順番に重要であることがわかりました。

では、さらに来店客を増やすために、
このお店がやるべきことは
“トイレの改装”なのでしょうか?
--------------------------------------------------------------------

上記3つは満足要因と不満足要因が
混ざっていますね。

1位:「トイレが綺麗」(不満足要因)
2位:「料理の美味しさ」(満足要因)
3位:「従業員のサービス」(満足要因)

そこで改めて、顧客の満足を増やす要因
(つまり良ければ良いほど、顧客の満足も大きくなる要因)
を探すためのアンケートを行ったところ、

1位:「料理の美味しさ」(満足要因)
2位:「従業員のサービス」(満足要因)
となり、トイレが綺麗であることはそれほど
上位にはならなかったそうです。

つまり、この飲食店が、
顧客に、より大きい満足度を持っていただくためには、
料理やサービスをさらに充実させる方が良い、
という真っ当な結果になります。

この飲食店のオーナーが来店客を増やすために、
最初のアンケートで意思決定をしていたら、
大金をかけてトイレを改装したにもかかわらず、
(不満は起きにくくなるが)顧客の満足度は上がらない、
そして来店客は増えない、という結果になるところだったのです。

この例のように、
“満足要因”と“不満足要因”の2つを切り分けたり、
“満足”と“重要”の言葉の使い分けを
明確にしたアンケート作りが重要になりますね。

■5.最後に重要なこと

さてさて、長いこと書いてきましたが、
お役に立ちましたでしょうか??
最後に、一番重要なことを・・・。

小さいところまで気を配り、
きっちりアンケートを行ったとしましょう。

それでも、統計的手法で解析していくと、
キレイな結果(予想通り、あるいは分かりやすい結果)が
得られることはあまり多くはありません。

大事なことは、結果から現実を読み解く
思考力や想像力、最後は直感!になります。

なんだか毎回同じことを言っている気がしてきましたが(笑)、
是非数字で思考を止めずに、その先にある“人”や“心”を
観ていきましょう!

統計的な手法ができるようになればなるほど、
解析部分に力が片寄ってしまうことが往々にしてあります。

間違った質問からは間違った答えしか生まれませんので
要注意です!(自戒を込めて)

というわけで、長々と書いてきましたが、
アンケートはそれだけで、何冊もの本が出版されるほど
奥の深い話です。

「もっと知りたい」と思った方は、
入門として、下記の本がオススメです。

実務入門 図解アンケート調査と統計解析がわかる本

今回は扱わなかったサンプリングやデータ集計方法、
アンケート調査の留意点の詳細や統計の基礎まで
全体を把握するのに適しています。

本格的な調査をしたいが
まず最初に何をしたら良いかがわからない、
といったことでお悩みの方は是非。

2006年12月19日 K.Shimoda
ご意見ご感想、お待ちしております!

次回のパートナーエッセイは12月21日(木)にTakamura氏が担当します。

統計のお話バックナンバー
統計のお話 第4回「相関と因果」





エッセイカテゴリ

お知らせインデックス