何人かの読者から、
ITAKURASTYLE「おーい日本経済新聞さんよぉー」に意見がありました。
「日経は、~~~~と計算しているのではないでしょうか」とか。
いくつか頂いた意見の中には、確かに帳尻があるような計算ケースがあります。
それはそれで、良いのですが、僕が主張してるポイントは・・・
1、お金の出入りの時間価値を無視すれば、どんな計算をしても意味がない。
2、資本コストを無視した「回収」という定義など全く意味がない。
3、最も重要な問題は、「回収」ではなく、ソフトバンクの企業価値の変動。
ということです。
(こうして書かなくたって、ちゃんと読めばわかると思うのですが)
また、株式投資であれ、企業買収であれ、
「支払う価格と、将来キャッシュフローの交換」という点では全く同じです。
この場合、支払う価格は、
被買収企業の簿価ではなく「(交渉による)時価」です。
それを支払うことによって得られる価値とは、
「投資家(一次的には買収企業)に帰属する将来のキャッシュフロー」です。
また、支払う価格には、必ず「資本コスト」が存在します。
よって、
「(新規投資対象の)投下資本利益率 > (買収企業の)資本コスト」
の場合にのみ、企業買収は成功と言えます。
もっと具体的に書くと・・・
「被買収企業が生み出すであろう投資家に帰属するキャッシュフローを、
買収企業の加重平均資本コストによって、現在価値に割り引いた値が、
買収企業にとっての、被買収企業の価値(=Present Value)。
この値の範囲での買収なら、買収は成功。
この値を大きく上回る価格での買収なら、買収は(一時的には)失敗。」
ということです。
もちろん、上記には「一時的」と書いているように、
買収後のシナジー効果によっては、PV以上の価格を支払っても、
必ずしも失敗とは言い切れません。
しかし、
シナジーが生まれるとしても、
それを得るには、それなりの「追加のコスト」がかります。
(ただし、被買収企業の価値算定の段階で、買収企業の事業とのシナジー効果を、将来キャッシュフローに反映している場合には、PV以上の価格での買収は、直ちに失敗です。)
よって、重要なのは、シナジーおよび新規に調達する資本のコストです。
これらがわからなければ、分析不能。
なぜなら、
新規に(有利子負債で調達するらしい)資本の調達コストと、調達額によって、
初めてソフトバンクのD/E比率と加重平均資本コストが割り出せるからです。
とにかく、資本調達コストは、企業価値に非常に大きなインパクトを与えます。
ソフトバンクの場合、その調達コストは、けして安くありません。
昨年だったか、一昨年だったか、ソフトバンクが実施した社債の利率は、
(ユーロ建てではありますが)9.375%だったりします。
以上の参考エッセーは、過去のエッセー全部(笑)
2006年3月9日 板倉雄一郎
PS:
「回収期間」が、7年であれ、20年であれ、それ自体はどうでもいいの。
そんな計算、何の意味もないの。
しつこいようだけど、
来年受け取る1000億円と、再来年受け取る1000億円では、
額は同じでも、現在価値は全然違うの。
日本経済新聞の記者には、
せめて「おりおば」程度の知識を持っていただきたいと、思う次第です。