板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「自分で調べ、自分で考える」

<特別会計>

一般会計におけるプライマリーバランスの議論がされることがあります。
一般会計の歳入は、およそ50兆円前後、それに対する歳出はおよそ80兆円。
よって、この不足分を毎年「国債」を発行してまかなっているわけですが、なんとか歳入と歳出をバランスさせなければ、永遠に国債残高が増加するのでまずい!という話です。
で、メディアも政治も、この一般会計に関する議論が盛んですが、実は、もっと規模の大きな「国の財政」は、一般会計ではなく、特別会計にあります。
これまで、「お役人の隠れ家(笑)」としての性格の強い特別会計については、「どういうわけか」あまり議論されてきませんでした。
しかし、今、いわゆる「道路財源」についてその暫定税率を一般会計に組み込むかどうかという議論が盛んですが、その中身が「道路整備特別会計」という特別会計です。

特別会計全体の規模は、およそ200兆円。

一般会計より遥かに大きな規模で、「お役人が勝手にインチキできる財布」があるわけです。

これをどう扱うか・・・
その前に、私たち国民(=有権者)が、その実態についてよく知ることが必要だと思います。

読者の皆様も是非、「特別会計の中身」について、ご自身の目で確認して、その現状を認識されることをお勧めします。

株式投資の際、投資対象企業について「良く知ること」は極めて大切なことですが、それ以前に、私たちが暮らすこの国の現状と問題点について、メディアに頼るのではなく、自分以外のほかの誰かの意見に頼るのではなく、「情報ソース」を自身の目で見て、感じて、自身の意見を持つべきだと思います。

なぜ役人は、インチキ無駄遣いをするのか?

テクニカル的には、いくつもの原因があると思いますが、本質的には、私たち有権者が、
(1)国家に対する興味が低い、
つまり、
(2)税の支払いには興味があるが、使われ方にはさほど興味が無い
なぜなら、
(3)どれほど税や生活補償費を支払っているか正確に認識していない
なぜなら、
(4)「源泉徴収制度」によって、「考える機会を奪われている」から
です。
よって、
(5)サラリーマンも含め、国民のすべてが「確定申告」を自ら行うことが大切だと思います。

まずは、私たちが「知ること」がファーストステップではないでしょうか。
情報ソースを私たち一人ひとりが、自ら探り、自ら判断することが民主主義の根本を支える行動であることは、疑いがありません。

<ナベツネがなぜ偉いのか?>

「ナベツネ(渡邉恒雄読売新聞社主)が、大物政治家を呼んで政治について意見をした」
みたいなニュースを良く見聞きしますよね。
そんなニュースを見るたび、
「なんでナベツネって、そんなに偉いんだ?」
と思われた方も少なくないのではないかと思います。

これ、簡単な話、「メディアが政治を動かしているから」です。
ものすごく小さな例ではありますが、ナベツネがトップに就くテレビ局の人気番組(たとえば法律エンターテイメント番組に出演していた弁護士など)のレギュラー出演者が、その後どうなったか、を見れば、メディアの政治に対する影響力の一端を見ることができると思います。

なぜメディアがそんなに力を持っているのか?

これも、本質的には、上記の税の話と同じく、私たち国民が、私たちの暮らす国家について「他人依存」であることが原因です。
「何か問題があれば、メディアが報じてくれるから自分で調べる必要は無い」
とか、
「メディアを見ていると、真剣に考え動いている人が居るみたいだから、自分は自分の金の心配だけしていればいい」
とか、そんなことを考える国民が(有権者が)圧倒的多数だから、メディアに言論を誘導されてしまうわけです。
かくしてメディアの力が増大する、というわけです。

株式投資を自分の意思で行うには、投資対象の有価証券報告書(←情報ソース)を自身の目で確認するべきであって、いわゆるアナリストなど「他人の意見」は、あくまで参考程度にとどめるべきです。
選挙権を自分の意思で行使するためには、政党によるマニフェストを読むこと以前に、国家や地方自治体の「実態」について、自身の目でその「スージ」を確認し、感じることが第一歩です。
自分の生き方を、自分の意志で決めてゆくには、占い(笑)などの他人の意見に頼るのは「ほどほど」に、自身の知識や経験を増やし、自分で自分の人生を創ることが求められるのではないでしょうか。

だれかが分析した結果や、誰かの特定なポジションの上に立った意見を鵜呑みにするのではなく、自ら「情報ソース」にアクセスし、自ら分析し、自ら意見を持つことが、社会に影響を与え、社会の影響を受けて暮らしている私たち一人ひとりの責任であり権利だと思います。

地方選挙のとき、お住まいの自治体の財政状態について調べたことありますか?
国政選挙のとき、国家財政について調べたことありますか?
株式投資の際、投資対象の有価証券報告書をちゃんと読んだことありますか?
これらは、私たち自身の利益や豊かさに直結した、私たちの「権利」です。

ただし、それらの情報ソースのスージを分析するための最低限の知識は必要です。
源泉徴収制度にみられるように、「国民はバカの方がいい」と思っている方々のおかげで、情報ソースを読み解くための本当に大切な知識は義務教育では「絶対に」教えてくれません。
自らが豊かになるためには、自らへ「自己投資」を行う以外に方法は無いのです。

2008年2月25日 板倉雄一郎

PS:
いわゆるトレーダーの方々は、やたらと「パフォーマンス」を聞きたがります。
たとえば、「デイトレード手法」の場合、その手法は、ひたすらパフォーマンスを「直接的に」追及する手法ですから、デイトレ手法の良し悪しは、「で、どれほど儲かったの?」ということが「すべて」ですから、デイトレ手法を指南する方々それぞれの手法の価値は、短期のパフォーマンスに集約されます。
したがって、デイトレ手法を指南する方々の場合、その手法による自身のパフォーマンスを示すことが、その手法の「商品価値」を示す上で絶対に必要な行為だと思います。

一方、私たちが提供している「企業価値評価」という手法は、もちろん投資に生かせますが、デイトレード手法と違い、株式投資のパフォーマンスを「直接的に」向上させるための手法ではありません。
この手法の「使い道」は、株式投資で儲けること(=損をしないこと)にも応用できますし、企業経営における経営判断にも応用できます。
企業価値評価手法は、「投資対象に関する知識」や、「一株辺りの妥当な価格」や、「時間経過と共に株主価値を増大させうるか否か」を得ることができますが、それによって得られた情報に基づき、リスクの大きなベンチャーへ投資するのか、それとも比較的業績が安定している企業へ投資するのか、によってパフォーマンスの結果は大きく異なります。
この点、「サヤ取り」こそが株式投資のすべてであると思い込んでいるトレーダーの方々には、どうやら理解されないようです(笑)

PS^2:
昨日は、定例のパートナーミーティングに続き、当事務所のDVD第5弾「財務オペレーションと企業価値の相対的関係」の収録を行いました。
合宿セミナーの第4コマとして僕が担当している講義内容を、たっぷり200分収録しました。
5月には、発売することができると思いますので、しばらくお待ちください。

メニューは、
(1)有利子負債の増減
(2)配当(および株主優待)
(3)自社株買い
(4)新株発行
(5)株式分割
などのそれぞれの財務オペレーションを、「どのような条件で行えば、企業価値(または株主価値)が、増(または減)するのか」、について詳しく説明しています。
すべての種類の財務オペレーションについて説明しているわけではありませんが、以上の基礎的な財務オペレーションについてしっかり理解すれば、その他の複雑な財務ペレーション(たとえばCBや、予約権など)による企業価値の変動についても、応用が利くようになっています。
営業業績などいわゆる企業の「運用サイド」については、多くの人が割りと容易に理解できることですが、それとセットで財務オペレーションという「調達サイド」についての理解が無ければ、企業を理解することはできませんし、価値に根ざした株式投資を真っ当に行うこともできません。
経営者にとっても、IR担当者にとっても、株式投資においても、極めて役に立つ知識です。
乞うご期待!





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