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ITAKURASTYLE「過去は追いかけてくる」

トムクルーズなどが主演の映画「マグノリア」をご覧になった方もいらっしゃると思います。
アマゾンのカスタマーレビューでは、賛否両論ですが、この映画は「聖書」についてよく知っている人でないと、その意味がチンプンカンプンですから、否定派の多くは、このことを知らないのだと思います。
そういう僕も、聖書について特に知っているわけではありませんが、結構好きな映画の一つで、DVDも持っています。

この映画の一部に、

「自分の過去からどんなに逃げようとしても過去は追いかけてくる」

という表現があります。

「女性の落とし方セミナー」主催者役のトムクルーズが、捨てたはずの家族との過去の関係について、メディアのインタビュアーからしつこく問われ、動揺し、気分を害すシーンのあたりで使われる台詞だったか、挿入歌の歌詞だったか、とにかく「過去は追いかけてくる」というのがこの映画の「一つの」メッセージだったと記憶しています。
(↑もう一度観ればわかることですが、何せ長い映画ですからご容赦ください。)

普段から、「今の自分は、すべての過去の上に立脚している」と思っている僕にとって、「過去が追いかけてくる」という表現は意外であり、しかし、新鮮でもありました。
人は、理想とする自分において不都合な過去を捨て、都合の良い過去を集めたがる傾向があると思います。
たとえば、過去に描いたキャリアデザインに相応しくない過去の職歴は、履歴として認めたくないと思うことなどが挙げられます。

しかし、都合の良い過去の履歴だけ拾い、都合の悪い過去を捨てるなんてことは不可能なことですよね。
その上、もし今がハッピーであるとするならば、本人にとって不都合な過去さえ、今のハッピーの原因でもあると、少なくとも僕は思います。

私たちが選択できる「可能性」があるのは常に未来のことなのであって、過去を選択することは不可能です。
不可能なことをいつまでも実現しようとする姿勢は、見ていて哀れだと感じます。
そんな生き方は、「不都合な過去を捨てたい」というできるはずの無い気持ちを引きずりながらの人生ですから、「過去に支配された生き方」と言えると思います。
とてもハッピーな生き方ではないと思います。

ハッピーなときも、そうでないときも、「今の自分は、すべての過去の上に立脚している」と思う僕ですが、それでもできることなら「無かったことにしたい過去」が無いわけではありません。
というより、他人より遥かに多くの「無かったことにしたい過去」があるほうかも知れません(笑)
けれど、過去の不都合な出来事に対し、「あのことさえなければ・・・」と適わぬ想いを抱く自分を好きにはなれないですし、そもそも不健康なことだと思いますから、自分の過去のすべてを受け入れるようにしています。
たとえば、ファイナンスや株式投資についてのセミナーを主催する今となっては、一般論として「無いほうがいい過去」の一つと思われる「懲りないくん」活動のエッセイも引き続きこのサイトに掲載していますし、
たとえば、企業経営や経済について他人に教える立場の今となっては、一般論として「絶対にあってはならないはずの過去」の一つと思われる「倒産と自己破産」についても、書籍を通じて広く社会に公表しています。
これらの「今の活動にとって不都合な過去」を公表することは、おそらく今の活動に対して一定の機会損失をもたらしていると推測できますが、一方で、「こんな経験をしたからこそ生きた知識を伝えられるんだな」と評価していただける方との出会いの機会を得ているともいえます。
もし僕が、過去に会社を倒産させ、自己破産までした人間であることを隠しながら、今の活動を行っていたとしたら、僕の過去を知らない方がセミナー受講に来て、
「えっ!こいつ自己破産したやつなの!そんなやつからお金の話なんて教わりたくないよ!」
なんて話になってしまって、互いに不愉快な気分になってしまいますよね。
だから、過去の自分が現在の自分の活動の機会損失になっていたとしても、「それも含めて今の実力」なのだと僕は素直に思います。
少なくとも僕は、過去のかっこいい部分だけを寄せ集めて作った自分より、失敗や汚い部分も含めた「本当の自分」を評価してくれる人との出会いやチームワークやハッピーのシェアの方が、遥かにハッピーだと思います。

「自然」という言葉は、本来、「自分然とした姿勢」を示す言葉だと思います。
本当の自分を、自然と示して生きていくことによって得られた他人からの評価こそ、自分に対する本当の評価なのだと思います。

2008年3月31日 板倉雄一郎

PS:
明日からガソリンが「おそらく一時的に」安くなります。
本日まで「買い控え」、明日から「買い貯め」なのだそうですが、(ガソリンを使う事業は別に、個人のレベルでは)そんなことしたところで大した違いないですよね(笑)
「ガソリンが安くなるはずだから今はレジャーに行かない」とか、
「ガソリンが安くなった今こそレジャーだ!」なんてのは、ガソリン価格に翻弄された本末転倒な行為のように思えてなりません。
ガソリン価格より、天候に翻弄されたほうが遥かにマシだと思いますし、そんなことに頭を使うぐらいなら、もっと本質的な「お金に関する知識」を習得したほうが遥かに経済的に豊かになれると思います。





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