板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「リアルバリュ会ランナップ」

昨日(2006年5月28日)は、当事務所主催「リアルバリュエーション大会」でした。
この会は、当事務所の「実践・企業価値評価シリーズ」の卒業生(既に400名以上の卒業生がいらっしゃいます)の中から、希望者が集まり、チームを組み、制限時間内にあらゆる情報と知識を駆使して、一つの上場企業のバリュエーションを行うものです。
すべてのチームにバリュエーション結果をプレゼンいただき、僕の独断と偏見(?)によって優勝チームが決まるというイベント。
これまでも、特に採点の無いスカイプを使った「オンラインバリュエーション大会」は定期的に開催しているのですが、今回のように会場を借り、リアルで行ったのは初めてでした。

いつもの合宿セミナーも大変楽しいのですが、今回は、「顔見知りの方々」だけの企画とあって、また別の楽しみがたくさんありました。
参加いただいた60名ほどの卒業生の方々に、この場を借りてお礼を申し上げます。
皆様に参加いただいたおかげで、とても楽しい日曜日を過ごさせていただきました。
ありがとうございました。

で、そうは言っても、「バリュエーションに完成は無い!」ということで、いくつか気になった点を書かせていただきます。
独学に勤しむ読者の方々の参考になれば幸いです。

1、「木を見て森を見ず」

これは、ほとんどの参加者の傾向でした。
当日の企業のビジネスモデルから最適なシート構成を考えるべきところを、セミナー受講の際に作った「一つのケースとしてのエクセルシート」に翻弄され、細部に集中し、全体を見損なう傾向がありました。
企業のビジネスモデルは、業種業態、そしてその企業の成長ステージなどによって異なります。
当該企業の・・・
企業価値に大きなインパクトを与える因数は何か?
成長を妨げるボトルネックは何か?
いくら効率よく経営したとしても、マーケットサイズは十分にあるのか?
想定したシナリオに沿って予測した将来業績の結果に現実性はあるのか?
など、本来重要視しなければならない点が、見落とされる傾向にありました。
エクセルシートや、DCF法は、単なる計算機に過ぎません。
その計算機に入力する因数に、現実性、合理性を織り込むことが最も重要です。
この点、今回も口をすっぱくしながら力説してまいりました。

2、「理論におぼれ、現実を軽視する」

ビジネスモデルのブレークダウン、数値のグラフ化、投資循環などの理論面に囚われ、そもそもその企業の「商品」の評価、や、経営者をはじめとする「利害関係者の評価」がおろそかになる傾向が見受けられました。
過去の「数値」は、確かにたくさんの貴重な情報を提供してくれます。
しかし、それらを実現しているのは「人」であり、企業価値の源泉は「商品」にあります。
これらの現実的な評価、は、企業価値評価において非常に重要です。
理論に間違いがあっては困ります、が、理論におぼれてしまっては現実を見失います。
現実を見失わないためには、理論を完全に習得する必要があります。さもなければ、理論に翻弄されてしまいますから。


優勝チームには、次回のリアルバリュ会までの期間、当事務所発行の有償物、有償サービスを無料にする特典があります。
が、参加者は、そんなことより、「腕試し」を楽しんでいたように思います。

知識や道具は、使って効果が出て初めて意味があります。
「わかったつもり」が悪だとは思いませんが、もったいないとは思います。

何かを発見したとき、楽しいです。
その発見を、誰かに伝えて喜んでもらえたとき、うれしいです。
結果として社会に何かを貢献できたと感じたとき、満足します。
この過程がハッピーの根源だと思います。

読者の皆様におかれましても、是非、ご自身の持てる知識や経験を思う存分、仕事に遊びに生かして、楽しい時間を消費していただければと思います。

自分の周りに居る方々の笑顔を見ていることって素晴らしいと思います。
その笑顔に、少しでも自分が貢献できているとすれば、なお素晴らしいです。

(なお、今回のような卒業生向けイベントは有償ではありますが、(会場費、懇親会の飲食代などの支出により)当事務所の収「益」は全くありません。だから偉いと言うことではなく、すべての卒業生に「実践に使える知識」を得ていただくことが、僕たちの活動の目的、ということをご理解いただければ幸いです。)

2006年5月29日 板倉雄一郎

PS:
そろそろSMU,KISSの書籍がご予約いただいた皆様の御手元に届く頃だと思います。
ご意見、ご感想などいただければ幸いです。
気に入っていただければ、この書籍が「ボロボロ」になるまで、使い込んでください。
書籍そのものを「ことさら丁寧に大切に扱う」必要は無いと思います。
書籍を丁寧に扱うこととは、すなわち、そこに書かれている文章の価値を十分に吸収することだと思います。
もちろん、僕の主張を鵜呑みにする必要などありません。
異論反論があって当然ですし、その異論反論をご自身なりに他人に説明できるように組み立てる過程も、ご自身の知識を増大させるためにとても大切なことです。
皆様の将来のために、この書籍がお役に立てれば幸いです。

 





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