板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

企業価値評価・経済・金融の仕組み・株式投資を分かりやすく解説。理解を促進するためのDVDや書籍も取り扱う板倉雄一郎事務所Webサイト

feed  RSS   feed  Atom
ホーム >  エッセイ >  ITAKURASTYLE  > ITAKURASTYLE「スティール vs ブルドック(の経営陣)」

ITAKURASTYLE「スティール vs ブルドック(の経営陣)」


スティールによる、ブルドック社の新株予約権発行による買収防衛策の差し止め仮処分申請に対し、東京地裁は、「買収防衛策を決議した株主総会の判断が明らかに合理性を欠くとは認められず、著しく不公正ではない」という判断を下しました。
この件に関する、「法律論」は、当事務所の企業法務担当弁護士Mr.Moriのパートナーエッセイに譲るとして、僕は、この件について、
「双方、なんて無駄な労力と経費を使っているのだろう」
と思います。
ITAKURASTYLE 「株主総会レポート(ブルドックなど)」にて、既に書いたように、そもそも、2/3以上の株主が、スティールによる買収を「気に入らない」と思っているのなら、買収防衛策があろうがなかろうが、スティールによる同社の買収は(少なくとも現在のTOB価格では)失敗するわけであって、なにも、わざわざ、弁護士費用や労力の必要な買収防衛策を採決する必要はないし、買収防衛策は、既存株主にとって、「TOB価格次第ではTOBに応じる」という「オプション」を失うだけで、既存株主にとってのメリットはない。
ということから考えて、今回の東京地裁の判断は、(法律論を除き)どう判断されようが本質的な影響はない、と思います。
皆で寄って集って同社の企業価値を破壊しているだけ、と思います。
この件に関する「(ブルドック側の)弁護士費用」だけを考えても、
ソース何本分の「利益」に相当するのでしょうか?
もったいないですね。
株主のお金が、経営陣の保身のために使われて、
その上、株主の大部分が、「賛成!」だってさ。

よく分からないのは、スティールの対応です。
そもそも、2/3以上の株主が、
「あんたらには(少なくとも現在のTOB価格では)売らん」
といっているのに、
それでも買収防衛策の差し止めを求めていることです。
スティールは、本気で買収を考えているのでしょうか(笑)
買収が失敗したとしても、スティールは現時点で既に儲けがでますからね。
ところで、メディアの報道にも「理解不能」があります。
「ブルドックの株主総会では、
 スティールから具体的な事業計画が示されなかった」
とかなんとか、一見真っ当な指摘がされていますが、
そもそも、スティールは、ブルドックの「全株式の取得」を(すくなくとも表面上は)求めているわけですから、買収後の事業の利害関係者に、「(スティールを除く)既存株主」は、入っていないわけです。
よって、(株主の経済合理性だけを考慮すれば)株主総会にて、スティールが既存株主に対して、買収後の事業計画を説明する意味など(既存株主にとっても、スティールにとっても)全くないわけです。
これが株主総会ではなく、「従業員集会」であったり、「取引先集会」であったりするならば、スティールは、しっかり具体的な事業計画を示す必要があるとは思います。
よって、従業員持ち株会や、取引先が、同社の株主の大半を占めているのであれば、メディアの指摘も意味を持ちますが、そこまで調べて、かつ、以上の理屈を理解したうえで、メディアの指摘がされているとはとても思えません。
それとも、
「うちの娘と結婚するなら、どんな仕事をしているかしっかり話せ!」
みたいな話なんでしょうか(笑・・・結婚の場合、その後も相互に利害関係者が継続するわけですから話が違いますからね)
この件に関する、メディアの報道や評価、そして同社の既存株主の振る舞いなど、少なくとも僕には理解不能なことばかりです。
2007年6月29日 板倉雄一郎
PS:
断っておきますが、
関東人の僕個人的には「ブルドックソース」大好きですよ!
コロッケ、アジフライには欠かせません!
けれど、使うあてのない「余剰現金」を、他社の株式で運用している同社の経営には、「もし僕が同社の株主だったら」はっきりと「NO!」を訴えます。
同社が、(海外進出などの投資を行わない)安定期だとすれば、余剰現金を、さっさと配当すべきです。
いずれにしても、この会社の経営、いけてないですね。
既存株主が、「それでOK!」ということなら、どうぞご自由に、って事なのですけれど。
PS^2:
今週末は、
「実践・企業価値評価シリーズ」第25回合宿セミナーです。
過去3年間続いたカリキュラムを、今回から一新し、より実践的なカリキュラムとなります。
100名を超える再受講生の評価は?
40名ほどの新規受講生の評価は?
とても楽しみな2日間です。
ということで、週明けまでエッセイをお休みして、セミナーに集中します。
読者の皆さんも、よい週末を!





エッセイカテゴリ

ITAKURASTYLEインデックス