板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「ネット企業世代交代の波」

本日(2006年8月29日)の日本経済新聞朝刊一面に、
「ネット企業 世代交代の波」という見出しの記事があります。

この記事の多くの部分は、「経過報告」として間違っているとは思いません。
しかし、記事中の、「楽天の株価が低迷」という表現には、「?」です。

単に、楽天の株主価値
(=業績予測と資本コストから算出される企業価値から、
  有利子負債を差し引いた値)
に比べ、むちゃくちゃ高い価格(=時価総額)が、
適正水準に調整されつつあるだけの話であって、
決して、「低迷」しているわけではないからです。

「価値を理解せぬまま投機活動をする人たち」によって、
2005年末から2006年春にかけて一時的に形成された、
「価値に対して極めて高い株価」という異常な状態が、
その価格を付けてしまった人たちの損失を伴いながら、
終焉しただけの話です。

「株価低迷」ではなく、「適正水準に近づいた」だけの話です。
(僕個人のざっくり価値算定では、同社の株価は、まだ高いと思います。)

ハーバードビジネススクール卒MBAの三木谷社長も、
自社の時価総額が、その株主価値に対して、
相当に高いことを十分に認識していたでしょう。
だからこそ、焦ってTBS買収などの「仕掛け」を行ったといえます。
結局、価値と乖離した価格は、経営者にとっても、株主にとっても、
よろしくない結果になるものです。

きっと、「楽天の次はミクシィだ!」と、証券会社がはやしたて、
ミクシィの上場の際にも、
その価値に対して相当に高い株価が付けられることでしょう。

ネットインフラはすばらしいと思います。
ネット関連企業にも、それなりの価値があると思います。
しかしだからといって、法外な価格を付ける合理性はありません。
でも、きっと繰り返されるのでしょう。
なんら価値を生み出さない短期トレードを行うものによって、
その繰り返しは、やむことはないでしょう。
上場企業は、パチンコ台ではないというのに。

2006年8月29日 板倉雄一郎

PS:
さしずめ、
証券会社≒パチンコ店
上場企業≒パチンコ台
デイトレーダー≒パチプロ
デイトレなど投機指南書=パチンコ必勝本
そんな感じです。
でもこの場合のパチンコ店は、
パチプロにホイホイ融資までするんですから、あきれてしまいます。
この場合のパチンコ店の利益の大部分は、
もはや取引手数料ではなく、信用貸付の利息というのが現実です。
ゼロサムの中では、何も生み出されません。

PS^2:
激しく乱高下するチャートを見るたび思います。
客観的には「激しい動きですね」で終わりですが、
ズドーン!と一瞬だけ株価が高騰している山では、
「その価格で手を出した不幸な人」が間違いなくいるわけで、
(同じ価格で売り手と買い手が出会うからこそ株価が形成されます)
かわいそうにも思いますが、自業自得ですから仕方ありません。
価値算定の術を持っていれば、
こんな価格で絶対に手を出さないのに=損をしなくてすむのにと、
思ってやみません。





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