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統計のお話 第15回「リスクと確率分布」


(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)
板倉雄一郎事務所パートナーのK.Shimodaです。
本日も統計の時間がやってまいりました!
“読むだけで数字に対する直感力が身に付く”
「統計のお話し 第15回」をお届けいたします。
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【ファイナンス編】リスクと確率分布
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突然ですが、
リスクと言われて、どんなことをイメージしますか?
危険のことだと思っていませんか?
もしくは、リスクって投資において損をすることだと
思っていませんか?
確かに日常会話でそのように使えばたいがい意味は通じますよね。
でも、ファイナンスにおいては、リスクは危険でも損でもなく、
“不確実性”のことを表しています。
今回は、リスク=不確実性について、
イメージをつけていただきましょう!
と、その前にリスクを知るため重要な
確率分布の実例を見てみましょう。
身近な例と言うことでサイコロにて説明します。
サイコロの“確率分布”は下図の通りになります。

横軸はサイコロの目で、縦軸は起こる確率です。
横軸は取り得る可能性のある場合です。
サイコロは1~6までしか出ませんから上図の通りになるわけです。
これが投資の場合になると、横軸が6通りでは足りないですよね。
30%のリターンを得られる場合もあれば、
5%しか得られないこともあります。
25.3%の場合もあれば、8.438%の場合もあるでしょう。
マイナス50.2319%だってあり得ますよね。つまり、連続した数になります。
投資に対するリターンが5%だったら、よくありそうですよね。
一方で30%というと少し難しい感じがします。
マイナス50%というのもある意味難しいですね。
このように、横軸をリターンとして、縦軸を起こりやすさとした場合、確率分布が下図のように表されます。

この個人の例で言うと、この個人が100万円投資して、
20%のリターンを得ることは多そうです。
80%のリターンを得ることは難しそうです。
逆にマイナスのリターンになることも、まぁありそうですね。
話はちょこっとそれますが、
多くの投資初心者の方が株式投資に参加するときの
確率分布のイメージは下図のようなものではないでしょうか。

しかし、残念ながら、こんな都合の良い確率分布は存在しません(笑)。
プラスになる確率があれば、マイナスになる確率もあるわけです。
投資家のこういった心理を行動ファイナンスでは、
オーバーコンフィデンス(自信過剰)と呼びます。
気をつけましょう(自戒を込めて)。
また、同様の意味のことを、以前のオープンセミナーで
板倉さんがお話しされていました。

100万円を300万円に増やすのに一番良い投資先はどこ?
という質問をされることがあるけれど、
多くの人はマイナスになる可能性を考えていないんだ。
100万円を300万円まで“確実に”増やす方法は働くのが一番、
なんだけどね。

どんな人でも、マイナスリターンがあり得ない、
なんてことはあり得ません。
投資される際には、そのことを忘れないようにして下さいね。

さて、話が脱線してしまいましたが、
本日はリスク=不確実性の話です。
リターンの確率分布を使って、リスクを表してみます。
リスクとは不確実性のことです。
不確実性が高い、というのを分かりやすく表現すれば、
“リターンがどうなるか分からない度合い”が高い!
といえます。
つまり図で表現すると下の通りです。

この投資家の場合は、リターンの平均は5%ですが、
1年後、60%以上のリターンを得られる可能性もありそうです。
また、逆に40%以上の損失を被る可能性もありそうですね。
感覚的な話にはなってしまいますが、
いくら平均値が5%とはいえ、
自分の資産が60%増える、あるいは40%減る、
という確率がそこそこ高い状況は、感覚的にも
望ましくない状況といえるのではないでしょうか。
一方で、次の場合は、上記のものと比べて相対的に
不確実性が低いといえます。

これは感覚的にも分かりますよね。
同じく平均値は5%ですが、
バラツキがほぼ、0%~25%の間に収まっています。
25%以上も望めませんが、0%以下になることもありません。
不確実性が前の例に比べて相対的に低いですね。
このように、不確実性(=リスク)の高さを図として
表現することはでき、幅が狭ければ狭いほど不確実性は低い、
という訳です。
ちなみに、この不確実性ですが、
数学的には、統計のお話 第13回「バラツキの評価」にて
扱った“標準偏差(バラツキ)”そのものです。
また、企業価値評価において、
ベンチャー企業は、バラツキが大きい投資対象の
分かりやすい例でしょう。
仮に予想の平均年次リターンが20%あったとしても、
それが実現する不確実性が高い=バラツキが大きいようであれば、
リスク認識があがり(=割引率が高くなり)、
現在価値は低くなります。
どんなに成長性のある企業でも
目標の実現性が低ければ、たいした価値がない、という
言われてみれば当たり前の事実です。
このあたりは、
Deep KISS第11号「期待と期待収益率」
に詳しく書いてありますので、
再読をオススメします。
不確実性を図や現象としてイメージできるように
なっていただけると理解が深まって非常に良いと思います。
2007年6月14日 K.Shimoda
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