板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「ニュース盛りだくさん」

2月2日のエッセイを書いてから、数日間、僕はワンコと一緒に雪深い温泉街に出かけていました。
こういうお休みのときは、僕は基本的にニュースを見ません。
で、帰ってきたら気になるニュース盛りだくさんだったので、本日はニュースフローに乗って、いくつかのプチエッセイです。

<キャスティングボート>

2月2日のエッセイにて、マイクロソフトによるヤフーの買収提案について書いた直後、グーグルによるヤフーとの提携提案がありました。
まさに、ヤフーが、「マイクロソフト VS グーグル」のキャスティングボートになった格好です。

こういう揉み合いは、短期トレードでがっぽり儲け!という向きには、非常に好都合な状態(←ボラティリティーが高い)ですが、結果を「予測」し、どちらかに「賭ける」のは、ラスベガスだけで十分だと思う僕の場合、事が落ち着くまで、しばらく静観しようと思います。

こういった「取り合い(←M&A合戦)」の局面でよくあるのは、「高値で手に入れる者」が現れることです。
当初は、事業拡大のための手段としての買収だったはずなのに、いつしか買収「そのもの」が目的になり、結果的に誰かの「高値掴み」になり、買収に成功したとしても、買収企業の価値破壊に至る場合が多いわけです。
世界のM&Aの成功率が30%程度しかない理由でもあります。
間違いなく儲かるのは、買収の仲介を行うブローカレッジというわけです。

グーグルの場合、マイクロソフトと違い、「買収提案」ではなく「戦略的提携提案」ですから、提携における条件がグーグルにとって多少不利になる(←ヤフーにとって有利になる)可能性はありますが、少なくとも「高値掴み」にはならないという点において、現時点で高く評価できるのは、やはりグーグルです。
多くのM&Aは、少なくとも僕の価値評価の視点では、「(買収企業の企業価値の最大化という点において)提携で十分じゃないの?」という場合がほとんどです。
(↑ 「買収ではなく提携で十分」といった内容のエッセイは過去に散々書いていますので、サイト内検索などでご参照ください。)

一投資家として、投資対象企業の経営者の価値観や戦略に納得できることは非常に大切なことだと思います。
だって、その経営者に大切な資金を委ねているわけですから。
しばらく静観の後、グーグルを買い増そうと思います。

いずれにしても、IT関連企業の「再編」は進むことでしょう。
しばらくは、業界ウォッチァーとしては面白いですが、投資家としては、手が出せない状態が続くような気がします。


<北米リセッション?>

米供給管理協会(ISM)非製造業景気指数をはじめ様々な経済指数が北米のリセッションを示しています。
それらが原因となり、昨日のニューヨークの株価も大幅に下げました。

で、どうなるのか?
仮に北米のリセッションが確実になったとしたら、誰もモノやサービスを買わなくなるのか?

んなことはないわけです。
経済が過熱しているときは、「どんなモノやサービスでも売れる」傾向にありますが、「景気後退局面では何も売れなくなる」、というわけでは無いのです。

しかし、企業や消費者が、「お金の使い方をより吟味するようになる」のは確かなことですから、イケテル企業と、イケテナイ企業の明暗が鮮明になるのは確かでしょう。
こういう局面ほど、投資対象を見極める知識が投資家としての明暗を分けることになります。
(相場全体が上げているときは、知識なんてどうでも良かったりするわけです。いや、むしろ下手に知識があることが、株価上昇に乗り切れないという場面すらあります。)

今こそ、イケテル企業を見つけ出し、しっかり企業価値評価を行い、ベストタイミングでの投資を行う絶好のチャンスだと思います。
日々のニュースに踊らされず、しっかり個別企業の経営について評価するべき時ですね。

どんな状況でも、「やるべきこと」、はあるものです。
「やるべきこと」を見つけ出し、実行できる者が、長期に渡る成功を手に入れられるのだと思います。


<毒入りギョーザ>

食品加工段階の管理が不十分なのか、
食品の大部分を輸入に頼る日本の構造が問題なのか、
中国の歪だらけの経済成長が問題なのか、
一部のばか者の仕業に過ぎないのか、
いや、それらはすべて「表面的な」問題に過ぎないのだろうと思います。
本質的な問題は、日本の消費者が、「安けりゃそれに越したことはない!」と、ひたすら価格の安い商品を求めたことが本質的な問題だと思います。

ある知人が、
「僕は、1日の食費を1000円以内にしているんです!」
と言っていました。
もちろん僕は、即座に、
「それって、とんでもないモノを食べていることになるんだよ」
と意見しました。
その彼は、「資産を増やすため」という理由で、食費を削っているわけですが、よーく考えていただきたいと思います。

投資とは、「現在の確かなキャッシュを差し出す代わりに、将来の不確かなキャッシュフローを手に入れる行為」であることから、投資で成功するためには、常に、
「差し出すキャッシュ」 < 「将来のキャッシュフローの現在価値」
という条件を満たす必要があります。
この条件を満たす限りにおいて、「金はあったほうがいい」ということになりますから、「必要の無いモノへの支出を抑える」という行為は、確かに効果があります。
しかし、食費を極端に押さえ、キャッシュを残すという行為は、
「食費を抑え残したキャッシュ」 < 「それによる健康被害の現在価値」
になってしまう可能性が高いと思います。

お金は割りと多くの問題を解決してくれます。
しかし、「健康であって初めて資産の価値がある」ということを絶対に忘れてはならないと思います。
そうでなければ、本末転倒ですから。

お金とは、「社会に対する議決権」であり、「活動のための資源」です。
だからこそ、お金は、「人」に帰属するわけです。
その「人」の健康が維持できないとすれば、議決権の行使も、活動もできなくなってしまいます。
お金「そのもの」が増えたところで、それを使う「人」が居なければ、お金なんて何の意味もありません。


<地方格差>

この数日間、僕は、いわゆる「地方格差」の現実を目の当たりにしました。
この数日間のプチ旅行の先は、ちょっとジジババ臭いけれど、群馬県は水上温泉のとある「ペットと泊まれる宿」でした。
「ペットOKの温泉宿」は、そうめったらたらにあるわけではないし、あったとしても「事業拡大のためにペットOKにした」という場合より、「業績不振からのリカバリーのためにペットOKにしてみた」という感じの宿が多く、まぁ、「すばらしい宿」の場合はあまりなくて、「ワンコと一緒に入れるだけでよしとしよう」という感じになります。

水上温泉に二泊し、その間に、猿ヶ京温泉、法師温泉、苗場、越後湯沢と、宿周辺の街をドライブがてら回ってみましたが、どの街も、僕のスキー全盛期(←えーと、20年ほど前から15年ほど前までの期間になります・笑・・・年取った実感)に比べ、
(1)スキー客が激減。
(2)繁華街に人影無し。どれどころかシャッター街に。
(3)ハイシーズンなのに、道路ガラガラ。
(4)夜のリゾートマンションの窓に明かりが見えるのは、100戸中2戸程度とかなり悲惨。十数年ほど前のリゾートマンションブームのときに不動産屋に騙されて投資した人の現在。
でした。
こうなると、全盛期に投資したインフラばかりが目に止まります。
僕がスキーに燃えていた頃に対面通行だった関越トンネルは、2本とも完成し、片側2車線となりましたが、インフラが整備され、そのキャパシティーが増加した割合以上に、利用者が減少している現実を見ました。
インフラ整備は、常に、その需要の全盛期に計画され、その計画が実現したときには、既に需要がなくなっている・・・そんなことを繰り返しているように思います。

道路を整備し、新幹線を通し、巨大モールを作り、リゾートマンションを作る・・・
それが本当に地方経済を活性化させるのでしょうか。
絶対に違うと思います。
だって、そんなインフラが「東京並みに」整備された地方なんて、わざわざ出かける意味ないじゃないですか。

新幹線の駅ができた街が、できなかった街に比べ経済的に豊かになった例は確かにありますが、それは、駅ができなかった街の経済価値が、駅ができた街に移転した結果の経済格差であって、新たに経済的な価値が生み出されたわけではないと思います。

今回の旅行で、「もう一度行きたい」と僕をして思わせたのは・・・
ろくに除雪もしていない狭い道路一本が唯一の交通手段で、
周囲は山に囲まれ、建物も数十年以上経過した木造の「法師温泉」でした。
(本館に至っては、明治8年築!)
残念ながらペットNGなので、なかなか行けないですけれど、こういう環境だからこそ、わざわざ、時間とお金と体力を費やしてでも出かけようと思うわけです。

日本人は、日本国土と、日本人が持つ固有の価値をいつしか忘れてしまったのではないかと思います。
とても残念です。


ということで、本日はいくつかのプチエッセイでした。
読者の皆様も、「本当に求めるものが何か」を是非考える機会にしていただければ幸いです。

2008年2月6日 板倉雄一郎

PS:
しかし、この国は、ペットに関して厳しいですね。
ヨーロッパのホテルを旅したことがある方はお分かりだと思いますが、たいがいのリゾートホテルの部屋には、「ペットに関する注意事項」なるマニュアルが置いてあります。
つまり、ペットは基本的にOKなのです。
ホテルに限らず、レストランでも、ヘーキでワンコを連れて入れます。
もちろん、その一方で、ペットの躾もしっかりするような文化があります。
アレルギーの方もいらっしゃるとは思いますが、「共存」は可能なはずなんですけれど。

PS^2:
「会計基礎入門DVD」をリリースしてから2日ですが、予測以上に売れています。
ありがとうございます。
読者の皆様へ「知識という価値の提供」ができることを嬉しく思います。
これからも、コツコツ、当事務所の活動理念に沿った活動を継続したいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。





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