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IR物語 第1回「理想のIRとは」

(毎週火・木・土曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

板倉雄一郎事務所パートナーの吉原です。

以前板倉さんが始めようとしていた「IR物語」を私の方で担当すること
になりました。

この話を頂いた時からどういう内容にしようか考えていたのですが、
私はこのシリーズで皆さんに「IRの理想と現実」をお伝えしようと
思いました。

「IR」は会社にとって重要な業務であるにもかかわらず、
その趣旨が誤解されやすい側面もあり、
実務上では理想と現実のギャップがあります。

私はIR実務に携わっている経験を活かして、
IRの理想と現実を具体例に基づいてご紹介していきたいと思います
ので、どうかよろしくお願いします!

そもそも、「IR」とは何でしょうか?
まず今回は、「IR」の理想的な姿についてご紹介したいと思います。
「IR」という言葉は色々なところで定義されているのですが、
私が一番しっくりくるのは全米IR協会(NIRI)による下記の定義です。

 「インベスター・リレーションズ(IR)は、
企業の証券が公正な価値評価を受けることを最終目標とするもので
あり、企業と金融コミュニティやその他のステークホルダーとの間に
最も効果的な双方的コミュニケーションを実現するため、
財務活動やコミュニケーション、マーケティング、
そして証券関係法の下でのコンプライアンス活動を統合した、
戦略的な経営責務である。」

これを読むと、何だかエラそうな仕事ですよね(笑)。
上記の文章は英文を直訳した硬い表現なので、
私なりに補足説明を入れてみたいと思います。
ポイントは、下記の3点です。

(1)公正な価値評価を受けること
 「公正な価値評価を受けることを最終目標とする」ってことは、
現在の株価が安すぎても高すぎてもダメということです。

 <よくある誤解>: IRの仕事は株価を上げること!

「株価は高ければ高いほどいいじゃない?」という声もあるかと
思いますが、実態より高すぎる株価を目標にしたり、
維持しようとすることは、様々な利害関係者にとって
良い結果を招かないことが多いです。
これについては、次回以降で触れていきたいと思います。

また、「公正な価値評価を受けることを最終目標とする」ということは、
経営陣は「自社の公正な価値はいくらなのか」ということを
常に意識している必要がありますね。

(2)双方的コミュニケーション
 「IR」って、誰が誰に対して何を行うことかと言うと、
会社の「経営陣」が
「株主・投資家を中心とした様々な利害関係者」に対して
「自社に関する情報を開示・説明し、それに対する利害関係者の意見を
吸い上げること(双方的コミュニケーション)」です。

<よくある誤解>:IRは株価を上げるための材料を
効果的に発表するのが仕事

 一般的に「IR」は株式市場に対する情報発信の側面のみが
クローズアップされがちですが、各利害関係者からの質問・意見に
ついて誠実に回答することや経営に取り入れることで、
各利害関係者の利害調整を行うことが重要です。
これが適切になされると、
経営陣に対する各利害関係者の信頼度が高まります。
特に、株主・投資家のリスク認識が低下することによる
企業価値の向上は、IR業務の最も重要なミッションです。

(3)戦略的な経営責務
IR業務は、経営陣が各利害関係者に対して負う責務(説明責任)
です。

<よくある誤解>:経営陣がIRに時間を割くのは無駄で、
IR担当者に任せるべき

IR業務は、法令で定められた事項を網羅的に開示した上で、
各利害関係者に対して多種多様な項目をわかりやすく説明することが
求められることから、とても担当者任せにできる業務ではありません。
そして、IRの巧拙は目に見えない形で企業価値に影響を及ぼします。
このため、経営陣はIRを戦略的な経営責務と認識し、会社の状態が
良い時も悪い時も継続して関与することが必要です。

長くなってしまいましたが、ここまで「IR」の理想的な姿を
書き連ねてきました。

しかし、IR実務の現場は全てあるべき論に従って動いているわけで
なく、むしろあるべき論に従って動いていないケースが多々あります。
この違いがわかると、
無味乾燥な開示情報に対する見方が変わりますよ!

次回以降は、実際に行われているIRの具体例をご紹介しながら、
話を進めていきたいと思います。
当エッセイをご覧の皆様から「こんな話を聞きたい」という点が
ございましたら、是非お問い合わせ下さい!

2006年10月19日  S.Yoshihara
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