板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「個別企業再評価のススメ」


結論から書きますが、読者の皆さんが保有する(または投資しようとする)個別企業の株主価値について、将来業績予測を見直した上で、再評価することをお勧めします。
その上で、2007年上半期の段階での予想に比べ、相当に価値が下落し、現在の株価水準でもフェアバリューか割高と思われる場合には、「評価損益がどうであれ」利益確定するべきですし、逆に、再評価した上でも割安で且つ時間経過と共に株主価値が増大するであろう銘柄であれば、「評価損益がどうであれ」、引き続き保有すべきだと思います。
そもそも評価損益とは、過去に投資実行した時点での株価と、現在の株価との「差」でしかありません。
よって、個人の評価損益がどうであれ、株価が上がるものは上がりますし、下がるものは下がるわけです。
行動ファイナンス的にいえば、評価損が膨らんだ場合には「(価値と価格の関係がどうであれ)そのうち戻すだろう」と楽観的に考え、評価益が出ている場合には、「(価値と価格がどうであれ)今のうちに利益を確定しておこう」と思うものです。
行動ファイナンスのいうところの人間の思考パターンにハマッて損失を増やすことを避けたければ、冷静に個別企業の企業価値評価を行い、算出された「妥当な株価」を基準にした資産運用をお勧めします。

サブプライムローン問題と、日本のバブル崩壊の場合を比較して、
「日本の不良債権を銀行に集中させたことに比べ、サブプライムローン問題は、証券化によって、世界中にリスクがばらまかれたので大変だ」
という表現を見かけるようになりました。
「不安心理を持つ投資家の頭数が増える」といういう意味では、正しい根拠だと思いますし、また、投資家の心理は、様々な経済価値に影響を与えます。
僕自身も、証券化によるリスクのばら撒きが(多くの投資家の不安心理をあおるだろうから)最大の問題だと表現してきました。
しかしながら、証券化によってリスクが世界中に分散されているわけだから、(一部の金融機関を除き)、損害を蒙る投資家の頭数は多くても、一人当たりの損失額は少ないはずです。
つまり、経済全体として蒙る損失は、証券化によってリスクが分散されようが、されなかろうが、代わらないと思うわけです。
そう考えれば、サブプライムローン問題「そのもの」による経済的損失については、このところの為替変動や株価下落で十分折込済みだと思います。
それでも「再評価を」と表現する理由は、サブプライムローン問題を発端にした(特に北米の)信用収縮が実体経済に影響を及ぼす可能性について、十分考慮する必要があると思うからです。
2007年11月19日 板倉雄一郎
PS:
とはいえ、ミスターマーケットは、常に喜怒哀楽が激しいわけですから、このところの信用不安によって、個別企業の業績を割と悲観的に予測した上で算出された妥当な株価を下回る株価に出会える可能性も十分にあります。
もし、長期投資を前提にするならば、絶好の投資チャンスに恵まれるかもしれません。
ただし、短期的な投資(?)によるリターンを期待するならば、今はあまり良い時期ではないですよね。
その辺は、投資家自身の投資スタイルに合わせた合理的な判断が求められるというわけです。
PS^2:
本日、当事務所2007年最後の一般募集セミナー「オープンセミナー」の募集を締め切りました。
定員以上のお申し込みを頂きました。
ありがとうございます。
当日は、インタラクティブに楽しい時間を共にさせていただければと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。





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