板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

企業価値評価・経済・金融の仕組み・株式投資を分かりやすく解説。理解を促進するためのDVDや書籍も取り扱う板倉雄一郎事務所Webサイト

feed  RSS   feed  Atom
ホーム >  エッセイ >  パートナーエッセイ >  By K.Shimoda  > 統計のお話 第26回「自信過剰」

統計のお話 第26回「自信過剰」


(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)
板倉雄一郎事務所パートナーのK.Shimodaです。
本日も統計の時間がやってまいりました!
“読むだけで数字に対する直感力が身に付く”
「統計のお話し 第26回」をお届けいたします。
============================================
【ファイナンス編】自信過剰
============================================
今回は表題の通り、自信過剰というテーマを取り扱いたいと思います。
自信過剰。
なんだか、あまり良いイメージではないですよね。
すごく傲慢か、あるいは調子に乗っている感じです(笑)。
行動ファイナンスにおいて、自信過剰、と一口に言っても
細かく分けると二種類に分けられます。
一つは、楽観性を含むいわゆる狭義での自信過剰、
もう一つは自己正当化です。
前者の株式投資における狭義での自信過剰とは、
自分の投資に対する基本能力の高さや判断の正確性を
過剰に評価する傾向がある、ということです。
何と比較して過信している、と言えるのかというと
実際におきる確率に比べて、ということになります。
今読んで下さっている皆さんも、
自信過剰に陥って痛い目に遭ったことはありませんか?(笑)
例えば、株価が上昇しているときに、
「もっと上がるはず!」あるいは、
「自分は暴落の前に売り抜けられるはず!」
という自信を持って買いを入れたが、アテが外れる、などなど。
人は実際に起きうる確率よりも、自信過剰であるため、
自分にとってより都合の良い確率をイメージする傾向があります。
ちなみに自信過剰を図にすると次のようなイメージです。

この図はリターンがマイナスの可能性が存在せず、
プラスの可能性だけが存在する、といったことを表しています。
本来は、このようにマイナスの可能性だけ
切り捨てられることは絶対にあり得ません。
しかし、勝ちが連続して気持ちが高揚していたりすると、
自分が負ける可能性を過少評価してしまうのが人間です。
そして、こういった自信過剰があるから、
伝統的ファイナンス理論で求められる理論的な価格と
大幅に異なり暴騰や市場のアノマリーが起こり得る、
ということですね。
当HPのエッセイを読んで下さっている皆様であれば
大丈夫かとは思いますが、
投資の際には、そのときの気分ではなく、
きちんと価値評価に基づいて行って下さいね。
続いて、後者の自己正当化についてですが、
心理学で言うところの認知的不協和
(人がある知識、経験、行動などと矛盾したものに遭遇した時に
感じる不快感を解決しようとしてしまう心理)から
生まれるものです。
認知的不協和でよく挙げられる例として、「喫煙者」の不協和があります。
「喫煙は体に悪い」という認知に対して、
1.自己の認知を変える・・・禁煙する
2.他の認知情報を求める・・・健康で過ごしている喫煙者もいると考えて
                   禁煙を行わない
3.重要度を変える・・・肺がんにかかるより交通事故にあう確率のほうが
             高いんだから禁煙を行う意味がないとし禁煙しない。
といったようなことを考えたり行ったりするわけです。
ここでいう1.の禁煙するは自己正当化とは言いませんが、
2.と3.は自己正当化、と言って良さそうですね(笑)。
これを株式投資に当てはめるとすると、
だいぶ負けが続いて、自分の判断力を見直した方が良いのに、
「自分よりももっと悲惨な状況の人がいるはず」と考えることにより
自分を改めなかったり、
「パチンコで失うよりもまだ勉強になっているからマシだ」と考えることにより、
損失をよりふくらませてしまったり、することが考えられます。
こういった自己正当化も多くの人が行いがちなので、
自分の判断基準がおかしくなっていないかを
常にチェックしていく必要があります。
自分自身の投資の意思決定の際に、
自信過剰・自己正当化が多く含まれていないか
今一度確認してみてくださいね。
そう言う傾向が多い、という自覚がある方は
それを改めるだけでも、投資のリターンが改善されるのではないか、
と思います。
さて、自信過剰に関しての説明は以上です。
ここまで自信過剰によって起こりうる例と危険性について
書いてきました。
しかし、私は自信過剰って人にとって本来そんなに
悪いことではないのではないかと思うんです。
自信があるからチャレンジできる、自信があるから行動できる、
わけですよね。
もし多くの人が自信過剰ではなく、自信過少であったなら、
これほど活発な株式市場の取引は起きないでしょう。
慎重に、慎重に企業価値評価を行い、
200%ぐらいの自信がついて、初めて投資する、
といった投資行動を全員が取ったら
市場の効率性が失われそうな気がします(笑)。
また、多くの先人達の果敢なチャレンジも起きず、
人類の技術的進歩のスピードも遅くなっていたかもしれません。
投資においては、自信過剰に陥ってしまう自分を自覚し、
注意をしながらも、普段の生活では、
自信満々で色々なことにチャレンジしていきたいものですね!
2007年12月13日 K.Shimoda
ご意見ご感想、お待ちしております!
PS
過去の研究成果(学者さんが出した論文)によれば、
女性よりも男性の方が、自信過剰傾向が45%ほど高いらしいです。
なんとなく当たってそうですね~(笑)。
統計のお話バックナンバー
統計のお話 第25回「認知誤差2」





エッセイカテゴリ

お知らせインデックス