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ITAKURASTYLE「ブル社の買収防衛策に対する高裁判断の影響」


結論:司法は余計なことをしてくれたね。
ブルドックソースの買収防衛策を高裁が、スティールは、『濫用的買収者である』という前提に基づいて、容認しました。
そもそも、(何度も書くようですが)、既存株主の2/3以上の賛同を得た買収防衛策ですから、裁判所が容認することは、不思議ではありません。
しかし!
容認するだけではなく、「スティールは悪い奴らだ!」ということも同時に認めているところが、今後大きな波紋を呼ぶことになるでしょう。
波紋1:いわゆるファンドが日本から逃げ出す可能性
これは、日本企業の株価下落圧力になるという「害」もありますが、
一方で、「欲しかった企業の株を安く買えるチャンス」になるかもしれません。
が!
高裁の判断をメディアを通じてみる限り、濫用的買収者の「定義」が(言葉はしっかりしていますが)実に曖昧です。
悪く言えば、感情的とも受け取れますし、
拡大解釈すれば、「すべてのファンドが悪い奴らだ!」ってことにもなりかねません。
これでは、世界の投資家が・・・
「日本は気をつけたほうがいいよ、
 下手に投資すると外国人は締め出されるんだってさ」
なんてことにならなければ良いですけどね。
なるね。
波紋2:いわゆる怠慢経営者を放置することになりかねない
これは、経営資源を企業価値の最大化のために利用していない「怠慢経営者」をのさばらせる可能性があります。
ブルドックの場合も、本来株主に(配当や自社株買いなどによって)還元すべき「余剰資金」を、他社の株式で運用するなどの「怠慢」をやらかしていました。
(↑ ブルドックのB/Sには、100億円前後の「同社の事業に無関係な投資有価証券」が並んでします。)
波紋3:投資家、経営者の企業価値に関する理解を得る機会の損失
これが最もまずいです。
何度もしつこいようですが、「本当の買収防衛策」とは、
「誰から観ても、効率の良い経営を行うこと」以外にないのです。
資本効率のよい経営を行っている企業の場合・・・
1、株価がフェアバリュー周辺に収まるから、買収の標的になりにくい
2、そもそも資本効率が良いのだから、他の誰かに経営を切り替える必要がない。
わけです。
そして、最も重要なことは、
「真っ当な株主を集める経営」です。
なぜなら、仮に、グリーンメーラーが登場したとしても、
その企業の株主の大部分が「真っ当な株主」で構成されていたとしたら、
グリーンメーラーに株式を売却しない「はず」ですから、
グリーンメーラー活動は実現できないわけです。
「真っ当な株主を集める経営」とは、
上記の、資本効率のよい経営を行うことなのです。
条件が循環しているようですが、要するに、
「経営者が経営者として、真っ当に経営にあたる以外の買収防衛策はない」
ということなのです。
法規制に頼れば、法規制が増え、経営者も、株主も、従業員も、取引先も、つまり企業の利害関係者すべての身動き取れなくなります。
結局のところ、市場参加者の「モラルと知識の教育」でしか根本的な解決はできない、となるわけです。
2007年7月10日 板倉雄一郎
PS:
9時40分現在、ブルドックの株価はまだ値が付きませんね。
この期に及んで、
ストップ安(=800円台)の「買い注文」があることにも、
ストップ安以上の株価で「指値売り」があることにも驚きです(笑)
一体、なに考えているんでしょうか?
新株予約権発行決定(=株式1:4分割)によって、7月5日(権利落ち日)以降の一株あたりの価値は、7月4日以前の1/4になっているんですよ。
わけわからん。





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