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IR物語 第24回「くたばれ!コンプライアンス」


(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)
板倉雄一郎事務所パートナーの吉原です。

今日のエッセイは「くたばれ!コンプライアンス」ということで、最近何かと強化されているコンプライアンス(法令遵守)に対して異議を唱える内容です。

ちょっと乱暴な独り言ですが、どうかお付き合い下さい。
相変わらず後を絶たないコンプライアンス違反の話題・・・。
食品・建設・金融業界など毎日いろんな不祥事の話題で持ちきりです。
そして、これらの違反に対処するために、さらに法令・社内規則が厳しくなっています。

TVや新聞が鬼の首を取ったようにこれらの問題を追及するのを見るたびに、私はどんよりした気持ちになります。

そして、「弱い者達が夕暮れ?さらに弱い者を叩く」というTRAIN?TRAIN(ブルーハーツ)のフレーズが頭の中で鳴り響きます。

もちろん、法令を遵守することは重要であり、かつ、違反した会社は厳しく罰せられるべきであることに異論はありません。

ただ、最近、「少し行き過ぎなんじゃないの?」って思うのです。
今の風潮って、国民全体を幸せにしないような気がします。

なぜそのように私が考えるかと言うと・・・、
(1)法令(社内規則)を強化すると、それらに対応するために企業の負担するコストが増加します。

(2)そして、多くの場合、それらのコスト増を吸収するために、従業員に対してこれまで以上の効率で仕事をすることを求めます。

(3)これにより、一人当たりの負荷が増えた従業員の不満は増加します。

(4)これらの不満が高まると不祥事の内部告発が起こり、不祥事が表沙汰となります。

(5)公表された不祥事に対して、世の中は徹底的に断罪します。
なぜなら、みんなコンプライアンスでストレスが溜まっており、「俺たちが苦労して守っているのに、どうして守らないんだ!」と潜在的に思っているからです。

(6)不祥事に対応するべく、法令・社内規則が強化されます。
→ (1)に戻ってループします・・・。

なんだか人に優しくなれないループですよね。
最近、世の中がこうしたループに陥りつつあるような気がするのです。
特に最近不思議に思うのは、法令遵守・強化により今まで以上の品質・サービスを要求している点です。

例えば、最近話題になった白い恋人、赤福、地鶏等の食品問題は、大規模な食中毒騒ぎを引き起こしたわけではありません。

しかし、法令・社内規則遵守違反を社内から告発されることで、会社(ブランド)は致命的なダメージを受け、事業の存続が困難になる場合も生じています。

先日の板倉さんのエッセイ「赤福モード」では、こんな表現がありました。

『いわゆる食品偽装事件の発覚原因が、「消費者からの苦情」ではなく、「内部告発」が大部分であるとするならば、消費者は商品に対する「自らの舌での評価」ができていないということになりますよね。別の表現をすれば、消費者は対価の大部分を「ブランド」に求めているといえるのではないかと思います』

これを読んで私が思ったのは、「結果的にこれまで被害が出たわけではないのに、また、そのブランドの食品をこれまでおいしく食べていた(自らの舌では評価できなかった)のに、なぜ世間はここまで問題にするのだろう?」ということです。

確かに、「ブランド」にあくなき品質向上を要求することで、消費者はその「ブランド」を無条件に信頼して、自分で品質の信頼性を判断することなく購入することができます。消費者は考えなくていいからラクですね。

そのため、その信頼を裏切ったブランドに対して厳しい評価を下すことは理解できます。

しかし、これまで以上に品質・サービス向上を追求するのがみんなにとって本当に幸せなことなのでしょうか?

私は、みんながある程度品質・サービスに対する要求水準を下げて、そのリスクを取る方が、前述した負のループに陥らずにすむので幸せなのではないかと思うのです。
あまりにもコンプライアンス違反に過敏に反応したり、コンプライアンスを強化し過ぎると、個人が判断する(考える)能力が失われ、その行く末は「思考停止社会」(=とにかく安全を求めて、自分で判断してリスクを取ることを放棄したがる社会)なのでは、と思います。

私はいわゆる管理部門の仕事(経理・財務・IR等)を行っており、常にコンプライアンスを意識しなければなりません。
(そのため、コンプライアンスにムカついているのかもしれません(笑))
言い換えると、私の仕事は「様々なルールを守っていればOK」な仕事であるともいえます。

しかし、最近、こうした状況に慣れ過ぎると、人間として考える能力が失われるような気がしているのです。

「コンプライアンス」でメシを食いつつも、「コンプライアンス」の奴隷にならずに、距離を置いて付き合いたいと思う今日この頃です。
(もちろん、仕事上は遵守します・・・)

ちょっと乱暴な議論かもしれませんが、皆さんはどう思いますか?

PS 
今週24日(土)のオープンセミナーの申込みが定員100名を超えての応募締め切りとなりました。多数のお申込みありがとうございました!
(会場を増設して対応いたしますのでご心配なく)

今回の「有価証券報告書の読み解き方」も面白いコンテンツに仕上がったと自負しておりますので、皆さんに楽しんでもらえれば幸いです。

ご応募頂いた皆さん、どうかよろしくお願いします!

2007年11月20日  S.Yoshihara
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