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IR物語 第21回「外資によるM&Aは恐るに足らず?」

(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

板倉雄一郎事務所パートナーの吉原です。

先日、米シティグループが日興コーディアルグループを株式交換方式で完全子会社化すると発表されましたね。いわゆる三角合併の初の事例です。

今年5月の三角合併解禁前には、「これにより外資の買収が加速!」なんて不安を煽る記事がたくさんありました。

しかし、解禁後、外資による三角合併事例はなかなか出てきませんでした。
一説には、解禁した直後に発生したブルドックソースとスティールの争いに関する判決が投資家にとって厳しい内容だったため、外国人投資家が日本市場に幻滅して盛り上がらないのでは・・・なんて話も出ていました。
(この点については板倉さんが以前にエッセイで指摘されており、大前研一さんもこちらで同様の指摘をされていました。)

そうした中、今回、三角合併が初めて行われる見通しとなったことで、外資脅威論が再び盛り上がるかもしれませんね。

ちなみに、私はこの「外資脅威論」が好きではありません。
メディア等では、金の亡者のようなハゲタカに日本が騙されて富を奪われるかのような表現で説明されることがあります。

しかし、私はそうは思わず、従来、日本ではファイナンスの基本原則に基づいて行動する投資家が少なく、その結果、海外の投資ファンドに株主利益が移転した事例が多くあっただけだと思うのです。

外資脅威論には、なんだか子供がお化けを怖がっているような稚拙さを感じるし、日本人全体が自分達のことを無知だと認めているようで悲しさを覚えます。
また、カモ扱いされているのが単純にムカつくんですよねぇ・・・。

将来は、日本全体のファイナンシャルリテラシーが向上することにより、海外の投資家に「日本市場は投資家が成熟しているので、簡単には儲けることができないな・・・」と思わせたいです。

板倉雄一郎事務所での活動がその一助になればよいなと思っています。

参照エッセイ:KISS第33号「お金の仕組みを教える理由
参照ストリーミング:「理念と活動

さて、外資による買収といえば、今月、私が保有していた銘柄のひとつが外資による友好的TOBにより上場廃止することになりました。

この会社は食品(のど飴)業界の会社で、業界の中では事業効率が高い会社だったので昨年5月から投資を開始しました。

先日TOBに応じて売却するまで1年ちょっとの短いお付き合いでした。
この会社は、ここ1年の業績が冴えないことから株価が下落基調でした。
投資してすぐに含み損を抱えた私は、「投資するのが早過ぎたかなぁ・・・、あぁ?下手こいたぁ・・・」なんてヘコんでいました。

「でも、そんなの関係ねぇ!」とばかりに株価下落に合わせてナンピン買いをしていたら、英国の大手菓子メーカーがこの会社にTOBを実施するニュースが飛び込んできました。

そのTOB価格が市場価格にプラス68%のプレミアムがついたおかげで、私のナンピン買いは報われました。
同業他社である英国の大手菓子メーカーがこの会社とのシナジーを見込んで評価してくれたおかげです。
上記の例が示すように、外資によるM&Aは既存株主にとって投下資本回収の機会が増えることを意味します。
一般投資家からなかなか理解されずに株価が上がらなくても、特定の投資家がその会社にプレミアムを見出せば、既存株主には市場価格を上回る売却機会が訪れますからね。
もっとも、TOBに出くわす機会が増えると、対象となる株主も株主価値に対する理解が問われます。
特に敵対的TOBとなれば、現経営陣と敵対的買収者の提案のどちらが株主にとって望ましいかを判断しなくてはなりません。
(当事務所のコミュニティでは、以前にブルドックとスティールの事例を取り上げてディスカッションしましたが、とても勉強になりました。)
そのように考えると、価値と価格の違いがわかれば、外資によるM&Aはいたずらに恐れるものではなく、投資家として歓迎できる面があるのではないでしょうか。
これだけ経済がグローバル化している中で、外資によるM&Aを避けて通るのは現実的でないと思います。
どうせなら、日本全体のファイナンシャルリテラシーが向上することで、
「かかってきやがれ」くらいの心意気で迎えたいですよね。
(って、そんなこと思っているのは私だけですかね・・・?)
そのためにも、私はまだまだファイナンスを学びたいです。

そして、独りで学んでもつまらないので(笑)、板倉雄一郎事務所を通じて知り合った皆さんと一緒に楽しく学んでいきたいと思っています。

興味のある方は是非ご一緒に!

PS
ちなみに、初体験だったTOB申込手続は結構面倒でした。
公募買付代理人の証券会社以外の証券口座で株式を保有している場合、
「公募買付代理人の証券会社の証券口座開設→株券移管手続の実施→公募買付応募申込書の提出」という手続きを約1ヶ月の間で行わなくてはならず、ぼんやりしていると日程がタイトになります。

今後、皆さんの保有銘柄がTOBを受け、TOBに応じる場合には、スケジュールに気をつけてくださいね。

なお、手続が面倒であれば、市場価格がTOB価格に近づいた際にマーケットで売ってしまうのも一つの手です。

2007年10月9日  S.Yoshihara

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