板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「私はそんなに馬鹿じゃないもん!」

土曜日、ネット証券口座を開いたばかりの「これから嬢」と食事をしました。
三浦半島は佐島辺りの鮨が食べたい、と思い立ち、
彼女を誘ったのがきっかけでした。
ドライブ時間がたくさんあったので、話が始まりました・・・

板倉「たとえば、1000円で買った株が1200円とかになったとするでしょ。」
こ嬢「うん」
板倉「すると、評価益が出て、わぁ~い!と喜んで、儲かったつもりになって、余計なモノを買ったりするわけ。」
こ嬢「うんうん」
板倉「で、今度は、その株が800円とかになったりもすると」
こ嬢「うんうん」
板倉「評価損が出て、もっともっと下がってしまうのでは無いか!と強迫観念に囚われ、損切りしたりするの」
こ嬢「なるほど」
板倉「で、多くの個人投資家は、ドンドン損をするの」
こ嬢「そりゃそうだよね」
板倉「だから株式投資は、とてもリスキーなの、しっかり勉強してからね」
こ嬢「え~~~でも、私そんな馬鹿じゃないもん!」
板倉「・・・・・・・・」
こ嬢「そんなの、誰だって、ドンドンお金が無くなるのわかるでしょ」
板倉「そう思う気持ちはわかるけど、実際に相場に向かうとそうなっちゃうの」
こ嬢「私、そんなに馬鹿じゃないもん」
板倉「本当にそうなら、いいけどね」
こ嬢「じゃあどうしたらいいの?」
板倉「先ず、自分で考えてみて」
こ嬢「・・・・いい会社に投資すればいいんでしょ?」
板倉「そりゃそうだけど、いい会社かどうかは、どうやって見分ける? 消費者や顧客にとって、いい商品を提供しているからといって、株主にとってもいい会社、とは限らないんだよ。」
こ嬢「・・・たとえばトヨタとか、よさそうじゃない。この車(=ランクル)みたいなの作ってるし、利益も出してる。」
板倉「確かにいい会社だよ。だけど、どれほど良い会社でも、高く買ってしまったら、しばらくの間儲からないよ」
こ嬢「あっ、そっか・・・・じゃあ、安いときに買う」
板倉「どうして安いか高いかを判別する?」
こ嬢「株価が下がったとき」
板倉「じゃあ、10日間株価が連続して下げたら、安いといえるのかな・・・さらに10日間下がるかもしれないよ」
こ嬢「そうだよね」
板倉「ほら、わからないでしょ。きっと損するよ。」
こ嬢「え~~~、でも、私そんなに馬鹿じゃないもん!」
板倉「・・・・・・・」
こ嬢「だって、株式投資で得した人の話しよく聞くよ」
板倉「・・・・・・・損した人は、その話をしないだけ。」
こ嬢「ふう~~~ん」
・・・・・しばらく無言が続く・・・・・(笑)
板倉「もし、その株の妥当な価格・・・これを価値っていうのだけれど・・・それが1500円だ、とわかっていたとしたら、どうする?」
こ嬢「下がっても、上がっても、1500円になるまで売らない」
板倉「だよね。でもそれがわからなかったら?」
こ嬢「買わない」
板倉「だよね。で、どうしたら価値がわかる?」
こ嬢「わからない」
板倉「なら、価値がわかるようになるまで、株式投資は止めた方がいいよ。」
こ嬢「えぇ~~~~だって、せっかく口座開いたのに」
板倉「・・・・・・・・」
こ嬢「どうしたら価値がわかるようになるの?」
板倉「セミナーに来るかい?」
こ嬢「だって高いんでしょ」
板倉「ほら、価格だけ見て価値がわかってないじゃない」
こ嬢「????????」

とまあ、通常コンナ感じなわけです(笑)
そんな「一般人」に「生株」を買わせようとする「規制緩和政策」とは、
一般人を「カモ」に仕立て上げる政策と言って過言では無いでしょう。

モノには順序というのモノがあります。
経済やファイナンスに関する知識の「著しく低い国民性」の土壌で、
いきなり「貯金を止めて投資にしましょう!」なんていったところで、
多くの人が損失を出すだけです。
「著しく低い理由」は、
経済やファイナンスに関する教育が行き届いていないからです。
決して、「日本人は馬鹿である」ということを主張しているわけではありません。
むしろ、世界的に見ても極めて優秀な国民だと思います。

景気回復!なる妄言が飛び交っています。
しかし株価は、適正水準に戻らない企業もたくさんあります。
一説によると、個人投資家の過去の損失が原因で、
いわゆる「戻り売り」による株価下げ圧力があるからだそうです。
百歩譲れば、確かにそれらも株価が価値に対して低迷している企業が存在する原因でしょう。
しかし、本質的には、「価値を把握できない対象に資金を投じる者」が多数存在することが原因です。

価値がわからない対象に大切な資金を投じて損をする。
そして、
その分を取り戻そうと、
価値に価格が届かないのに利益確定する。
結局、「お金」だけしか信じられない人々を生み出してしまう。
おかしな現象です。

そもそもその国の「通貨の価値」というのは、
主にその国の「企業活動」によって、担保されています。
たとえば、トヨタ自動車をはじめとする大企業がダメになるなら、
同時に「日本円の価値」も下落してしまうわけです。
株式に「絶対的な価値」など無いように、
通貨にも「絶対な価値」など存在しないのです。
すべては相互に関連しているのです。

通貨、株式、債券、不動産、車・・・
これらは「経済価値」の「ある瞬間のカタチ」に過ぎません。
大切なことは、
1、今の経済価値のカタチを、別なカタチに変換するとき、
  「差し出す価値」 < 「受け取る価値」の状態で変換する事が
  とても大切です。
  これは、双方の価値を把握できなければ実現できません。

2、価値交換によって手に入れた価値が、
  「時間経過とともに増大するか否か」を知ることにより、
  持っている価値に不安を抱くことが無くなります。

いつも書いていることですが、要するに、
「現時点での価値の把握」、そして、
「時間経過による価値の増減」について理解することが、
すなわち経済を理解するということに他なりません。
この部分に気がつけば、
「経済的に豊かになるためには、価値を生み出すことが合理的である」
とわかるはずです。
そして、「通貨は、価値交換の媒介に過ぎない」ということも、
お分かりになるでしょう。
「通貨」ほど、「時間経過に弱い経済価値のカタチ」は他にありません。
(通貨を通貨のままずっと保有するということは、
 デフレーションの場合でも、運用機会損失というコストが発生します。
 インフレーションの場合なら、言うまでもなく、時間経過と共に、
 通貨の交換価値は下落してゆきます。
 つまり、社会の役に立たない経済価値は、
 時間経過とともにその価値が破壊されてゆく、ということです。)

で、価値を効率よく生み出すためにも、
やはり経済的な価値把握はどうしても外せない、となるわけです。

板倉「セミナーにおいでよ」
こ嬢「でも高いし」
板倉「だよね。株式投資で失敗しないと、その価値に気がつかないんだよね(笑)」
こ嬢「えっ?」
板倉「だって人は、間違った方法でも、負けるまでやり続けるからさ」
こ嬢「・・・・・・・・」
板倉「そのときには、セミナー価格を遥かに超える損失を出すことになるんだけどね(笑)」

でもこの「これから嬢」は、
「板倉さん安くしてよ!」とか、
「ただで招待してくれるの?!」とか、
そういう馬鹿げたことを言わなかったので、良かったです(笑)
身銭を切らなければ、真剣な学習などするはずも無いのです。

その後、お鮨やら結婚やら、よくある話で盛り上がり、
(↑ 僕と「こ嬢」の結婚についてではないよ。一般論ね)
楽しいドライブデートとなりました。

もし僕が、「わかっていない人」だとすれば、
もっともっと「その瞬間の会話」は弾んだでしょう。

「株式投資! 俺も最近やってるんだよね。
 そうそうABC社は、近々分割するらしいぜ!」
「うっそー、買お!」
とかね(笑)

しかし、楽しいのは、あくまで「その瞬間」だけで、
こんな二人の数ヵ月後は、
互いの傷を舐めあう関係になっているでしょう。
(舐め合うなら、もっと別のところを・・・あっ、失礼)

2006年7月10日 板倉雄一郎

PS:
こ嬢に教えてもらった「佐島のシラス」は、とっても美味しい!
「釜揚げシラス」とご飯だけで、十分食事になっちゃううまさ。
是非お試しを。

PS^2:
最近のマイブームは、スーパーVIVAホーム!
楽しくって、たまりまへん(笑)
先日は、スーパーVIVAホーム新習志野店に隣接する、
VIVAショップの生鮮市場にて、
「ボイル毛蟹」、「生毛蟹」とも、298円!!!!!!!
にびっくり。
僕は、海老蟹アレルギーなので、両親に食べてもらったところ、
「美味しい!」ということでした。

「消費者」にとって、素晴らしいお店です。
が、トステムのこの事業部門の収益は・・・・・・・・・
蟹を安くしすぎたせいです。
↑ 嘘です。この辺りは大型店の激戦区だからです。
激戦に生き残り、勝利すれば、その後は利益を出せるでしょう。
しかし、そのときは、消費者にとって、都合が悪くもなります。
経済は、常に循環しているのです。
結局、「生み出した価値」程度にしか儲けられないものです。

「良い商品を提供していると思う企業の株を買いなさい」
なんて、インチキ話が、その昔ありましたよね(笑)

投資すべき企業とは、
利害関係者への経済価値配分にバランスが取れている企業です。
バランスとは、「継続可能性」のためにとても大切なことです。
利害関係者の一部にだけ価値を余計に提供すれば、
それが顧客であれ、株主であれ、債権者であれ、従業員であれ、
その企業の継続性は得られません。
したがって、企業価値は小さく、
また時間経過とともに価値が増大することもありません。





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