板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「ご祝儀相場」

昨日(2006年9月7日)の報道番組にて、紀子様ご出産を受けての、
ご祝儀相場を期待した個人投資家が紹介されていました。
大引け後の街頭インタビューに答えるこれらの個人投資家は・・・

「いや~もっとあがると思ったんだけどねぇ」とか、
「あまり変わらないですねぇ」とか、
そんなわけのわからんことを答えていました。

当該企業の業績に(少なくとも直接)与える影響がない、
つまり、価値に変動がない状態で、価格だけが上昇するとすれば、
そんな価格上昇は、かなり短期に元の水準に戻ります。

ケースは逆ですが、2006年1月のライブドアショックのとき、
日経平均はおよそ500円ほど下げましたが、
そもそもライブドアに無関係な企業の株価は、
つまり、ライブドアショックによって価値に影響のない企業の株価は、
1~2日で元の水準まで戻しています。

もし企業価値に変動がない状態での「ご祝儀相場」が発生したとすれば、
それは明らかに「喜ぶべきことではない」と思います。
なぜなら、
一時的な株価上昇は、高値で掴む人が居るおかげで形成されるわけで、
その人は、後に損失を被るわけですから。

その損失分が、出産なり、結婚なりをした家族に届くのであれば、
それは確かに「ご祝儀相場」でしょう。
しかし、現実には、市場参加者間のゼロサムでしかありません。
高値で掴んだ人の経済価値が、高値で売り抜けた人に移転するだけです。
まったくもって「ご祝儀相場」という意味が、僕にはわかりません。

日経平均は、ほとんど変化がありませんでした。
資本市場が成熟に向かっているのではないか? と淡い期待をしたりして。

ただし、一部の企業(たとえば結婚だとか出産に関連する企業)については、
将来の業績に変動がある(=価値が増加する)と考えることの合理性を、
否定しません。


次の「ご祝儀相場」は、2007年の正月でしょうか。
正月早々、高値掴みなどしたくないですよね(笑)


「株価上昇=いいことだ!」と思っている馬鹿者が、
政治家の中にも、官僚の中にも、一般の中にもたくさん居ます。
「企業価値上昇=いいことだ!」と思いますが、
「価値に変動がない価格だけ上昇」は、結果として、
「価値と価格の乖離」を大きくします。
これは、喜ぶべきことではありません。

なぜかって?
価値増加を伴わない価格上昇の現象を、一般的に「バブル」といいます。
バブルがいいのは、その最中だけです。
付けは、必ず回ってきます。それもすべての利害関係者に。

2006年9月7日 板倉雄一郎





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