板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「ミクシィ上場」

昨日のエッセー、ITAKURASTYLE 「王子、北越TOBを断念」
の後半部分に記述した、
「ミクシィの上場時株式時価総額≒1000億円」という記述に対して、
何人かの読者の方から、
「いくらなんでも、それは間違いじゃないか」という意見をいただきました。

確かに、「そりゃ間違いだろ?!」と最初は僕も思いました(笑)
もちろん僕は、彼らの新規公開時UFOに記載の情報と、
仮条件のオファリング株価(130万円~155万円)から、
上場時の株式時価総額が1000億円前後であることを算出しています。
よって、計算そのものに間違いはありません。
しかし、僕自身も「桁間違いか?」と思い、何度も電卓をはたきました(笑)

このオファリング価格について、
株式投資をわかっていない評論家やメディアが、
「人気がある」とか、「需給の関係」などと、
安易に片付けている(=いや、素人投資家を煙に巻いている)のを見るたびに、
「こんなことしていると、いずれ株式市場そのものが衰退する」と、
僕は危惧します。

DeepKISS第89号「需給による株価変動???」に詳しく書いたとおり、
個人の価値観によって、その価値算定が大きくぶれるモノならともかく、
金融商品のように、
「出すのもキャッシュ、受け取るのもキャッシュ」である場合、
その価値算定は、少なくともある一定の範囲に収まるものです。
確かに株式投資の場合、
投資対象企業の業績予測(=投資家に帰属するキャッシュフローの予測)は、
評価者によって異なりますし、
また、
投資対象企業に対するリスク認識(=キャッシュフローの割引率)も、
評価者によって異なります。
よって、株式の場合、債券のように、
その上限価格を明確に決められるわけではありません。
しかし・・・超楽観的に彼らの将来業績をざっくり予測してみても、
少なくとも「僕の能力と想像力の範囲」では、
どうやっても1000億円の株主価値にはいたりませんでした。
きっと、主幹事・大和証券SMBCの株価算定(=バリュエーション)は、
僕の能力をはるかに超える「想像力」によってなされたのでしょう。

断っておきますが、
「ミクシィには価値がない」と主張しているわけではありません。
どれほど価値があっても、(価値に対して)高い価格で買ってしまっては、
少なくとも資産運用という目的に対しては意味がない、という主張です。
ミクシィの上場を妨害したいわけではありません。
僕が懸念しているのは、他でもなく読者の皆さんの「お財布」です。

また、僕の想像力の方に問題があり、
彼らの目論見が正しいと判断される将来が実現される可能性を、
「否定はしません」。

2006年8月31日 板倉雄一郎

PS:
ミクシィの株価算定を行った主体について、しっかり記憶しておきましょうね。
まあ、もっと「えげつない株価算定」によるIPOは、
他にいくつもありますけれど。

株式市場を運営するのは東証ではないのです。
私たち投資家がその運営主体なのです。
私たちが、しっかり目利きをしなければ、私たち自身が損失を被るのです。





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