板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「不祥事を探せ」

価格のボラティリティーは、価値のボラティリティーより高い。と常々思います。

たとえば、円高だ!とか、北米のリセッションだ!とか、金利が変動するぞ!とかいう「よろしくない」マクロの見通しが原因の場合でも、はたまた業績下方修正だ!とか、リコールだ!とか、毒入りギョーザだ!とかいう個別企業の不祥事の場合でも、それらによる株主価値の下落以上に株価は下落する傾向があります。

同様に、マクロ、個別企業問わず「好ましい」と思われるニュースや経済の見通しの場合でも、それらによる株主価値の上昇以上に株価は上昇する傾向にあります。

市場は上げるときも下げるときも、「大げさ」に動くものです。

(↑ ミスターマーケットは喜怒哀楽が激しいといわれる所以です。)

ある不祥事で、株主価値が5%程度下落するという結果が出ても、市場価格が10%も下落することは珍しくありませんし、業績上方修正などの好ましい発表で、株主価値が5%程度上昇するという結果が出ても、市場価格が10%以上上昇することもあるというわけです。

以上は、実際に「ある不祥事」や、「経済見通し」を、しっかり企業価値評価における将来業績予測に折込み、「株主価値の変動」を算出すればその傾向を「スージ」で観て感じることができます。

ならば、不祥事にもっと関心を持つべき、ですよね。

ある個別企業が何らかの不祥事を起こした場合、それ以前に比べ「割安度合いが増す」可能性が十分にあるからです。投資チャンスを見つけることができる可能性が高くなるわけですよね。

注意しなければならないのは、その不祥事が、

①一時的な不可抗力によるものなのか

②その企業の構造的、文化的問題に起因した不祥事で、今後も継続的に発生する可能性があるのか。

をしっかり見極める必要があります。

①の場合であれば、「価値 > 価格」の投資チャンスとなりえますが、②の場合であれば、その時点では「価値 > 価格」であったとしても、その後「時間経過と共に株主価値を毀損し続ける可能性があるからです。①の場合も、②の場合も、どちらもその時点では、「価値 > 価格」が形成される傾向にありますが、②のような企業を「割安だ!」と喜んで投資し、長期で保有することは、投資家自身の経済的損失を伴いながら、間抜けな企業を応援することになってしまいます。

以上から、一つのスクリーニングの方法として、「不祥事に興味を持つ」という意識も投資活動において大切なことです。

ウォーレンバフェットがビルゲイツを抜き、世界一の大富豪になりましたが、彼の投資手法は、まさに以上のタイミングを非常に上手に掴んできた結果だといえます。

サブプライムローン問題に起因した金融保険会社(いわゆるモノライン)の経営危機に対し、金融保険契約の買取提案を行った(この提案はボツになりましたが)ことも、過去にコカコーラが業績不振に陥ったときに大量に投資したことも、いわゆる個別企業の「不祥事」による大幅な「価値 > 価格」の状態を見極めた手法です。特にバフェットの場合、「この企業いいなぁ~欲しいなぁ~」と思ってから、「何年もの間」、以上のようなチャンスを待つことができる「才能というか性格」を持っていることも特筆すべきことだと思います。

株価が下落すると、「あれにもこれにも」と投資したくなるのですが、僕もバフェットのように「待つこと」がもっと上手になれば、もっとパフォーマンスを向上できるのになぁ~と、毎日思っています(笑)

以上、皆様の投資活動の参考になれば幸いです。

2008年3月7日 板倉雄一郎

PS:

今週末は、第29回合宿セミナーです。新規受講の皆さん、再受講の皆さん、そしてパートナーと共に2日間を楽しみたいと思います。





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