板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「リクエストに答えて」

有り余る投機マネーや年金運用などが利回りを求めて世界中を徘徊を続けているわけですが、企業業績も不透明、経済成長も不透明、為替も不透明・・・ということで、どこに投資してよいかわからないので、「とりあえず」金(ゴールド)や原油に資金が集中しているわけです。
これ、金や原油の「現物需給が逼迫した結果」の価格高騰ではなく、上記の通り、単に利回りだけを求めた徘徊マネーの仕業であることに注意が必要です。
だって、経済も駄目、企業も駄目なら、一体誰が原油や金を使うというのでしょうか。
どんな注意かっていうと、「そのマネーが別の投資対象を見つければ、あっという間に形勢が変わる」という注意です。
それでも、「とにかく金を増やしたい!」という方は、是非、日々のニュースに耳を傾け、その時々で、資金をあっちに持っていったり、こっちに持ってきたりと、忙しく利回りを求めればよいと思いますが、投機のプロでもなければ(いや、プロであっても)、右往左往した挙句、結局損する場合が多いですから、ご注意ください。

さて、本日は、年末にお寄せいただいた「書いて欲しい事」に対するお答えです・・・

コメント(1):
「日経平均株価や、TOPIXなどの、「妥当な値段」は、DCF法によって求めることができるのでしょうか?」

回答・・・
それ、無理です(笑)。
でも、厳密に言えば、インデックスに採用されている企業すべての企業価値評価を行い、その加重平均を求めるという方法が、無いわけではありません。
が、非現実的ですよね。
僕は、メディアで、「日経平均が、○○円まで上がる/下がる」という表現を見聞きするたび、「一体どうしてそんなことがいえるんだろうか?」と毎回疑問に思います。
今度、そういったことを発言する方にお会いする機会があったら、是非お聞きしたいと思います。

コメント(2):
「今年は企業の不祥事(偽り)が多かったと思います。例えばコムスンなどの不正行為などをしていることを事前(世間の明るみに出る前に)に知ることができれば、UFOなどを見ても分からないその企業の生の姿を知ることができ、企業価値を算定するのあたり、かなり現実的な企業価値算定ができるのではないかと思うのです。普段の企業の生の姿(実態)を知るにはどんな方法があると思いますか?」

回答・・・
これ、よくある質問です。
経済や企業に関わる可能な限りの広い知識を習得し、当該企業に強い興味を持っていれば、自然とその企業の「実態」を把握することが可能です。
ネットが深く社会に浸透した現在、必要な情報はいくらでも手に入ります。
問題は、
(1)どんな情報が必要であるかを、「正しく把握する知識」の有無。
(2)手に入る情報を、「正しく分析する知識」の有無。
です。

コメント(3):
「私が板倉さんに書いていただきたいのは、「個人投資家がプロに勝てるのか」です。
板倉さんが常日頃より強調されている「企業価値」ですが、情報量、ノウハウ、資金量、全てに渡って機関投資家が圧倒しているなかで、本当に個人が企業価値を精査して、勝てるのか。そのために必要なものは何か。」

回答・・・
これも良くある質問です。
この質問に対する回答は、過去のエッセイでも散々書いていますので、詳しは、サイト内検索などをご利用いただきたいのですが、ここでは簡単に書かせていただきます。

まず、「勝てるか勝てないか」ということの前に、(いわゆる)プロと個人投資家の違いについて館が手見ましょう。
両者の違いは、「期限」と「時価会計」です。
プロの場合、投資パフォーマンスは、常に「時価」で測られます。
その上、パフォーマンスを測る「期間」が必ずあります。
さらに、投資判断は、多くの場合、優秀な個人の判断よりチームの判断となります。
この違いに着目し、個人投資家が有利になるような投資スタイルを実施すれば、個人投資家がプロを上回るパフォーマンスを得ることができるはずです。

たとえば、あるファンドマネージャーが、結構な割安な企業を見つけたとします。
しかし、いくら割安でも、株価が価値に対して均衡するまでにはそれなりの時間が必要ですから、彼のファンドの「パフォーマンス測定期限」が迫っていたとしたら、彼は、その企業に投資しづらいですよね。
一方、個人投資家の場合、余裕資金での運用であれば、「基本的に」期限はありませんから、価値と価格の均衡を待つことができます。
つまり、個人投資家の場合、いつでも、割安株を拾うことができ、且つ、価値と価格が均衡するまで待つことができるという利点があります。

また、株式投資の醍醐味の一つとして、「時間経過による株主価値の増大」がありますが、四半期毎の「時価会計」によってそのパフォーマンスを測られるプロの場合、そんなに気長に結果を待つことは「個人投資家の場合に比べ」できません。
誤解を恐れずに表現すれば、プロの場合、「株主価値と株価の比較」、なんてどうでもよいのです。
パフォーマンス測定期間の間に、割高であれ、割安であれ、とにかく投資した時点の株価と、現在の株価の差がすべてなわけです。
投資対象企業の業績についても、彼らプロの場合、「その業績変動が、どれほど株主価値に影響を与えるか」という視点ではなく、「その業績変動に、どれほどのお金が興味を抱くか」という視点が重要なわけです。
(このような彼らプロの投資判断が、いわゆるバブルを生んだり、その崩壊を起こしたり、現在の商品先物のボラティリティーを発生させ、経済を混乱させているわけです。)
その結果、割とアクティブに運用するファンドのパフォーマンスは、ある年、年率100%でも、翌年には、マイナス50%(←これで元に戻ってしまいます)になったりもするわけです。
その点、個人投資家が、余裕資金を、「価値と価格」、そして「時間経過による価値の増大」に着目し、長期投資を実施することができれば、「プロには絶対に勝てない」ということにはならないはずです。

株式投資が「勝ち負け」であるとは思いませんが、誰かに何かで「勝ちたい」と思うのであれば、まずは両者の「立場の違い」について分析することが第一歩です。

コメント(4):
「はじめて、「所有は幻想」と言われたときは、ガーン!と衝撃を受けました。
 幸せって、何ですか?」

回答・・・
幸せってのは、本人が、「私は幸せだ、すべてにありがとう!」と思える能力に依存するのだと思います。
「あの人より多くの金を持っている」とか、
「あの人よりいい家に住んでいる」とかいう「相対的な幸せ感」は、その幸せを感じるために結構疲れてしまうと思うのです。
本当の幸せは、個人の「絶対的幸せ感」に見出せるのだと思います。

だってほら、お金に全く困らない資産家の家庭で育ったとしても、お金があるがゆえに遺産相続で親族間でもめたりするじゃないですか。
あれ、幸せだと思います?

僕の場合、最も幸せを感じるのは、自分の周りに居る人々が、幸せそうにしているときでしょうか。
自分自身には特に変化が無いのに、周囲が幸せそうだと、自分まで幸せになりますよね。
いつもそれを心がけているとは言い切れませんが、少なくとも僕にとってはそれが幸せです。

コメント(5):
「組織のリーダーとして、組織内の気の合わない人や問題を起こす人との付き合い方、について書いてほしいです。」

回答・・・
もし、この質問をされた方が、何らかの組織のリーダーであるならば、「気が合う/合わない」という視点ではなく、「組織の活動理念に照らし合わせて、有益な人材か否か」という視点で付き合いを考えることをお勧めします。
つまり、どんな組織でも、その「活動理念」が大切だというわけです。

たくさんのご要望をいただきましたが、本日はこれまで。
また、「書いて欲しい事リクエスト」は、
(現在、サーバー障害のため入力フォームが稼動していませんので)
seminar@yuichiro-itakura.com
までメールにてお寄せください。
可能な限り、回答させていただきます。

2008年1月10日 板倉雄一郎





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