板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「第29回合宿セミナーランナップ」

先週末(2008年3月8日~9日)は、実践・企業価値評価シリーズ第29回合宿セミナーでした。

今回もこれまで同様、大変楽しい2日間を過ごすことができました。新規に受講された方、再受講の方、そして当事務所のパートナーの方、本当にありがとうございました。

<新規受講生の顔ぶれ>

今回も様々な経歴、年齢、職種の方々に参加いただきました。
米国MBAの方1名。
大手商社勤務の方2名。(内1名の女性は、商社の「温暖化ガス排出権取引」プロジェクトのメンバーでした。)
企業の経理財務部門の方数名。
証券会社の方1名。
個人事業主の方数名。
過去の合宿セミナー受講生の親族の方1名。
今回たぶん初の公務員の方1名。
この春から大手新聞社に入社する「ジャーナリズム」に関する留学をされた方を含む学生の方2名。

などでした。

今回の初受講生は16名。
これまで3年半の期間で29回開催した合宿セミナーの実績の中で、初受講の方が最も少なかった開催でした。受講者数はこの数ヶ月、まるで株価の推移と同調するように減少傾向にあります。この「需要減」による合宿セミナーの今後の開催については後述します。

<今回取り上げた評価対象企業>

講義用評価対象企業は、前回に引き続き「ビールも売ってる不動産事業会社」であるサッポロホールディングス。サッポロHDを取り上げたのは、スティールパートナーズとの関係がもろもろ進展したことを受けてです。

受講生のグループによるワークショップ評価対象企業は、ファナック。
これまでの評価対象企業の大部分がその顧客にとっての「消費財」を商品とする企業でしたが、今回のファナックは、初めてその顧客にとっての「資本財」を商品とする企業です。

飲料や食品、そして自動車などの大衆消費財を商品とする企業と違い、工場設備やロボットなどの資本財を商品とする企業の場合、それを永遠に販売し続けること=顧客の工場などの生産設備がどんどん増え続けることを意味しますから、売上高を過去のトレンドから拾い将来に向けてテキトーに伸ばすという手法は大変危険です。
この点、今回の受講生の方々の場合、残念ながら(というかそういうミスを私たちに指摘されることこそがセミナーの価値なのですが)、売上高予想において組み込めていたワークショップチームはわずかでした。こういったことは、セミナー受講などを通じて基礎的な理論を学んだ上で、数々のケーススタディーを積み上げることによって初めて学習できることです。

様々な企業の企業価値評価を行う際、最も大切なことは、「その企業の経営者に来週から就任するつもり」になって、
①当該企業について有価証券報告書などから十分な情報を得る。
②経営者が事業計画を作成するように将来業績を予測する。
ということが大切です。

経営者の立場になるということは、すなわち、当該企業のそれぞれの利害関係者の立場を考慮するということを意味します。
企業価値評価シートに入力する各種因数については、当該企業の利害関係者(顧客、従業員、取引先、債権者、株主)それぞれの立場を考慮し、それぞれに対応する因数(売上高、販売管理費、原価、資本コスト)などを予測することが必要です。
これらの真っ当で現実的な将来業瀬予測と企業価値評価は、実は、「一度でも経営の経験のある方」にとって、割とすんなり理解できることなのですが、その経験が無い方の場合、やはりケースを積み上げることによって、ビジネスモデルの把握、バリュードライバーの把握という理論的な側面を学習することによって可能になります。
卒業生の皆様にも、今後のケーススタディーの積み上げを是非行っていただきたいと思います。

<今後の合宿セミナー開催について>

突然ですが、次回の「実践・企業価値評価シリーズ」第30回合宿セミナーが、「合宿形式のセミナー」としては、最終回になります。
開催予定は、2008年5月10日~11日。

最終回合宿セミナーの受講者募集、および、合宿セミナー形式での開催終了の理由、そして、その後のセミナーの開催については、今週中にこの場でお知らせいたしますので、暫くお待ちください。

以上、セミナーランナップでした。

2008年3月10日 板倉雄一郎

PS:

先日のエッセイで、「日本経済新聞の記事の質が向上しましたね」と書いて「しまいました」が、今回の受講生から指摘されある記事をチェックしたところ、
「はぁ?なんですかこのトンチンカンな記事は!」
を見つけてしまいました。

安易に評価すべきではないですね。企業もメディアも。

この記事、いわゆる企業の「資金調達サイド」について書かれた内容ですが、これ既に何度も書いていることですので、今回は僕からのエッセイは割愛し、法律面から当事務所企業法務面担当パートナーの次回エッセイとさせていただきますので、お楽しみに。





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