何度も書いていることですが、金融商品に対する投資とは、
現在の確かなキャッシュを差し出す代わりに、
未来の不確実なキャッシュを受け取る権利を有する事。
つまり、
「現在の確かなキャッシュ(=株価や債券価格)」と、
「未来のキャッシュフロー(の割引現在価値)」の交換を意味します。
(ちなみに、この「不確実さ」のことを「リスク」と表現します。)
人はなぜ投資をするのか?
事業活動を支援するためだとか、
社会に役立つ商品を作り販売するためだとか、
人によってその目的は様々ですが、
多くの人の投資行為に共通する目的は、「金儲け」です。
つまり、
金が欲しいがゆえに投資するのに、その目的を達成するためには、
現在の「確かな金」を差し出さなければならないわけです。
もし、「今の確実な金」が欲しければ、
保有する株式を売却したり、
企業内部にある余剰現金を配当として受け取ったり、
むちゃくちゃ節約して稼ぎを温存したりすればよいのですが、
このとき、「不確実な未来」を売約して得られた「今の確実な金」は、
そのままでは、増えないどころか、インフレなどにより実質経済価値は、
時間経過と共に下落してゆきます。
ここでわかることは、
欲しいものを「直接」追い求める行為は、
実は、欲しいものを手に入れるチャンスを失うということです。
一般的な労働者が、そのサラリーを増加させたい場合もまた、
現在のサラリーから得られた「今の確実な金」を、
スキルアップのための「自己投資」に向けることによって、
将来のサラリーの増加という「不確実な未来」を手に入れるしかありません。
お金に限ったことではありません。
魚釣りで釣果を向上させたければ、いきなり魚を釣りはじめることより、
まずは、魚がどこにどんな状態で居るのかを突き止めることが大切です。
魚が居ないところで、いくら長時間釣りをしても絶対に釣れないのですから。
恋人が欲しければ、いきなり異性に声をかけまくることより、
相手が何を求めているのかを突き止めることが大切です。
ドライブを楽しみたければ、車を保有することより、
免許を取得し、運転技術を磨くことが大切です。
愛が欲しければ、「欲しい」と訴えることより、
愛を与えることが大切です。
愛を与えることこそが、愛そのものだと気がつくものです。
つまり、欲しいと思うモノを「直接」追い求めることは、
欲しいモノを手に入れるチャンスを失うわけです。
僕の場合も、もちろんお金は大好きです。
過去には、僕自身が愚かだったがゆえに、事業に失敗し貧困を味わいました。
貧困な状態に居れば居るほど、
「金が欲しい」、「金があったなら」と、金を直接追い求めようとします。
しかし、
金を直接追い求めているうちは、経済的な豊かさは手に入りませんでした。
あるとき、何かのきっかけで、
「金になるかどうかわからないが、
自分にできる何らかの価値を社会に提供してみよう」
と思うようになり、
持てる知識や経験を、経済的な見返りの約束が無い状態で、
社会に対して提供することを始めてみました。
僕の場合、このときから、不思議と経済的な豊かさが得られるようになりました。
今の日本は、「努力しても報われない社会」だとは思いません。
収入の多い少ないは、
(一部の「金だけいじくってぼろ儲け」の連中や、
病などの事情で価値提供がしたくてもできない人などを除き、)
社会に対する価値提供の度合いに相関するのだと思います。
お金(=通貨)とは、
人が提供する価値を交換するための媒介に過ぎません。
しかし、
何らかの価値を提供した見返りに得られた金は、
「その扱い方」を十分に理解すれば、
気に入った商品の購入、真っ当だと思う企業の株式への投資などを通じて、
社会に対する議決権となるわけです。
社会に対し多くの価値を提供することができれば、
結果として、社会に対する議決権をたくさん得ることができるのです。
僕は、いわゆる「どん底」から、少しではありますが這い上ることができました。
僕が最初に行ったことは、
闇雲に働くでもなく、稼ぐためのビジネスモデルを考えるでもなく、
自分の過去を振り返ったり、先を考えるための「時間」を作ることでした。
今では、そのとき作った「考える時間」が、今に役立っているのだと確信しています。
「貧乏暇なし」といわれますが、その本意は「暇が無いから貧乏」なのだと思います。
言われたとおりのことをしていれば、必ず豊かになる、わけではないのです。
自分のために、社会のために、何をすべきかを考える時間は、
経済的なことに限らず、極めて重要なことです。
具体的な行動より、その行動を起こす前の「考える時間」が、
本質的な価値を創り出しているのだと思います。
2007年1月25日 板倉雄一郎
PS:
株式投資で長期の成功を収めたいなら、
証券口座の開設や、取引のやり方を覚え、
慌しく取引を始めるのではなく、
株価を支払って、どんな価値を手に入れているのかについて、
しっかり学ぶことからはじめるべきです。
つまり、
「株を買う」のではなく、「企業価値を知る術を買う」ことが大切です。
なぜなら、株式投資での成功は、
1、時間経過と共に株主価値が増大するであろう企業の株式を、
2、支払う株価以上の株主価値を手に入れられるタイミングで投資する
という条件が必要だからです。
つまり、手に入れる「価値」をしっかり把握できないのであれば、
株式投資であれ、商品購入であれ、
大切な資金を支払うべきではないのです。
私達の提供する「実践・企業価値評価シリーズ」は、
それらの知識を効率的に得られえる最も優れたセミナーの一つだと自負しています。
しかし、私達のセミナーでなければ得られないことではありません。
専門書を読み漁ることでも、
このサイトの(無料の)エッセーを読み込むでも、
どのような手段でもかまいませんから、
「取引方法」ではなく、「価値の把握方法」について、しっかり学んでください。
私達の暮らす環境(=資本主義経済)について、しっかり学んでください。
多くの人が、
価値を把握する知識、経済についての知識を持つことができれば、
インチキ企業が繁栄したり、
金だけいじくってぼろ儲けの連中がのさばったりする社会ではなくなります。
社会に対する価値提供の違い程度の「格差」に収まるはずです。
他人から経済価値を搾取しようとする人間を懲らしめることより、
搾取されない人間をたくさん生み出すことの方が、本質的解決になるはずです。
確かに、簡単なことではありませんが。