板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「経済的危機の意味」


今、サブプライムローン問題に「起因する」様々な経済的危機が市場を騒がせています。
悲観的な方の意見は、サブプライムローン問題が、米国の実体経済に「長期に渡って」影響を及ぼし、米国経済がリセッションし、さらに、米国経済に依存する日本企業の業績が「長期にわたって」悪化するという見方があります。
また、楽観的な方の意見は、サブプライムローン問題による経済損失は限定的であり、2008年後半には米国経済が持ち直すというわけです。
どちらが正しいのかは、蓋を開けてみなければわかりません。
(↑ 2008年が終わる頃にならなければわかりません。)
最悪の事態は、世界的なスタグフレーション(←景気後退を伴うインフレ)でしょう。
原油価格高騰にはじまり、企業のあらゆるコストが上昇する結果、それを商品価格に転嫁するか、生産調整をするしか手立てが無く、コスト上昇を商品価格に転嫁できない企業は、生産調整の過程で、従業員を解雇したり、設備投資を抑制したりするわけですが、その結果、消費者の商品購買力が減少し、益々、モノやサービスが売れなくなるという悪循環となるわけです。
企業の株価は、その根拠であるところの将来キャッシュフローの見通しが減少することによって下落するでしょうし、スタグフレーションとはいえインフレには違いありませんから、各国の中央銀行は、通貨価値を保つために、金利を高く誘導しようとするでしょう。
その結果、益々企業価値が下落し、株価はデススパイラルに陥る可能性もあります。
各国の中央銀行にとってみれば、インフレ対策として金利を上げたいが、金利を上げれば経済が失速するという「にっちもさっちもゆかない状況」なのだと思います。
が、そもそも、人々が価値ある商品やサービスを生み出すことによって始めて経済が成長するのであって、中央銀行の金利誘導や政府の為替介入によってあらゆる経済危機を回避できるという考え方がおかしいわけです。
金融政策が、にっちもさっちもいかない状況になって当然だと思います。
いわゆる経済危機は、どうして起こるのかを考えたとき、その表面的なメカニズムをいくらでも説明することはできますが、本質的には、「異常な経済状況の調整」という市場の本能が「機能している」のだと思うのです。
世界的なスタグフレーションが発生すれば、いずれ、原油の需要も低迷し、原油価格も調整されるでしょうし、原油価格が高止まりすれば、代替燃料の開発も進むわけです。
世界経済は、こうして何度と無く、異常な状態になり、その異常を市場が感知し、調整局面を向かえ、正常な状態に回帰し、そして再び異常な状態になる、を繰り返すわけです。
ただそれだけのことです。
長期的に観れば、経済的危機という資本主義経済の自律調整があるからこそ資本主義経済が持続可能なのだと思います。
資産運用においては、以上のような楽観的な見方は、いただけないかもしれません。
もし、スタグフレーションになるとすれば、企業の株価は下落するでしょうし、かといってインフレなわけですから現金で資産を保有することもまた損失に繋がってしまいます。
どうすりゃいいんだろう????
その答えは、やはり「個別企業」なのだと思います。
どんな時代にも、成長する企業はありますし、経済危機であるがゆえに、「新たなチャンス」を見つける企業も出てくるわけです。
ここで具体的に「この企業がいいぞ!」という表現は避けたいと思います。
だって、そもそも「将来の見込み」なわけですから、書いたところで僕自身にとっても何の保証もないわけですから、まして、読者の皆さんに勧めるわけにはいかないわけです。
皆さんそれぞれが、それぞれの知識や経験に基づき、「これだ!」と思うような企業へ投資することが、株式投資の「面白さ」なわけですし、そういったリスクを取る事が、後のリターンに繋がるわけですから。
ただし、個別企業を評価する上での基本的な知識を習得することは、経済状況がどうであれ必要なことです。
しかし、どれほど知識を手に入れたとしても、「答え」は、常に、投資家自身の心の中にあるわけです。
それが外れれば、学習すればいいわけですし、それが当たれば、「やったぜ!」と喜べばよいわけです。
2007年11月16日 板倉雄一郎
PS:
現在募集中の「オープンセミナー」は、上記にあるとおり、個別企業を評価するうえでの基本的な知識(←不可避な知識)をお伝えするセミナーです。
既に満員御礼状態(←当初の定員100名を越えています)ですが、2007年最後の一般募集セミナーですので、週明け(2007年11月19日の朝)まで、受講者の募集を受け付けます。
会場のキャパは、本日会場を広くしたので、大丈夫ですので、ご心配なく。





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