板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「ばら撒くなら金より知識」

(昨日のエッセーと内容がダブりますが・・・)
農家の親が、子に農地だけを継承したところで、子に食いつぶされるだけです。
農地と共に、農地の使い方(=農作物の作り方)という知識を伝えなければ、
「土地」という単なる経済価値の継承に過ぎず、
経済価値があっても、経済価値を「生み出す」ことが出来なくなってしまいます。
そんな農家は、いずれ崩壊します。

「ババ抜きゲーム」によって、「運よく」大枚を稼ぎ、
その虚しさ(=社会の役に立っていない)を打ち消すために、
稼いだ金を、「寄付」することによって、自分自身を慰める人が居ます。
寄付に意味がないとは申しません。
ただし、それに意味があるのは、「延々に寄付をし続ける」という条件付です。
なぜなら、「金を与える」という行為は、
上記の農家にたとえれば、単に「土地」をあげるに過ぎず、
その「活用の仕方」という知識がなければ、
いずれその金を食いつぶし、無くなってしまうからです。
再び寄付を求めることになります。

アフリカの貧困国に「寄付」をしている、ある米系の富豪は、
「図書館という建物」は寄付するが、書物は一切寄付しないそうです。
なぜなら、「自分で書物を手に入れて欲しい」と思うからだそうです。
すべてを与えてしまったら、上記のように、
延々与え続けなければならなくなるからです。

与えるべきは、「金」ではなく、
それを生み出すことが出来る「知識」であるべきです。
求めるべきは、金やモノではなく、
それらを生み出すことが出来る知識です。


我々日本人が世界に誇るのは、
世界一の対外債権(=外貨準備高)や、
それを結果的に蓄えることが出来た、優れた商品だけではなく、
これらを「生み出すことが出来る知恵」です。

とはいえ、国民性の上に成り立った知恵ですから、
どこへでも移植できるわけでもありませんが、
少なくとも、我々自身が、
ものづくりをはじめとする価値を生み出してきた国民性を、
継承し続けることが、我々と世界にとって不可欠だと思います。
それらを絶対に失ってはならない
と思うのです。

我々が豊かになれたのは、金融トレーディングの結果では絶対にありません。
価値を生み出す「知恵」によって豊かになれたのです。
ニートが存在できるほど、豊かになれたのです。
「売ったり買ったり」で貴重な一日を浪費してしまうような人間を増やしていたのでは、御話しになりません。
メディアも、インチキトレード指南書執筆者も、イイカゲン気がついてほしいものです。

株式投資という側面から、「企業を知る」ことが出来ます。
企業を知ることが出来れば、なぜ株式投資で儲けられるのかがわかります。
価値を生み出すのは金ではなく人だ、ということに気がつくことができます。
すると、株式投資という「企業に対する資金提供という価値提供」において、
損失することがなくなり、
自らも資金提供以外に社会に対する価値提供ができるようになります。
結果として、
キャピタルゲインも、
インカムゲイン(=この場合は配当ではなく、労働による収入という意味)も、
どちらも稼ぐことができるようになります。
この場合の稼ぎに対しては、虚しさを感じる必要はありません。

2006年4月4日 板倉雄一郎

PS:
上記の「知恵」とは、
「いつ買って、いつ売って」という博打の知恵ではありませんので、あしからず。





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