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統計のお話 第29回「ポートフォリオ理論と行動ファイナンス」

(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

板倉雄一郎事務所パートナーのK.Shimodaです。
本日も統計の時間がやってまいりました!

“読むだけで数字に対する直感力が身に付く”
「統計のお話し 第29回」をお届けいたします。
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【ファイナンス編】ポートフォリオ理論と行動ファイナンス
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今回はタイトルを見るととっつきにくそうですね(笑)。
でも、直感で理解できるお話です。

現代ポートフォリオ理論は、なかなか現実的ではないものですが、
なぜ、現実的でないかを行動ファイナンスの側面から
検証してみたいと思います。

さて、現代ポートフォリオ理論を突き詰めると、
リターンを最大化し、リスクを最小化するためには、
“インデックスファンドに投資すべし!”
となります。

実際、真っ当な企業価値評価の勉強をしていない方には
当てはまります。

というか、勉強せずに個別企業の株を買う、
もしくは、中途半端なアクティブファンドを購入するぐらいだったら
インデックスに投資をした方が、
長期でのリターンが良くなる確率がかなり高いです。

では、なぜ、現代ポートフォリオ理論に裏付けられた
インデックス投資をみんな行わないのでしょうか。

インデックスに投資しても、
1年間で10%も増えないでしょ??といったようなな話はありそうです。

また、本当に全員がインデックスに投資をしていたら、
個別株式の価格が怪しくなってしまいます。

では、行動ファイナンスの切り口としてはどうなるでしょう??

例としては、
自分は市場に勝てるはず!という自信過剰がまず最初に上げられるでしょうね。

1年間で10%も増えないんであれば、自分でやった方がもっと
稼げるはず!というものです。

確かに、個別銘柄でインデックスを上回るリターンをあげるものは、
あるでしょうけれど、カンだけでそれを見つけて、
かつ長年にわたり維持をしていくのは不可能といっても過言ではありません。

でも!つい!自分ならもっとうまくやれるんじゃないかな~、と
思ってしまうのが人間ですね(笑)。よく分かります。

また、以前にもちょっと取り上げましたメンタルアカウンティングもかなり関わってきます。

メンタルアカウンティングとは、一言で表してみると
お金に色をつける、ということです。

ギャンブルで得たお金はパ~ッと使っちゃいやすい一方、
自分が汗水垂らして働いたお金は慎重に使うようなものです。

どうやって稼いだか、で色が付いている訳でもないですよね。
今自分の財布に入っているお金が、どの稼ぎによるモノか
なんて分かりませんよね。

でも、人はお金に色をつけて仕分けをするようです。

ポートフォリオについても同様です。
本来であれば、すでにあるポートフォリオに対して、
“何を加えるのが、リターンを最大化し、リスクを最小化できるか、”
というのを常に全体最適で考える必要があるのですが、
なかなかそう上手くはいきません。

実際は、まず安全資産(銀行預金など)をある程度蓄えて、
それを超えたら、リスクの高い投資に振り分けている、
というのが現実ではないでしょうか。

いきなり、ハイリスクハイリターンな銘柄やファンドに
全資産を集中投資する人は少ないですよね。

このように、頭の中で、“安全資産用”とか“うまくいくとかなり儲かる投資先用”とかに色分けをしているわけです。

ちなみに、
このときのポートフォリオの状態は、“もったいない”状態になります。

つまり、このポートフォリオは
同じリスクならもっと大きいリターンを稼げる状態、
あるいは、同じリターンならもっとリスクを下げられる状態に
なっていることがほとんどなわけです。

しかし、いくら現代ポートフォリオ理論が、
インデックスと無リスク資産である(?)国債の組み合わせで、
もっとも効率的で、リスクとリターンのバランスのとれた
資産運用ができる!と訴えたとしても、
自信過剰やメンタルアカウンティングには勝てなそうですよね。

行動ファイナンスは各種金融理論よりも
上位の意思決定機構としてよっぽど人間に根付いているわけです。

じゃあ現代ポートフォリオ理論って意味があるんでしょうか??

私はそれでも、理論に意味はある、と考えています。

理由の1つめは、ポートフォリオ理論から、
悪名高き(笑)CAPMが生まれてきています。
悪名は高いですが、CAPMなしで金融工学がここまで発展できたかは
わかりません。
結果自体は怪しいものですが、客観的に価値を算出できる、
ということは凄いことだと思います。

理由の2つめは、理論を通して市場の力学あるいは構造を
知ることができるから、です。
理論は、資産運用にそれほど影響を及ぼすことはないと思います。
しかし、理論があるから、行動ファイナンスの罠に陥らない
意思決定ができることも多々あるのです。

理論の重要性を語っておきながら、なんですが、
当ブログのエッセイをお読みいただいている方に
金融工学の分厚い本を勉強して欲しいなんて思いませんし、
時間の費用対効果的にオススメできません(笑)。

ですが、現代ポートフォリオ理論も行動ファイナンスも
なんとなく知っているだけでも、
知らないよりかははるかにマシですからね。

当ブログに限らずですが、興味のあるテーマや理論がありましたら
インターネット上で検索し、ちょこちょこ読んでいただくことを
個人的にはオススメしています。

2008年2月19日 K.Shimoda
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