板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「第22回合宿セミナーランナップ」

先週末(2007年1月13日~14日)は、合宿セミナーでした。
これまで同様、少なくとも僕の目から見れば、ナイスガイ&レイディースばかり。

当事務所のセミナーが、もし、
「1年で資産10倍!」とか、
「楽してぼろ儲け!」とか、
「儲かる銘柄教えます!」とかのエゲツナイ誘い文句を使っていたとしたら、
彼らのような人間には出会えないだろうし、
また、足掛け4年の長期にわたるセミナーの継続は不可能だったでしょう。
受講生は皆、「自分の価値を今以上に創造するための自己投資」の2日間を、
楽しんでいただいたのではないかと思います。
参加いただいた皆様へ、ありがとうございました。

さて今回は、セミナー当日に僕が気がついたことについて書かせていただきます。

<投資に至る過程>

企業価値評価を実践すると、「ひとつの結果」として、
当該企業の「一株あたり理論株価(=現在の妥当な価格)」が得られます。
しかし、理論株価にばかり着目した投資活動を行おうとすると、
スクリーニングによって「割安銘柄」を抽出することばかりに気をとられ、
本来、企業価値評価の知識によって判断するべき「真っ当な企業か否か」という点が見落とされてしまいます。
「割安(=価値と価格の裁定余地あり)だが、ずさんな経営」に、
大切な資金を投じてしまう可能性があります。

僕が薦める投資に至る過程とは・・・
1、投資家自身が「良く知っている業界や企業」の企業価値評価を行い、
2、真っ当な経営を行っている(これからも行うであろう)企業を抽出し、
3、「割安になるチャンスを待つ」
4、裁定利益と、時間経過による価値創造に資金を持って長期で参加する。
なのであって、
1、割安銘柄を抽出
2、即投資実行
3、裁定されたら、さいなら
と言った、「金にガツガツな投資手法」ではないわけです。
後者の手法は、「時間経過による価値創造(または破壊)」に着目すれば、
リスクに見合わないリターンしか得られないと、僕は考えます。
また、「目先の金にガツガツする」ことを「投資」とは呼べません。

(「真っ当な企業」については、ここで書き始めると長くなるので、
 このサイトの過去のエッセーを参考にされてください。)

企業価値評価の知識の応用範囲は、投資活動ばかりではありませんが、
もし投資活動に応用するなら、
「真っ当な企業を見抜く術」として使っていただきたいと思う次第です。

投資リスクを軽減する最も合理的な方法とは、
「真っ当な企業に、最適なタイミングで投資し、長期で持ち続けること」です。

お金とは、社会に対する議決権です。
いくら裁定余地があるからと、(結果として)インチキ企業の繁栄のために議決権を行使するのはばかげていると思います。
「金が儲かれば何でもいい」という方は、他のセミナーへどうぞ。

結局のところ、経済的に豊かになるためには、
知識を得たり経験を増やすことによって「自分の価値を増大させる」以外に無いのです。

<ファイナンスで躓く理由>

ファイナンスの学習は、多くの「普通生活者」にとって「新しい概念」だと思います。
私達日本人の多くは、親や先生、そして社会から、
1、経済的に豊かになるためには、金を使わず貯めろ!
2、借金はするべきではない。借金は貧乏人のすること。
と、教えられてきたのではないでしょうか?
しかし、上記の1も2も、明らかに間違っています。
ファイナンスを学ぶうちに、
経済的に豊かになるためには、
1、支払う価格以上の価値を手に入れる
2、時間経過と共に価値が創造される対象を手に入れる
ということが明らかになりますが、
「支払う価格以上の価値を手に入れる」ためには、
「金を支払わなければならない」わけであって、
闇雲に「貯蓄すればいい」ということではないわけです。
(もちろん貯蓄が無ければ、投資はできないわけですから、貯蓄や節約そのものを否定しているわけではありません。)
また、
「時間経過と共に価値が創造される」ためには、
そのひとつの手段として、
「自己資本に比べ、相対的に資本コストの低い有利子負債の利用」は、
極めて合理的な手段です。
こちらもまた、闇雲に「借金はいかん!」って事ではないわけです。

もちろん、過去の僕のような、事業リスクに対して「レバり過ぎ」は禁物ですが。
参考エッセー:DeepKISS第54号「最適D/E比率」)

以上のように、
私達がなんとなく認識している経済に対する「一般的な思い込み」は、
その根本の部分で経済原則に反していることが多く、
その間違った認識が体に染み込んでいるものだから、
「理屈ではわかるが、応用ができない」という躓きの原因となっているように思います。
経済価値を正しく把握するためには、それなりの知識が必要です。
価値を正しく把握できない対象に大切な資金を投じるのは馬鹿げています。

以上、今回は僕がセミナー中に思いついたことについて書かせていただきました。
皆様の参考になれば幸いです。

2007年1月15日 板倉雄一郎

PS:
現在、「実践・企業価値評価シリーズ」合宿セミナーの募集を行っています。
第23回(2月開催分)は、残り5席で締め切ります。
第24回(3月開催分)は、十分な余裕があります。
このセミナーの皆様にとっての価値が、セミナー価格を上回るとお考えの方は、
是非この機会に。
なお、セミナーの価値を算定するためには、
1、このサイトのあらゆるエッセー、
2、ネット上に散らばるセミナー卒業生の評価
などを参考にされてください。

「セミナーで得られるであろう価値は大きいと思うが、いきなり25万円はちょっと」
とお考えの方は、合宿セミナーの第1コマを完全収録したこちらをどうぞ。

PS^2:
久々の合宿セミナーとあって、ちょいと体調を崩しました。
単なる風邪だとは思いますが、自己管理ができていないことが腹立たしいです。
風邪ひくと、人生の大切なリソース=時間、が無駄に消費されてしまいます。
が、たまには風邪ひいて、「じっくり考える」も必要かと思います。
そう思うようにしています(笑)





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