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統計のお話 第19回「自動判断の罠」


(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)
板倉雄一郎事務所パートナーのK.Shimodaです。
本日も統計の時間がやってまいりました!
“読むだけで数字に対する直感力が身に付く”
「統計のお話し 第20回」をお届けいたします。
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【ファイナンス編】自動判断の罠
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皆さんは今年の夏はどのように過ごされましたか?
私は、8月は仕事漬けで夏らしい遊びなどはほぼ無かったのですが、
9月に入ってからようやく夏らしいことを始めつつあります。
夏はこれから!です。
でもエッセイは書きますよぉ~。
というわけで、早速始めます!
私が8月に再読した本で、
知る人ぞ知る名著「影響力の武器」があったのですが、
改めてこの本の面白さを感じると共に、
投資や市場にもかなり当てはまる部分があることに気づきました。
そこで本日は、「影響力の武器」を読んで得られたことを
シェアしたいと思います。
同書は、ロバート・チャルディーニという社会心理学者が、
人に対して“イエス”と答えさせるのはどのような要因があるのか、
それらの要因を効率的に使用してイエスを引き出すのは、
どのようなテクニックが必要なのか、
を研究したことにより生まれました。
研究中は、参与観察、つまり実際に百科事典販売組織などの、
たくさんのセールス組織に潜入調査し、
実際にイエスと言わせるプロの戦術を研究したのです。
その結果、彼らの戦略は大まかに6つに分類される、ということが分かってきました。
1.返報性 ~ 好意を受けたらお返しすべき
2.一貫性 ~ 自分の言ったことは、行うべき
3.社会的証明~不確実な状況下では他人を真似るべき
4.好意 ~ 好意を感じている知人からの誘いは受けるべき
5.権威 ~ 権威には従うべき
6.希少性 ~ 少ないモノは手に入れておくべき
セールスのプロ達は意識するしないにかかわらず、
上記の6種類の技を巧みに使い、人からイエスをもぎとるわけです。
(詳細は同書をご覧下さい)
この6つの戦略ですが、なぜ投資に関係があるかというと、
これらは、人間の根本的な性質だからです。
投資の意思決定に、人間の根本的な性質が現れやすいのですね!
さて、この6つの戦略ですが、根本的な性質なので、
これを利用されると、特定の行動をとってしまいやすくなります。
言ってみれば、人間は6種類のボタンがついた機械のようなもの、
です。
具体的には、
返報性ボタンを押された場合は、お返ししなきゃ、
と(機械的に)何の疑いもなく感じ、行動してしまう。
社会的証明ボタンを押された場合は、他人を真似しよう、
と(機械的に)何の疑いもなく感じ、行動してしまう。
このように、人は、特定の出来事が起きた場合、
その後、特定の行動をとりやすくなっています。
例えば、見ず知らずの人に、助けてもらった場合、
何かお返しをしたい!と自動的に思うはずです。
ほとんど全ての人が、自動的に、出来事に対応する
特定の考えを抱いたり、行動を取ってしまうのです。
まるで、命令に正確に従う機械のように。
怖いことですが、これは事実であり、投資の意思決定の際にも
影響を及ぼします。
この人間の機械的な自動反応を知っているのと、知らないのとでは、
投資活動に、大きな違いを生まれると思います。
下記6つのうち、皆さんはどれが投資に影響があると考えますか?
ご自身の投資経験をふまえて考えてみて下さい。
(投資経験が少なくても、なりきって考えてみて下さい。)
1.返報性 ~ 好意を受けたらお返しすべき
2.一貫性 ~ 自分の言ったことは、行うべき
3.社会的証明 ~ 不確実な状況下では他人を真似るべき
4.好意 ~ 好意を感じている知人からの誘いは受けるべき
5.権威 ~ 権威には従うべき
6.希少性 ~ 少ないモノは手に入れておくべき
自分はどういう機械的反応をしてしまうのか、を考えることは
今後の投資活動、投資の意思決定において非常に重要なので、
きちんと考えてみてくださいね!










さて、考えてみましたか??
ちなみに、完全な正解は、ありません。
ご自身で、思い当たるフシがある場合は、その状況が起きたときに、
“この状況は機械的反応をしやすい場面だから気をつけよう!”と
意識することができます。
それによって同じミスを防ぐ可能性を高めることが出来るわけですね!
私が考えたのは、以下の通りです。
2.一貫性
絶対良い!と思う銘柄を見つけたとします。
それを友人や投資仲間と共有した場合、発言をした自分は、
言行一致をするために、一貫性の原則に従って、
その後、マズイ要因が見つかったとしても、購入や買い増しをしやすくなります。
3.社会的証明
これは比較的思いつきやすいですね。
みんなが買い出したら(上昇局面)、買いを入れたくなってしまいますよね。
逆も同様です。機械的に起こる誘惑に気をつけましょう。
当事務所のWebをご覧になっている方は大丈夫だと思いますが。
5.権威
これも簡単ですね。権威のある(とあなたが思う)方のインタビューや
記事などに多少の影響は受けてしまうものです。
6.希少性
これは最も危険な性質かもしれませんね。
広告で良く見かけるのが、○○名様限定!といった類のものです。
こうなると冷静な判断ではなく、○○名から外されることを恐れて、
十分な検討時間を割かずに決めてしまうと言うわけです。
投資においても、今購入しておかなければ、後悔するかも、と
限定感を自ら醸成してしまい、あわてて決めて失敗したことは、
誰しもあるのではないでしょうか?
以上、4種類見てきましたが、これが正解の全てではありません。
大事なことは、これらのボタンが押された後、行動を起こすために
都合の良い情報を集中的に集めてしまい、
都合の悪い情報からは無意識に目をそらしてしまうことです。
良い情報ばっかり集まり、悪い情報が少ない場合、
それは、現実から目をそらしている可能性があります!
人間はボタンを押されたら、自動で反応してしまう
機械のようなものであることを自覚し、
そのボタンがいつ、どのタイミングであなたを襲って、
判断を誤らせるかは全く分からないことを知っておきましょう。
投資活動において、少なくとも、その事実を知っておくことが
大事であるように思います。
・・・と言っても、きっちり企業価値に基づいて購入の意思決定をすれば、
これらの問題は気にするほど大きな問題ではなかったりします。
人間が機械的に陥ってしまう罠にはまりたくなければ、
しっかりと自分を守る正しい知識を身につけていきましょう!
しっかり身につけたい方は、合宿セミナー(大阪・東京)へどうぞ。
しっかりと学ぶことが出来ますよ!
ご自身とご自身の資産を守るためにも是非。
2007年9月6日 K.Shimoda
ご意見ご感想、お待ちしております!
統計のお話バックナンバー
統計のお話 第18回「集団の知恵」
PS 本日紹介しました「影響力の武器」は、
・セールスに弱い方
・ついつい不利な条件を受け入れてしまいやすい方
・だまされやすい方、
などに思い当たる場合は読んだ方が良いと思います。
豊富な実例を元に、人がつい陥ってしまう罠について
分かりやすく書いてあります。
実際、著者もだまされやすいので、この研究に興味を持ったとのことでした。





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