板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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統計のお話 第16回「統計的に見た投資とギャンブルの違い」


(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)
板倉雄一郎事務所パートナーのK.Shimodaです。
本日も統計の時間がやってまいりました!
“読むだけで数字に対する直感力が身に付く”
「統計のお話し 第16回」をお届けいたします。
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【ファイナンス編】統計的に見た投資とギャンブルの違い
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株式投資は、簡潔に言うと
1.投資とはリターンとリスクの形を考えて、投資するかどうか、
2.投資するとすればいくらするのか、
を意思決定するゲームです。
1.のリターンとリスクの形というのは、
統計的に確率分布を使って表現すると下図の通りです。
確率分布の説明はこちら

この例では、期待リターンの平均値は5%を、
ボラティリティ(リスク)は20%としています。
リターンの値(上図では5%)とリスクの値(上図では20%)を考えて
投資するかどうかを決定する、ということです。
ちなみに、個別株や市場平均について、期待リターンとボラティリティを
求めることは出来ます。
しかし、これを求めても実際の運用に役立つかは甚だ疑問です(笑)。
ですので、感覚的に、
リターン(将来のFCFの割引現在価値の総和)は大きいだろうか?
リスク(その非実現性)は低いだろうか?
ということを考えます。
考える際の材料になるのが、有価証券報告書+経験+知恵であり、
良さそうな企業を探す手段が、四季報CD+経験+知恵ですね。
それをふまえた上で、投資をするのかどうかを考えます。
2.のいくら賭けるか、ですが、現代ポートフォリオ理論だとか、
難しい理論はありますが、ひとまず置いておいて、
個別銘柄に対するリスク認識の低さ(=個別銘柄に対する自信)
の影響力が最も大きい、という事は、当ブログの読者の方なら
おわかりですよね。
バフェットであれば、優良企業の(リスク認識が低い)株を
株価のほうから訴えてくるぐらいの割安で
そのときにある資金を集中的に投資します。
参考:BTB第12回 「配当目的の投資スタイル」
結局のところ、将来FCFがどれだけ大きかろうが、
割引率(=リスク認識=期待収益率)が大きければ、
現在価値は小さいものになってしまいます。
究極的には、自分で調べて自分でどれだけ納得しているか、
でリスク認識が変わり、それによって、
“いくら投資したら良いか”が決定されるわけです。
近道はないと思いますので、有価証券報告書から
多くを読み取れるようになるように、日々精進ですね。
さて、それでは、ギャンブルにまで話を拡大しましょう。
競馬にしろTOTOにしろ宝くじにしろ、
結局のところは、株式投資と同じ質問、つまり、
1.投資とはリターンとリスクの形を考えて、投資するかどうか、
2.投資するとすればいくらするのか、
に対して意志決定していくことになります。
その点で、投資も投機もギャンブルも全く一緒と言うことになります。
ここで、競馬のリスクとリターンの形を見てみましょう。
まずは、ある特定の個人の1レースだけの分布を考えます。

競馬の場合は、かなりの確率で外れて、その場合は、
リターンがマイナス100%、つまり元金が0になります。
一方で、勝った場合はそのときに応じたリターンが得られます。
そのため上のような図になります。
上図はある特定の個人のリターンの分布になります。
ここで、競馬市場全体のリターンの分布はどうなるでしょうか。
全ての人の賭け金合計のうち、75%を当てた人たちで
シェアをする形になりますので、参加者全員にとっての
リターンは常にマイナス25%となり、
図にすると下図のようになります。

それにしても、レースの間のたった数分で
市場参加者の資産合計の25%が奪われるって、
異常な状況ですね(笑)。
ちなみに、これを12回繰り返すと
(1-25%)^12=約3.17%
となり、市場参加者の資産合計が当日の朝100%の状態から
全レース終了後、3.17%まで縮小してしまうことになります。
約97%はJRAの懐に入るわけです。
恐るべし、競馬!!恐るべし、JRA!!
ちなみに、以前、私は競馬で大失敗をしました。
これらの事は当然解っていましたが、
無理っぽく感じるところほど、攻略のしがいがある、
という気持ちでチャレンジしていました。若気の至りです(苦笑)。
が、今になって思えば、数分で25%の負のリターンを
背負わされるフィールドをわざわざ選択する必要はないなぁ、
と改めて感じます。
というわけで(?)、
統計的に見た株式投資とギャンブルの違いのまとめです。
極論をしてしまえば(ホントに極論ですよ!)、
投資も投機もギャンブルも確率のゲームです。
お金を投じて、うまく行けば利益がでますし、
そうでなければ、元金が減るか、全部なくなってしまいます。
確実に利益を出したければ、債権とか定期預金などで、
わずかばかりの金利を稼ぐしかありません。
(この場合だって、激しくインフレになってしまえば、損します。)
しかし、これではあまりにも夢もないし、面白くないので、
リスクをとってリターンを得よう、となるわけです。
そして、株式投資の場合は、テラ銭が比較的少なく、
知識や経験によって、リターンをあげて、
リスクを下げることができる、という点で
ギャンブルと異なるためにオススメ、ということになります。
(競馬で食べている人は、競馬だってリスクを下げられる!
とおっしゃると思いますが、25%の負のリターンを解消できる
ほどでは無いと思います)
しっかり学ぶほど、リターンが上がり、
リスクを下げることができます。
まずは当サイトにて勉強してから、市場に参加することをお勧めします。
文章を読み込むだけだと時間がかかってしまうなぁ、と感じる方は
合宿セミナーにて一緒に学びましょう。
2日間でしっかり確実に学ぶことが出来ますよ!
2007年6月28日 K.Shimoda
ご意見ご感想、お待ちしております!
統計のお話バックナンバー
統計のお話 第15回「リスクと確率分布」





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