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統計のお話 第27回「アノマリー」

(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

板倉雄一郎事務所パートナーのK.Shimodaです。
本日も統計の時間がやってまいりました!

“読むだけで数字に対する直感力が身に付く”
「統計のお話し 第27回」をお届けいたします。
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【ファイナンス編】アノマリー
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遅ればせながら、あけましておめでとうございます!
2008年が始まりましたね。

さて、新年最初の話題は、この時期にピッタリの
アノマリーをご紹介したいと思います。

アノマリーって何?と言う方のために説明しますと、
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アノマリーとは、伝統的ファイナンスで、説明の出来ない
規則的に起きる相場の傾向全般のこと、です。
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今の時期で、有名なものに、1月効果(ジャニュアリー・エフェクト)
と呼ばれるものが2種類あります。

1つは米国の株式市場で、他の月に比べて
1月の投資収益率が突出して良い、というものです。
仮説ですが、12月で損を確定させて節税対策とするため、
1月は前年末に安くなった株の買い戻しで上がる、
という理由が考えられています。

他にもいろいろ仮説がありますが、
どれも1月効果の因果関係を明確に説明できるものはありません。
というか説明できないから”アノマリー”なんですけどね(笑)。

2つ目は、1月の相場がその年の相場を決める、と言われるものです。
1月が上昇であれば、その年は年間通じて上昇する、逆もしかり、
というものです。
これも必ず当たる、という訳ではありませんが、
なかなかの精度を誇っているそうです。

こういったような、
“明確な傾向がありますが、理由が説明できないアノマリー現象”は、面白いですね。

また、アノマリーではありませんが、
今年の干支である子年の特徴もあったりします。
干支別の過去59年間の平均騰落率を見ると
子年が最も高くなります。

つまり、12年のうち、もっとも株式市場が上昇しやすい
ということになります。

2008年はどうなるでしょうかね??
今年もこのジンクスが通用するのか、楽しみです。

他にも、この時期限定ではありませんが、
有名なアノマリーとして、低PER効果があります。
PERが低い銘柄群で構成したポートフォリオは、
高いPER銘柄で構成したポートフォリオよりも
高いリターンをもたらす傾向があるという現象です。

低PERということは、
株価が低い=リスク認識が大きい、
ということですから、
低PER銘柄に投資をすること=リスクの高い投資をすること、
となるわけです。

つまりリスクを取った投資家に対する
ハイリスク・ハイリターンの結果として、低PER効果がある、
ということですね。なんとなく納得感があります。

このように、株式市場からは色々な傾向やアノマリーを
見いだすことができますが、
短期的には、需給関係や行動ファイナンス的な市場心理などによって
動く部分がありますので、
アノマリーがいち個人投資家の収益に大きく貢献できるような
力を秘めているわけではないんですね。

しかも、これらはあくまで過去の傾向に過ぎません。

例えば、の話しですが、
直近25年間連続で、5月の第3週が上がったとします。
しかし、これから先の25年間、
連続で、下がる可能性も無いとは言えません。
確率の話しでいえば、明確な因果関係が見いだされない以上、
過去のデータをいくら分析したところで、それが未来に適用されるか
どうかは分かりません。

じゃあ、意味がないのか、というとそんなこともなくて、
因果関係の見いだせない偶然の一致でも、
一定の事象が一定周期で起こると、
それが因果関係が有ろうが無かろうが、
それを利用したり、あるいは逆を突いて利益を出そう
とする人が現れるのが現実に起こることです。

最終的に、どうなるのかはよく分かりませんよね(笑)。

色々なアノマリーやテクニカル分析を学んで、
その学んだ知識によって翻弄されるぐらいだったら、
どんな未来が来たとしても通用する、
原理原則に基づいた投資をするのが結局は一番良い、と思います。

最後になりますが、2008年の皆様のビジネスや投資が
上手くいくようをお祈り申し上げます。

2008年1月22日 K.Shimoda
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