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ITAKURASTYLE「箱より計画」

「計画より理念だ」と過去に書きました。
今回は、「箱より計画」です。

仕事で訪韓してまいりました。
韓国で開発されたテクノロジーを、日本市場に導入する事業に対して、
僕がどれほど関与するかを見極めるための視察です。
テクノロジーベースではありますが、事業の実態は「人海戦術」。
だからむしろ興味があり、今回の訪韓となりました。
「人海戦術」による事業は、結構「めんどくさい」。
めんどくさいからこそ、それを確立できれば、
結構な競争優位性(というか参入壁)になりえるからです。
しかしながら、韓国で行われている事業は、
そのテクノロジーはすばらしいのですが、
ビジネスモデル上の問題点をいくつか見当たりました。
日本での稼動前に、
ビジネスモデルを最適化させるためにリビルドする必要があると判断しました。

韓国でのこの事業に投資しているVCとのミーティングの席でのことです。
彼らは、日本での事業展開のために提携したある日本企業の
事業の進め方に対して、いらいらしているようでした。
(んなこと僕に言われても、
 僕はつい一ヶ月前に加わったばかりなので困るんですけれど(笑))

「会社設立はいつになるのか?」
「資本金が少なすぎるのではないか?」
「オフィスは?」
「設備は」
「人材は?」・・・・
彼らから、そんな「プッシュ」が相次ぎました。

う~ん、なんか違うんですよね。

オフィスや設備や資本金・・・これらはあくまで事業実現のための「手段」。
そもそもビジネスモデルが確立していない段階で、
以上のような「手段」についての議論をしたところで意味がないのです。
韓国ですでに行われている事業を、そっくりそのまま日本に移植できるなら、
さっさと手段の話を進めるべきですが、そうでないと判断している以上、
手段に関する議論の前に、ビジネスモデルのリビルドや、
それをベースにした戦略などについての議論が必要です。
(そもそも韓国での事業も、ビジネスモデル上の問題があり、
 さほどプロフィタブルではないと判断しました。)

ビジネスモデルに確固たる自信がない段階で、
いくら「箱」を用意したところで、何も始まりません。
事業開始の順番は、
1、「何のためにやるの?」・・・・・・事業理念のコンセンサス
2、「何をどのように売るの?」・・・ビジネスモデルのコンセンサス
3、「どんな段取りでやるの?」・・・ビジネスプランのコンセンサス
4、「どんな資源が必要なの?」・・人・モノ・金の調達計画
以上の過程を通じて初めて、
「んじゃ、
資本を募りましょう、
オフィスを用意しましょう、
人材を集めましょう」っとなるわけです。

僕自身の過去の事業失敗の経験からも、
その後のVC活動における経験からも、
事業が失敗する直接的原因はキャッシュフローの枯渇ですが、
根本的原因は、事業のスタートアップに潜んでいます。
スタートアップにおけるビジネスモデルやビジネスプランのデザインに、
成否の要因があるわけです。
そして、事業を行ううえで最も重要なことは、
スタートアップさせること、ではなく、事業を長年にわたり継続することです。
自らの事業に対する関わり方が、
経営者としてであれ、アドバイザーとしてであれ、投資家としてであれ、
消費者としてであれ、従業員としてであれ、なんであれ、
継続可能だ、という自信が持てなければ、関わりたくはありません。
だから、僕自身が魅力的な事業だ!と思える事業になるように、
僕自身が散々アドバイスをしてきました。
だって、僕自身が魅力的だ!継続可能だ!と思えなければ、
「やめたほうがいいですよ」というアドバイスしかできないですからね。

「本末転倒」
僕はこの言葉を常に自分自身の行動のチェックに利用しています。
「今、自分が行動しようとしていることの目的は、何だっけ?」
「その目的のための手段として、今の手段は最適なことだろうか?」
「その目的は、そもそも自分が求めてやまないことだっけ?」
「そもそも楽しいと感じることだろうか?」

どれほど考察を行っても、どれほど知識と経験を積み上げても、
失敗するときは、失敗するものです。
絶対に成功する事業など、この世にありません。
自信の経験や知識に照らし合わせ、十分な考察を行ったうえでの失敗なら、
あきらめることもできます。
しかし、もし、
十分な考察と、自分の心への問いかけを行わなかったことによる失敗なら、
後悔の念にさいなまれることになります。
だからこそ、スタートアップにおける考察には、
「やり過ぎ」も「考え過ぎ」もないのです。

「もうこれ以上考えてもどうにもならない」に行き着いてから、
「やるしかないね」となるわけです。
そうなれば、資金調達だの、オフィスの用意だのは、
気がついたらできている、そんなものです。

(一方で、もう考えてもしょうがない段階にいるのに、
 シブチンでなかなか前に進めないのは、いけてない人です。)

この事業、ビジネスモデルをしっかりリビルドすれば、
きっと日本市場でも大成功することでしょう。
何らかの形で関与したいという結論を得ました。

なお、この事業の日本展開において、
その株式の過半数は、日本で暮らす日本人が保有し、
その従業員の大部分は、日本で暮らす日本人が従事します。
また、僕のこの事業への関与を要請いただいたのも、
この事業に資本を投下して運営しようとする、
古くからの日本人の企業家の友人です。

2006年8月25日 板倉雄一郎

PS:
朝起きたら、自分のにんにく臭さに驚いちゃいました。
ついたその日の夕食が焼肉。
翌日の夕食には韓国宮廷料理が用意されていたのに、
それをキャンセルして、また焼肉。
昼食にあわびコースを食べた以外は、とにかく焼肉。
韓国=焼肉とは、あまりにも芸がない行動ですが、それでも焼肉。
焼肉ばかり食べ過ぎました。
ダイエットのはずが、逆に太って帰ってきました(笑)
だって美味しいんだもん。

ハイパーネット当時は、サムスングループとのJVを行っていた関係で、
度々韓国に行っていましたが、今回の訪韓は10年ぶりでした。
なんというかいつ行っても「活気」のある街ですよね。
にんにくのせいでしょうか(笑)

それにしても韓国女性は、みなスタイルいいですよね。
これも食べ物のせい???
今度は、遊びで行こうっと。

PS^2:
ところで皆さん、韓国では、
「同じ姓の者同士は結婚できない」(ただし例外あり)
という法律があるのをご存知ですか?
結構知らない人多いんですよね。

たとえば・・・
合コンで魅力的な女性がいたとしましょう。
「お名前は?」との質問に、「板倉ゆうこです」とか答えられたら、
少なくとも結婚を前提にしたお付き合いはできないわけです。
う~ん、複雑。

PS^3:
到着当日、同行したある人が、ななんとパスポートを紛失。
しかし、宿泊先のリッツカールトンの対応はすばらしかった。
さすがサービスの王ですね。
参考エッセー:ITAKURASTYLE「おもてなし」
パスポートは帰国日に無事発見されました。





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