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ITAKURASTYLE「投資循環~日産とゴーン経営」


日産自動車の株主総会に関するニュースが報道されています。
ゴーン社長就任以来初の「減収減益」にかかるゴーン経営に対する批判です。
ゴーン経営とは要するに、
「研究開発費や新車開発費といった『投資』を抑制することによって、
 今の利益を追求する代わりに、将来の稼ぎを犠牲にした」
といえます。
事実、「業績不振」の原因として考えられるのは、
1、新車投入が減ったこと
2、トヨタのように「エコ」を謡う車種を持っていないこと
だからです。
当たり前の話ですが、どのような企業でも、
将来のキャッシュフローのための投資を抑制すれば、
足元の利益(フリーキャッシュフロー)を最大化することができますが、
一方で、
将来の売上高、営業利益、そしてフリーキャッシュフローの減少を招きます。
日産の「V字回復」とは、まさにこの手法に加え、
ゴーン就任当時に、ゴーンの働きに全く無縁な新車投入が相次いだからです。
当然ながら、就任したその期に、ゴーンの働きによって、
いきなり新車を市場に投入することなどできるはずがなく、
新車投入ができたのは、ゴーンが就任する前の投資判断によるわけです。
だから、「ゴーンは無能だ」と早合点はできません。
90年代後半の日産に、
「業績悪いけど、将来のためにもっと投資をしよう!」
なんてことが実現できたかを問われれば、
ゴーンでなくても、できなかったといえるでしょう。
あの時点での経営判断は、100%間違っていた、とはいえないわけです。
しかし、
カルロスゴーンの経営手腕は、「巷の評価が高すぎた」
といえるでしょう。
いずれにしても、経営の難しさは、
「今と将来のバランス」ということだけは確かです。
僕が何度も、
「単独期の業績に振り回されては真っ当な投資はできない」
と主張しているのは、以上のようなことです。
企業価値は、単独期の会計上の数値によって判断されるわけではないのです。
2007年6月20日 板倉雄一郎
PS:
それにしても、ゴーンの記者会見における「イイワケ」は、
かなり苦しかったですね。
というか、「車好き」としては、このところの日産車は、
一体どうしちゃったのだろうか、と思うような車が多いわけですけれど。





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