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ITAKURASTYLE「経済動向と相場の見通し」

本日のエッセイは、表題の通り、大まかな経済動向と(主に)株式相場の見通しについて、「私見」を書いてみたいと思います。

最初にお断りしておきますが、相場の見通し、つまり相場予測について、僕は「自信あるぜ!」というわけではありませんので、以下はあくまで「僕個人の資産運用における予測」という範囲でお読みいただければ幸いです。以下を参考にされた資産運用を実行され、実損が発生しても、(僕への信頼性が下がるのは致し方ないことですが)、僕はその実損に対して一切の責任を負いません。

<金融危機から実体経済停滞へ>

すでに、ウォーレンバフェット氏をはじめ著名な投資家、および一部の(日、米)エコノミストが指摘していることとほぼ同じですが、サブプライムローン問題を「トリガーにした」金融業会の世界的な巨額損失は、今後「じわじわ」と、(主に借金によって成り立っている米の)実体経済に影響を与え、2008年後半には、各種の「指標(つまり、7月以降に発表される4~6月の実績値)」に現れてくると予測しています。

この発表の前後に、現在の「悲観極まり楽観に変わった」日米欧の株価は、大きく下げるのではないかと予測しています。

かつての日本経済における不動産バブル崩壊⇒金融機関の巨額損失⇒金融機関による「貸し渋り」⇒中小や個人の経済的破綻による経済停滞⇒(しかたなく)公的資金注入⇒低金利(実質マイナス金利)誘導⇒10年以上の長期に渡るデフレーション・・・

に良く似た将来が、特に米、そして間接的に世界中で待ち受けているのではないかと思います。

ただし、かつての日本経済の軌跡と大きく異なる「資源インフレ」という条件を入れると、デフレーションではなく、スタグフレーションの可能性も否定できないので、事態はより深刻になるのではないかと思います。

デフレーションの場合、基本的には金利を低く誘導し、「しばらく我慢する」ことによって、ある程度の経済の回復は可能です(実際日本経済は、輸出企業の好業績もあり、その軌跡をたどりました)が、スタグフレーションの場合は、インフレを抑制するために金利を高く誘導したいが、金利を高く誘導すれば、一方で経済成長を抑制する効果があるので、各国の中央銀行の政策が、「にっちもさっちもいかない状態」に陥ることによって、世界経済の先行きに対するリスクが増大するでしょう。

ただし、主に新興国の経済が活況になり、新興国の人々が以前より贅沢な暮らしを始めることによって、資源需要(←穀物など食料、金属、エネルギー資源)が高まり、その結果、資源インフレをもたらしていることを前提にすれば、米の景気減速は少なからず新興国の経済成長を抑制する効果がありますから、いずれ資源需要が低下し、資源価格は下落をはじめるはずです。

よって、仮にスタグフレーションに陥ったとしても、かつての日本の軌跡ほど、長い時間を要せず経済安定に至るのではないかと推測します。

問題は、経済が安定するまで(←相場的には投資家のリスク認識が低下するまで)の期間で、かつての日本経済の軌跡とは異なり、様々な価格のボラティリティーが高くなることではないでしょうか。

僕が最も興味があるのは、「現在資源に向かっているお金が、以上の過程でどこに向かうのか」ということところですが、そんなのわかりません、が、おそらくは、以上の過程で相当に下落した各国の株式に向かうのではないかと思います。

<現在のポジション>

こんなことばかり書いていると、「お前はなんちゃってエコノミストかぁ!」などといわれそうなので、僕自身が以上の推測を元に、どんなポジションを取っているかについて、若干書かせていただきたいと思います。

結論から書けば、

「現金(日本円中心)のポジションをこれまで以上に高くしている」

です。

もちろん、株式を全く保有していないということではありません。比較的、マクロ経済の影響が軽微であるビジネスモデルを有すると僕が思う企業の株式は引き続き保有を続けていますが、以上の推測通りになった場合、明らかに株価が相当下落すると思う企業の株式は、2007年11月ごろにほとんど利益確定しています。

「言ってることと、やってることが違うじゃん!」

という意見もあろうかと思いますが、何度も書いている通り、僕はいわゆる「アホルダー」を推奨していたり、実践していたりするわけではありません。

僕の著書、「真っ当な株式投資」の表紙にある、

「短期トレードより、長期バリュー投資が、なぜ真っ当で、かつ儲かるのか」

という表現の、「短期」、と、「長期」だけ取り出して、「どっちが儲かるのか」という的外れの議論を見かけたことがありますが、僕が推奨している投資手法は、上記表現にあるとおり、あくまで、

「バリュー(←株主価値)に根ざした比較的長期の投資」

なのであって、「単に長期で持つこと=儲かる」などと表現したことは一度もありません。

投資家自身が、「価値下落を伴う価格下落」を予測した場合、一度資金を引き上げることは、当然だと思います。

しつこく断っておきますが、上記の僕の推測は全くの的外れで、株価は少々の調整を行いながらも、じわじわと上昇を続けるの「かもしません」。

その場合、僕は資産運用機会を逃すことになりますが、それはそれで、「誰か他人の意見に便乗してた損失ではなく、自分の判断に従った結果の機会損失」ですから、仕方なく受け入れるでしょう。

以上、本日は、あまり「予測」については書きたくないのですが、書いてみました。

2008年5月21日 板倉雄一郎

PS:
とは書いたものの、
1、商品マーケットをグローバルに持っていて(←ドメスティックでない企業で)
2、コアとなる技術を持っていて(←価格転化が比較的優位に実行できて)
3、これから長期的に伸びると予測される地域に対する投資をおこなっていて、
4、真っ当な財務オペレーションを行っている

という条件を満たしたいわゆる「日本企業」については、少なくとも長期的には、投資対象として(投資する価格にもよりますが)リスクが小さいと思っています。

「(ニクソンショック以前の)金本位制」から「(現在そうなりつつある)CO2本位制」に移行した場合でも、
新興国が新興国同士を商品および資本のマーケットとした成長へ移行したとしても、
それを実現するためには、日本企業の技術やノウハウが必要になると思います。

問題は、「投資タイミング(=価値に対する価格)」ですね。





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