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IR物語 第45回「小肥羊と味千拉麺」

(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

板倉雄一郎事務所パートナーの吉原です。

ここ最近、シンセン(中国)で仕事をしていたのですが、今週から日本に復帰しました。東京はやはり寒いですね。

最近の金融危機により日本だけでなくアジアの株式市場も大きく下落していると伝えられています。しかし、日本以外の株式市場が割安かどうかって案外ピンと来ないことありませんか?

今回のエッセイでは、シンセン滞在中に気になった企業について投資対象として魅力的かどうかをざっくり検証してみようと思います。

取り上げる企業はやはり身近なところからということで、シンセン滞在中に私が好んで食べた「小肥羊」と「味千拉麺」を検証してみました。

【お店紹介】

「小肥羊」(シャオフェイヤン)

2種類のスープ(マイルド風味の白スープと非常に辛い赤スープ)を用いた火鍋がウリのお店で、日本にも店舗があります。

2種類の味が楽しめておいしい上に、医食同源をコンセプトに身体にも良いとのこと。シンセンではお腹いっぱい飲み食いしても一人当たり約1,000円前後というリーズナブルさも魅力で、滞在中にハマってました。

(ただし、マトン肉と香辛料が混ざり合った強烈な匂いが服に付くのが難点です・・・。お店も承知しているらしく、中国のお店にしては珍しくカバンや上着にカバーをかけてくれます。)

「小肥羊」を経営する中国内モンゴル小肥羊(内蒙古小肥羊餐飲連鎖有限公司)は、1999年の第一号店出店以来7年間で700店以上の店舗を展開するまでに急成長している中国第2位の外食チェーン大手企業だそうです。
(2006年中国商務省発表。WEBサイトより抜粋)

味千拉麺(アジセンラーメン)

「味千拉麺」は日本(熊本)が発祥のラーメンチェーンで、世界中にお店を出しています。日本や香港国際空港内にもお店があるので、食べたことのある方は多いのではないでしょうか?

シンセンでは、とんこつラーメンを中心に様々なラーメンを300~500円で食べることができます。味も結構おいしいです。

また、ラーメン以外にも様々なサイドメニューを揃えた「ラーメン居酒屋」というコンセプトで、中国人のハートをがっちりキャッチしています。

それは「味千拉麺」が日本発のブランドながら、日本での店舗数よりも海外(特に中国)での店舗数の方が多いことからも伺えます。
(国内 106店舗、海外 9カ国・241店舗(08年4月現在))

【財務データ】

この両ブランドには、「最近、香港市場(メインボード)に上場したばかり」という共通点があります。
特に、「味千拉麺」は日本市場で上場していないのにかかわらず、香港市場で200億円以上資金調達して上場した珍しいケースです。
(このケース、今後は増えるかもしれませんね・・・)

両社の主な財務データは下記のとおりです。

S.Y_045_E0.gifのサムネール画像

(※)サーチナファイナンス及び香港証券取引所のデータを参照。
12.4円/香港ドル、14.2円/人民元で為替換算。
両社のデータを見て感じた点は以下のとおりです。

1.両社は売上・営業利益共に高い成長を示している。直近の売上高は同じくらいだが、利益率及び成長率は味千拉麺の方が高い。
そして、その差が時価総額の差に現れている。

味千の利益率31.4%はどうしてこんなに高いのか・・・確かに、小肥羊の方がお得感は強かったですが・・・。フランチャイズのフィー収入が多いのでしょうか?
(どなたかご存知でしたら教えて頂けると幸いです)

2.上場して資金調達したばかりであり、上場後に株価が大きく下落しているため、時価総額に対する現預金の割合が大きい。

日本でも新興バブルの終わりに上場した銘柄には同じパターンがありますね。ただ、この2社の方が日本の多くの新興企業よりも成長力がありそうなので魅力的です。

【まとめ】

これまでは中国や香港の株式市場に対して「これまで投機的に上昇していたので、少々下落してもまだ割高なんじゃないの?」と思っていました。しかし、今回の2社をざっくり分析したところ、ブランド力を背景に店舗数拡大→業績拡大のパターンが続くならば現在の株価水準でも投資対象として面白そうです。

ちなみに、こちらのサイトでは世界の株式市場の予想PERが毎日更新されています。(トップページ中央の投資情報-世界の株価指数をクリック)

このサイトによると、日経225の予想PERは14.71倍、香港ハンセン指数は9.34倍、ハンセン中国企業株指数(H株)は8.16倍、NYダウ工業30種は10.06倍です。

PERという指標のみで割安・割高を論じるべきではありませんが、予想PERによる比較では日本の株式市場は世界の株式市場と比べて割安というわけではありません。

また、個人的には、今後、日本の株式市場が海外の投資家から注目されなくなり、一部の国際優良銘柄を除いた多数の銘柄がバリュートラップに陥る可能性があることを危惧しています。

そのため、今後は日本の株式市場に上場している銘柄だけでなく、世界の株式市場に上場している銘柄をきちんと分析する必要性を感じています。海外企業の内容を理解することで、日本企業の強み・弱みもあらためて理解することができると思いますし。

というわけで、今回は小肥羊と味千拉麺を取り上げてみましたが、自分がおいしいと感じた料理が国境を越えて普及するのは嬉しいものです。
両社が今後どのような成長を果たすのか、注目していきたいと思います。

皆さんも小肥羊&味千拉麺にお立ち寄りになる機会があれば是非!

(注)なお、今回のエッセイで取り上げた企業について、板倉雄一郎事務所による売買を推奨するものではありません。

PS シンセンでの駐在生活をきっかけに個人的なブログを始めました。
ここでのエッセイと比べるとたわいもない内容ですが、よろしければご覧ください! → ブログ:不入虎穴 焉得虎子

2008年11月20日  S.Yoshihara
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