自分の会社が「新規に発行した株式」を価値に対し「非常に高い価格が形成される手段」を用い、自分の「会社を応援しようという個人投資家」に売りつけ、しかも売上高に計上する・・・。
こうした「偽装された業績」を頼りに、また応援者が増える。
そして、以上の「Death Spiral」が繰り返された。
株式分割という「魔法の杖」が限界に達すると、多くの個人投資家にとって、その意味合いなど理解できないであろう、MSCB(=Moving Strike Convertible Bond)を発行する
既存株主の経済価値が毀損され、引受証券会社が儲かるだけのオペレーションだが、恐らく国民の大多数は、その仕組みを理解できないだろうし、理解する必要もないのかもしれない。
なぜなら、そんな複雑で難解なオペレーションを利用する経営者がいなければ済むことだからだ。
この戦略を「練った人間」、それを「認めた人間」は、違法か適法か?ということ以前に、自らの征服欲のために、既存株主や新しく株主になる人達を欺いていることに自らの心が痛まなかったのだろうか?
世の中には、「それでも改革に取り組んだのだから、またがんばって欲しい!」と、この期に及んで表明する人たちさえいる。
彼らは「改革」と訴えるが、むしろ、証券取引法などが「規制強化」されたことが分からないのだろうか。
何と痛ましいことかと思うが、彼らには、その「仕組みそのものを理解する知識」がないだけであって、本当は「真っ当な心」を持っているのだと信じたい。
けとばされたり、殴られたりすれば、自分が毀損されたことを専門知識がなくとも理解することができる。しかし、こと経済となると「内在された毀損」に気がつくことが難しくなる。
その難しさを逆手に搾取が続けられた。搾取される側の応援の元に。
個人投資家が搾取され続けたにもかかわらず、「誰にでも分かる価格下落」という毀損の表面化が起こるまで、毀損されたことさえ分からなかったのだろう。
その上、その「価格下落」でさえ、「当局の都合による封じ込め作戦だ」などと表現する人たちもいる。
確かにそうかもしれない。だが、発表されている情報を見る限り、明らかな法律違反である。取り締まるのが当然だ。「もっと他に取り締まるべき相手がいるだろう!」という意見もあるようだ。
恐らく、ことの重大さに思いを馳(は)せたことがないのだろう。
たかが「風説の流布」程度で、当局があれだけの捜査を実施したりしない。 ひと一人が生きていれば、社会との関係の中で、プラスの側面もあれば、マイナスの側面もある。しかし、今回の事件のスプレッドは、プラス面をどれほど積極的に評価しても、残念ながら大きなマイナスでしかない。
今、我々は「岐路」に立たされている。
今こそ、「経済と資本の仕組み」を知らねばならない。
もはや、サッカーのルールや仕組みを知らずにピッチに上がることは、自分自身と社会に対する「罪」でさえある。
法律スレスレを漂いながら、時に一線を踏み越えながら、他人から経済価値を搾取する人間ばかりになることがグローバル・スタンダードなら、そんなもの少なくとも僕は必要ない。
その仕組みの基礎について、学び、その上で、日本人としての品格を残せばよい。
2006年1月20日 板倉雄一郎