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ITAKURASTYLE「株主総会レポート(ブルドックなど)」


3月末決算企業の株主総会シーズン真っ只中ですね。
先週も、合宿セミナー卒業生の方々から、彼らが株式を保有する企業の株主総会レポートが届きました。
その中から気になる株主総会、気になる企業に関する考察を書かせていただきます。
総論:「企業経営は株主次第」
<ブルドックソース>
いわゆる現経営陣が提案した買収防衛策が同社の株主総会にて、
「圧倒的な賛成多数」で可決したようです。
この件、ものすごく不思議です。
よく考えてみてください・・・
もし、
既存株主の大多数がスティールによる買収が気に入らないのなら、
株主はスティールによるTOBに「応じなければよい」わけです。
大多数の株主がTOBに応じなければ、
(買収防衛策があろうがなかろうが)
TOBは間違いなく失敗しますから、
そもそも買収防衛策など必要ないのです。
買収防衛策は、既存株主にとってメリットがないどころか、
デメリットがあります。
買収防衛策によって、既存株主は、
「TOB価格次第ではTOBに応じる」という「選択肢(=オプション)」
を失うわけです。
だって、防衛策に2/3の賛成が得られるんだったら、
その人たちが単純にTOBに応じないという選択肢をとるだけで、
スティールは、1/3未満しか株を集めることができないわけですから。
この会社の株主の判断基準、僕には理解不能です。
買収防衛策は、経営者の「椅子の安泰=怠慢」を促す「可能性」があります。
今回のブルドックのケースでは、スティールからのプレッシャーの「おかげで」、現経営陣が「新事業計画」を発表したことに対する既存株主からの賛意だとは思いますが、だとすれば、また「経営者にとっての敵」がたびたび現れなければならないわけです。
僕個人的には、こんなチームには入りたくない、と思います。
僕は、スティールの味方なわけではありません。
しつこいようですが、ブルドックの既存株主の判断基準が、少なくとも僕には理解不能だということです。
(経営者には、その椅子を守りたいという動機がありますけどね。)
経営者がその椅子を守るためにやるべき真っ当なことは、
1、市場原理に逆らった文言を定款に書き込むことではなく、
2、株価をいたずらにテクニカルに押し上げることでもなく、
企業「価値」の最大化に経営者として勤めることなのです。
「価値あるリソースがあるのに、それらを企業価値の最大化のために効率よく使っていない経営者の存在」こそが、買収の標的になるのです。
冒頭にも書きましたが、「企業経営は株主次第」です。
と同時に、「どんな株主が集まるかは、経営者次第」です。
つまるところ、経営者と株主は「鏡」のようなもの。

<信者による株主構成>
経営者の不祥事が発覚したB社の株主総会では、
1、不祥事の張本人が欠席
2、報道されている内容以上の情報は、なし
3、株価は不祥事発覚前に比べ、大幅に下落
なのに、
1、(不祥事の張本人欠席についても)株主からの質問は一切なし
2、ヤジや罵声も一切なし
という総会だったそうです。
この企業の株主、聞くところによると同社のフランチャイズチェーンのフランチャイジー経営者が大多数であることに加え、フランチャイジー経営者のほとんどが、不祥事を起こした経営者の信者なのだそうです。
なるほど、不祥事発覚によって「信者」以外の一般株主が居なくなった状態での株主総会というわけですから、ヤジも出ないわけですよね。
(不祥事発覚は、5月のことですから、一般株主も今回の株主総会議決権を保有していますが、既に「さいなら」した後なので、総会には出席しなかったのでしょう。)
フランチャイジーも含め、広義で企業とするならば、従業員が株主の大多数という比ゆもあながち間違いではないでしょう。
この企業、果たして、コーポレートガバナンスが働くのでしょうか?
株主は、信者というより、「教祖が何をやろうが妄信する亡者」ではないかと思った次第です。
以上の情報と、推測が正しいとすれば、さっさとMBOして、後は勝手にやっていただきたい(=一般投資家を巻き込まないように)していただきたいと思う次第です。
(ろくに調べもせず、株主になり、損をする本人が悪いのですが)

<お土産たっぷりの株主総会>
上記の企業の場合、その企業の営業に「全く無関係」な醤油(笑)が株主総会のお土産だったそうです。
音楽関係企業の場合、所属するタレントのコンサートがお土産だったりする例もあります。
僕はこのような「お土産総会」には反対です。
なぜなら、そもそも株主のお金を使った株主還元なのに・・・
1、総会に出席できる株主は、株主の一部ですから、一部の株主に対し還元を行うという不平等が発生する。
2、総会に出席した株主にも、1株株主も居れば、たくさんのシェアを持っている株主も居るのに、「頭数のお土産」となり、こちらも不平等が発生する。
などの不平等に加え・・・
3、そもそも「お土産」を目的に株主になったわけではない株主が大多数のはずだから、株主利益につながらない還元方法
4、・・・株主の一部には、株主優待やら、株主総会でのイベントを目的にしている株主も居るでしょう・・・そういう株主は、そもそも「1株株主」だったりする可能性が高く、よって「お土産目的の一株株主」に対する配分に偏向する可能性
という非合理性があるからです。
株主総会で行う合理的な「お土産」とは、「経営者と株主、株主と他の株主の意見交換の機会」であるはずです。
当該企業の商品なら、顧客として購入すれば済むはずです。
(顧客として支払ったお金の一部は、株主としての側面に還元されます)
しかし、経営者との意見交換の機会は、めったに得られないのです。
とは言え、「お土産」は重大な問題だ!というわけではありません。
(いってみれば、たかが知れた金額ですからね)
大切なことは、株主のお金を使ったお土産だ、ということを理解することです。
参考エッセイ:ITAKURASTYLE 「株主総会で何を見るべきか」
2007年6月25日 板倉雄一郎
PS:
政治家と有権者の関係も、同じく「鏡」のようなものです。
政治と企業の違いは、企業の場合、その利害関係者は(政治の場合に比べ)チームへの「出入り」が簡単にできるという点です。
その地域の政治が気に入らないからと、簡単に引っ越すわけには行かないですが、その企業の経営が気に入らない場合、株主にならなければよいわけですし、株主だった場合も(上場企業であれば)さっさと売却すればよいわけです。





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