板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

企業価値評価・経済・金融の仕組み・株式投資を分かりやすく解説。理解を促進するためのDVDや書籍も取り扱う板倉雄一郎事務所Webサイト

feed  RSS   feed  Atom
ホーム >  エッセイ >  ITAKURASTYLE  > ITAKURASTYLE「インフレに強い企業」

ITAKURASTYLE「インフレに強い企業」

インフレの波がやってきているようです。
原油価格、食料品価格、サービス価格、そしてモノの価格が上昇していますよね。
インフレとは要するに、
「モノの(通貨に対する)価値が上昇する」
または、
「通貨の(モノと交換する)価値が下落する」
ことです。
よって、
インフレによって損をするのは、
通貨の形で資産を保有し続けることや、
固定金利の金融商品を保有し続けることですが、
一方で得をするのは、
モノや、
「原材料費、人件費そして資本コストの上昇分を商品価格に転嫁できる事業」として資産を保有し続けることです。
「原材料費、人件費そして資本コストの上昇分を商品価格に転嫁できる事業」として資産を保有するということは、すなわち「株主になること」です。
(ちなみに、株式投資がインフレに強い理由として、「企業は、低利の固定金利の有利子負債を抱えているからインフレに強い」という表現をする方がいらっしゃいますが、これは間違い。
なぜなら、その固定金利の期限が迫り、借り換えをするときには、その時点での長期金利+リスクプレミアムが有利子負債コストになるわけですから、「長期的には」有利子負債があるからインフレ(=金利上昇)に強いというのは間違いです。
当該企業の資本コストの上昇に多少のタイムラグがある程度に過ぎません。
株価チャートが日々動くのに対して、有利子負債コストは、その契約期限のたびに「階段」のように変化するってだけの話です。
また、「期限が来たら借り換えせずにDES=Debt Equity Swapすればいいじゃないか」という短絡的な意見も間違いです。
一般的にKd=Cost of Debtより、Ke=Cost of Equityの方が高いですし、Keには節税効果もありませんから、コストの高い資本に入れ替えるDESによって加重平均資本コストは上昇してしまいます=企業価値を破壊します。)
しつこいようですが、インフレに強い(=インフレ率以上に株主価値が増大するであろう)企業とは、インフレによるあらゆるコスト(=原材料費、人件費、資本コスト)の上昇分を、商品価格に転嫁できるであろう企業です。
では、具体的にはどんな企業なのか・・・
一般論としては、「競争優位性の高い企業」だとか、「レアモノを商品として扱う企業」だとか、「市場占有率の高い企業」だとか、「独自の技術力を持つ企業」だとか、いろんな「曖昧な表現」がされますが、ひとつ具体的に示したいのが・・・
「インフレによって価格が高くなったモノを買う数量を、
 ある企業によって創られた商品を採用することによって減らせる」
という条件を満たす(上記文中の)「ある企業」です。
たとえば、「東レ」なんかが良い例です。
(昨日の日本経済新聞の1面トップでも炭素素材の自動車への応用に関する同社の投資が取り上げられていましたよね)
彼らの炭素繊維をローコストで造る技術は、すでに航空機のボディーに採用されていますが、聞くところによると(それが本当かどうかは調べようがありませんが)航空機の燃費を20%も向上させることができるそうですから、従来素材に比べ高価な素材であっても、その素材のおかげで航空機の運行上節約できるジェット燃料のコスト(の割引現在価値)の方が大きければ、結構売れることでしょう。
(ファイナンス理論的には、
 「従来素材に対する炭素繊維の価格プレミアム」と、
 「炭素繊維を使った場合に節約できる燃料費を、
  航空会社の資本コストで割り引いた現在価値」を比較して、
 前者の方が小さければ、炭素繊維に対する価格プレミアムを支払う合理的な理由になる、というわけです。)
よって、もし、原油価格が高止まりするか、高騰を続けるという市場の「見込み」があるとするならば、炭素繊維の妥当な価格もまた、上昇することになります。
以上のような「条件」を満たす企業を探し、投資タイミングを待つことが大切です。
ただし、ここで「ひとつのケース」として取り上げた「東レ」にすぐに投資しろ!と言っているわけではありません。
過去のエッセイでもしつこく書いてきたとおり、
「どんなに(投資家から観て)良い企業だとしても、
 その価値に対して高い価格で買ってしまったのでは意味が無い」
のです。
現在の「東レ」の株価が、一株辺りの価値に対して割高/割安なのかは、皆さんご自身で企業価値評価を行って判断してください。
「東レ」に限らず、「これから行けるぜ!」という企業、結構見つかると思います。
ただし、市場はそんなに馬鹿じゃありませんから、このような(投資家から観て)好条件の企業の株価は、将来の成長を織り込み「過ぎ」で、この時期、概ね「割高」の場合が多いのです。
結構トホホな事なのですが(笑)
インフレを予測した結果、「資源に投資する」という一直線の考えを否定するつもりはありませんが、以上のように「資源を節約できる技術」も極めて効率的な投資になり得るでしょう。
2007年10月10日 板倉雄一郎
PS:
10月10日は、過去の統計上、最も晴天の確率の高い日だそうですが、
確かに今年も、全国的に晴天のようですね。
こういう日は、可能な限り、「お外」にいる用事を増やしましょう(笑)
PS^2:
明日は、これまた「お呼ばれ講演」のために、福岡まで日帰りしてきます。
福岡は、僕の好きな街のひとつ。
女性のルックスは、どういうわけか僕の好みで、
食事もおいしい。
その上、「時間距離」は、大阪より近い。
(↑ 空路は1時間半ぐらいですが、空港から博多までタクシーで15分ぐらい)
けれど、トンボ帰りなので、それらを味わうことはできません(笑・残念)





エッセイカテゴリ

ITAKURASTYLEインデックス