板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「美人投票」

(ITAKURASTYLEです。)

僕の大好きなTV番組に、「どっちの料理ショー!」というのがある。
皆さんもご存知かと思います。
この番組、まさに「美人投票」ですよね。

番組の最後に、料理を食べるはずの出演者が、どちらかの料理に投票する。
投票数が多い料理に投票した人が、投票した料理を食することが出来るというルール。
投票数が少ない料理に投票した人は、何も食べられない。
投票までの間、双方の料理人は、ひたすらプレゼンテーションを続けるというわけです。
プレゼンテーションを見聞きする出演者は、「Aの料理の方が食べたい」と思っても、同時に、「他の出演者は、どちらが食べたいと思うだろうか」という思考が欠かせないと言うわけです。
大変面白い番組です。

この例のように、「たった一度だけ投票が行われる」のであれば、美人投票を否定しません。
というより、美人投票以外に、出演者が料理を食べられる方法は無いですからね。

しかし、現実の株式市場では、毎分、毎時間、毎週、毎月、毎年、投票が行われています。
このように投票が連続的に行われる場合、リスクを最小限にするためには、美人投票論に翻弄されるのではなく、「自分自身が本当に価値があると思える対象」に投資し、その価値を市場が認め、価値と価格が均衡するのを待つことが、最もリスクを小さくします。
実は、価値に基づいた、いわゆるバリュー投資が、結果的に長期保有の場合が多いのは、それが正義であるとかいうことではなく、その方がリスクが小さくなるからなのです。

ちなみに、「単なる長期保有」=「バリュー投資」では、絶対にありません。
「私は、バリュー投資を行っている」とおっしゃる方の多くは、「単なる長期保有」を指している場合が多いです。
バリュー投資とは、読んで字のごとく、投資対象の価値に対して投資を実行する手法を意味します。
価値を把握する知識や技術を持っていない人が、単に適当な企業の株式を長期で保有する場合、運良く、割安&価値創造の企業を持つことができ、結果として資産を増加させることが出来るかもしれませんが、運が悪ければ、割高&価値破壊の企業を長期で保有し、どんどん資産価値が低下する場合もあるわけです。
「単なる長期保有」=「アホルダー」ってことですね。

それが投資である以上、価値に対して投資して始めて投資です。
価値を無視し、価格だけに投機すれば、単なる博打です。
「私は、バリュー投資をしています」という方には、是非、「どのように価値を把握しているのか?」と聞いてみてください。
多くの場合、結構あやふやな価値把握の仕方の場合が多いはずです。

このところの株式相場の動きは・・・
TOPIXなり、日経平均などのインデックスが上げているときは、いわゆる「人気株」が上昇し、
インデックスが下げているときは、いわゆる割安放置株が上昇する傾向にあるようです。
(↑ あくまで僕がウォッチしている範囲に限られます)
そして、上げトレンドにある銘柄は、ほぼ1週間ごとの周期で、25日移動平均に対して、上方に乖離したり、25日に移動平均に近づいたりを繰り返しています。
このような相場のトレンドを掴むことも、ある意味必要かもしれません。
しかしながら、投資対象企業の経営者による「次の一手」を、テクニカル分析では、読むことは出来ませんし、その「次の一手」は、多くの場合、テクニカル分析の範囲を大きく上回るインパクトがあるのです。

結局のところ、企業への投資は、「人(=経営者、従業員、そしてその構造)」に対する投資なのです。
ってことは、投資で最も大切なことは、「経営者を見る」こととなるのです。
経営者の言葉と、実際の経営オペレーションに整合性があり、かつそのオペレーションが合理的であるか・・・これに尽きます。
(↑ あっと、いい経営でも、その企業の株価が、現時点で割高だったら、しばらく待ったほうがよろしいです。)
その上で、価値計算を行い、価値に対して相当に安い価格がミスターマーケットによって提示されているときに投資を実行するのが合理的と言うわけです。

投資である以上、投資家が、しっかり儲けられなければ、少なくとも一次的な投資の意味はありません。
また、「運」によって、短期にゲインを得られたとしても、それを継続することは不可能です。

価値の把握および、価値創造の効率について、当該企業を十分に分析した上で投資を実行すべきです。
ほかならぬ投資家自身のために。

参考エッセイ:KISS第123号「美人投票」
(なお、このエッセイは、12月発売の「おりおば」にも収録されています。)

2005年11月25日 板倉雄一郎

PS:
なぁ?んて書いたところで、
「じゃあ、価値計算はどうやるんだ」とか、
「企業のオペレーションが、価値に与えるインパクトはどうやって把握するんだ」
と言うことになりますよね。
そういう疑問が出てきた人は、既に、価値計算および価値創造についての理解を得たのも同然です。
後は、それらを理解するために、適当な書籍を読んだり、全うな投資家の話を聞いたりすればよいわけです。
おっと、それを学習するために20万円程度の生涯コストを支払っても良いと思う方は、当事務所の合宿セミナーにいらしてくださいね。
(↑ やっぱ宣伝なのかぁ?!)

PS^2:
昨日の「どっちの料理ショー」は、「クリームコロッケ」と、「カキフライ」でした。
僕は、海老&蟹アレルギーなので、美人投票する余裕はありませんでした(笑)
まあ、どっちに(心の中で)投票しても、出演者ではないですから、どっちにしても食べられませんが。





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