板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「自分を信じることによる一貫性」

いわゆる「投機術」に関する書籍をこのGW中に何冊か読みました。

「~流投機術」とかいう類の書籍ですが、少なくとも僕の目には、これらの「独自の手法」を謡い、読者の購買意欲、知識吸収意欲を誘う投機術書籍のほとんどが、「同じことを言っている」と写りました。

さらに、それらの投機術は、おおむね「行動ファイナンス」の学術的研究成果に根拠を置いていることが良くわかりました。

ちなみに、「行動ファイナンス」に関するお勧めの書籍は、
『行動ファイナンス―市場の非合理性を解き明かす新しい金融理論』 ダイヤモンド社、ヨアヒム・ゴールドベルグ (著)・リュディガー・フォン・ニーチュ (著)

(突然連載を中止した「統計のお話」も、おおむねこの書籍からの抜粋が中心であったため中止することにいたしました。
もし「統計のお話」の連載の「続き」を読みたいと思われた方は、是非上記の書籍をお読みください。
他にも、行動ファイナンスに関する書籍は山ほどありますが、その基本的な知識は、上記書籍で十分得られるはずです。)

話を戻します・・・。

いわゆる「投機術」に関する書籍の(僕が内容を確認した範囲での)大部分は、行動ファイナンスの学術的研究から得られた成果を、現実の市場で、「いかに実践していくか」といった内容です。

そもそも、行動ファイナンスによって得られた大まかなアウトプットは、「人間は(ある目的に対して)非合理的な行動をする」ということですから、行動ファイナンスを「理論的」に学習したところで、それを直ちにトレードや投機という「実践」に応用することは難しいわけです。

いわゆる、「オレってこの癖のおかげで、失敗するんだよな」と、幾ら頭で理解したとしても、実際の行動に移す段階では、その悪い癖に支配されてしまうことと同じです。

したがって、優れた投機術を身に着けるためには、書籍による理論的な学習に加え、実践的な「トレーニング」を行う「場」が必要なのだろうと思います。

それを個人が、書籍を頼りに実践する場合、多くの現実的な「ロス」を伴うことになるでしょう。
(「投機」を勧めるわけではありませんが、投機以外のふだんの生活(例えば恋愛にだって)応用可能な行動ファイナンスの学習とトレーニングを組み合わせたセミナーなどを開催しても面白いかななんて思っていたりします。)

さて、前置きはこの程度にして、
本題の「優れた投機術と優れた投資術の共通点」ですが・・・。

これ、一言で言えば、「手法の一貫性を保つ」ということに集約されます。

例えば投機において、ある投機手法を採用した結果、最初の数回のトレードで成果を上げることができなかった場合。その「結果」によって、投機手法を変更して「しまう」といった、「結果偏向(=ある決断の良しあしを判定するために、決断を下した時点でのロジックの良しあしではなく、その決断の結果によって判定する傾向)」は、長期的にみれば一貫性のあるトレードを継続できず、リターンを稼げない、といったことが言われます。

これは、いわゆる「バリュー投資(=価値と価格の裁定利益、及び、時間経過による価値増大の恩恵を受ける投資手法・・・いつも僕が読者に勧めている手法)」における、「価値>価格の状態で投資した直後に数週間、又は、数か月に渡って評価損が続くこと」に耐えかねて、投資した時点より「価値>>価格」が進んでいるにも関わらずロスカットをしてしまうことの「不合理さ」と共通しているように思います。

面白いことに、いわゆる短期トレード手法においても、優れた手法の場合、100回のトレードで「一度もロスしない」などと謡っている手法がないことです。

あくまで、僕が吟味した上で、「なるほど優れた手法だな」と思うような手法の場合であって、いかがわしい内容の書籍の場合、著者自身が「一度も失敗していない」的なことを発言していたりします。
(笑・・・そもそも「私は失敗したことがない」と主張する人間ほど、信用ならないのは言うまでもありません)

それどころか、ある短期トレード手法を「長期に継続した場合」、初めてトータルでプラスのリターンが得られるということを強調している点です。

短期トレードなのに、長期の結果を重視する・・・一見矛盾するようですが、本質を突いていると思います。

これは、バリュー投資でも同じことが言えます。

「必ずしも底値で買う必要はない」という言葉が示すように、バリュー投資において、ある時点(期間)では「含み損」を抱える場合があることと似ています。

この二つの対極にある投資/投機手法の共通点を書き始めたらきりがないので、この辺でやめますが、要するに、上記「手法の一貫性を保つ」ということが極めて重要なわけですが、それを実践するためには、やはり、、

「自分を信じるものが勝つ」

ということに他(ほか)ならないのだと思います。

サブプライムローン問題に起因する2007年夏から2008年3月辺りまでの株価低迷時に、(特に長期バリュー投資を採用する方々の中には)、自分を(自分の手法を)信じ続けることができず、市場からロスを伴いながら退散した個人投資家の方がたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

バリュー投資においては、市場の大多数が悲観的になっているときこそ、積極的になるべきであることは、このサイトでも、様々な切り口で解説しています。
(断っておきますが、いわゆる「アホルダー」を勧めているわけでは全くありません。あくまで、常に「価値変動」をウォッチし、「価値と価格の比較」を行い、必要とあらば利益確定/ロスカットはすべきです。)

しかし、やはり人間は人間。

常に「行動ファイナンス」が示すように、頭で理解することと、実践することには大きな隔たりがあります。

今後のセミナーやエッセイなどのテーマの一つとして、「行動ファイナンス」をベースにした「トレーニング」をやってみようと思います。
(ただし、短期トレードによる利ざや稼ぎを勧めるためのトレーニングにするつもりはありません。)

2008年5月9日 板倉雄一郎

PS:
この週末の2日間は、最後の「合宿セミナー」です。
初受講、再受講、パートナー合わせて総勢180名!

最後の合宿セミナーは、最多人数での開催となる予定です。
今から楽しみで、今晩眠れるか心配です(笑)

僕自身が思いっきり楽しみながら、受講生の方々にたくさんの知識や出会いの価値を持ち帰っていただきたいと思います。

よって、週末のエッセイはお休みです。
次回のエッセイは、週明け5月12日の「セミナーランナップ」の予定です。

読者の皆様も良い週末を!

PS^2:
最近地震多いですね。
この文章を書いている間にも複数回の地震を感じました。

日本経済の深層に潜む極めて大きなリスクですが、そんなリスクは、どうやっても織り込めませんよね(笑)

PS^3:
実は、マーケットに関するニュースについて、もろもろ書きたいことがあります。
ソフトバンクの優先株発行~伊藤園の優先株と普通株の価格スプレッドの不思議
ヤフーとその恋人たち(笑)

世界的なスタグフレーション(←原材料インフレと景気後退)懸念と各国中央銀行の金利政策、アメリカ市場の世界経済に占める割合の減少、
為替に翻弄(ほんろう)される輸出企業など大型株の渋い中での中小型株の高騰、
一部の「ショートされすぎ銘柄」の「踏み上げ」による株価高騰、
などなど。

でも、どれをとっても中途半端に書くわけには行かないので、結局どれも書けない(笑)
すんまそん。

PS^4:
やったぜ、「病気かぁ!」と思うぐらい体重減り続けています。
もちろん以前にも増してめちゃめちゃ元気です。

ダイエットって、それを始めてから2週間ぐらいしてからガツゥーンと効果が出てきますよね。

これもまた、「自分信じて継続する」ということの成果に他(ほか)ならないと思います。

目標体重まで、あと3kg。
目標体脂肪率まで、あと8%・・・こっちはきついなぁ~(笑)
今後は、食事制限より、エクササイズ。

話全くそれますが、エクササイズの機会を増やそうと、GW前に自宅近くの「ティップネス」に入ったのですが、これが僕にはちょっと無理。

だって、まるで「イモ洗い」みたいに混雑していて・・・
「ただ泳ぐだけ」でも、レーンの譲り合いを強いられ、とてもとてもエクササイズに集中できません。

やはり世の中、「価値≒価格」に裁定されるんですね(笑)





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