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統計のお話 第2回「出所の魔力」

(毎週火・木・土曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

板倉雄一郎事務所パートナーの下田です。
統計のお話第1回に、たくさんのメッセージをお寄せいただき、
誠にありがとうございました。
ご期待に添えるようしっかり執筆して参ります。

というわけで、早速、【日常生活編】・【ビジネス編】を分けて
お届けいたします。

1.【日常生活編(1)】出所の魔力に注意!

初回なので、カンタンな手口からいきましょう!

“A大学の調査によると・・・”
“B研究所の調査の結果、以下のことが・・・”

などという記事の一文を読んだことがない方は
いらっしゃらないのではないでしょうか?

そして、「ふむふむ」と最もらしい記事を読み、
「なるほど?」と信じてしまっていたとしたら・・・


危険です!

なぜなら、○×大学(や研究所)の調査、
といったって色々あるんですね。

国から助成金(つまり税金)をいただいて、
プロが行っている調査や研究の結果もあれば、
大学生の調査に毛が生えた程度のものまであります。

また、仮にプロが行った正しい調査結果で
あったとしても、国がスポンサーであれば、
ある程度国の意向に沿った形の結果のように見せてあげる、
というポジショントーク的な要素が含まれる場合があります。

さらに、調査結果自体が完全に信用できるものであったとしても、
その調査結果が調査主体の意図する通り、
新聞や雑誌の記事になってくれるとは限りません。

例えば、国の機関の調査で30代男性の既婚率が75%である、
という結果が出たとしましょう(数字は例題用に作りました)。

これを元に、全く異なる結論、つまり
「既婚者が75%もいる!」
「未婚者が25%もいる!」
という記事を書くことは可能です。しかも『国の調査の結果』
というお墨付き文言まで入れて!

以上のようにA大学(やB研究所)の調査の結果、という
文言に必要以上に信頼感をおく必要は全くありません。
データの出所を書かないと誰かに突っ込まれるから
書いているに過ぎないのです。

記事の内容と大学名・研究所名は全く関係ありませんので、
十分にお気をつけ下さいね。

2.【ビジネス編】あなたのビジネスに統計を活用する方法

私が学生時代、異業種交流会で「ビジネスと統計の関わり
について研究している」と言った趣旨の話をすると、
そのうち何人かは統計に興味があるらしく、
各々のビジネスに活用できないかを色々聞いてくる
といったことが何度かありました。

具体的に相談を受ける中で気づいたのは以下の2点です。

1.そもそもデータが取れていない
2.統計とは何かがイメージできていない

1.は結構あるのですが、相談してくださる方の側で
相談内容のデータがきちんと整備されていないことがあります。
この場合は、当然統計の出番ではありませんね。

まずは事象を数字になんとかしてでも落とし込んでみる。
ビジネス的には当たり前ですが、当たり前のことを
当たり前にやるというのは案外難しいことです。

もしこれが出来ていないようであれば、
まずはデータの整備を行うことを初めてみてくださいね。


次に2.の「統計とは何かがイメージできていない」と
いうものですが、こちらは1.よりもはるかに多いというか、
ほとんどの場合が当てはまりますね。

でも、しょうがないんです。
統計って、高校生で理系を選択しない限り勉強しないですから(笑)。

(余談ですが、理系の人だって統計をあまりやりたがりません。
微分積分とかの方がカッコイイですよね(笑)。
統計って、数学に在らず、みたいに思われている
ところがあります・・・(涙))

さて、前置きが長くなりましたが、本日は
統計とは何か、をイメージしていただくために、
統計とは・・・を解説したいと思います。

統計とは何でしょうか・・・。

一言で言えば、「要約と予測の技術」ということになります。
(もちろんそれだけではありませんよ!)

色々な情報を数学的(統計的)に整理や加工することによって、
その情報の「現状」「特徴」「傾向」「全体像」などを
把握し、それを元に今後どうなるのかを予測するのが統計です。

例えば、ここに日本人1億2000万人の身長の全データが
記録された本があるとしましょう。その長ぁ???いリストを
手渡されて、

『これが日本人の身長のすべてです』

といわれても、全く把握できないですよね。
そして、他と比較することも当然出来ない。

ところが1億2000万のリストの平均とばらつきを調べると
(ここで統計的手法である計算式がでてきます。詳細は割愛です)

平均値が165.4cm
ばらつき(標準偏差)が4.56cm
だということが分かったとします
(数値は例題用に作りました。
また身長は正規分布に従うと仮定します)。

これを図にすると

このような形になり、これはどういう意味かというと、
日本人の平均身長は165.4cmで±4.56cmの間に
約68%が含まれる、ということを表しています。

(なぜ約68%なのかはもちろん数学的に理由がある
のですが、ややこしいので割愛します)

さて、1億2000万行あったリストが
たったの2行(平均値と標準偏差)で
(大まかに)表せるじゃありませんか!

これなら把握もしやすいし、イメージもできますし、
他と比べることもできます。

ここまでがデータの把握ですね。

次に、日本人の子供が生まれたとして、その子供の身長は
どのくらいになるか。

上記のデータから約68%の確率で
165.4cm±4.56cmになるということが言えそうです。
(遺伝や個別の環境などは考慮していません。
また、未来永劫この数値である保障はありません)

これが予測するということですね。

今回はかなり分かりやすい例を挙げましたが、
同じ考え方『把握→予測』で
下記のようなこともできます
(数学的には少しだけ難しくなります)。

例えば、
■渋谷駅周辺の物件を調査して、
 新しく建てるマンションの妥当な価格を調べる
■在庫の商品ごとの日次データを調べて、
 在庫の最適化をする
■テスト商品の売れ行きを調査して、
 販売計画を立てる
などなど。

「現状を把握し、未来を予測し、来るべきときのために
手を打っておく」という考え方は統計的で、
ビジネスと凄く良くフィットします。

もしご自身の会社で上記の観点で弱い部分があるとしたら
早速取り掛かってみてくださいね。

2006年11月7日 K.Shimoda
ご意見ご感想、お待ちしております!

次回のパートナーエッセイは11月9日(木)にTakamura氏が担当します。

統計のお話 第1回「統計なんて!」





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