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IR物語 第14回「株主総会の楽しみ方~IR編~」


板倉雄一郎事務所パートナーの吉原です。

今回のエッセイでは、前回に引き続き「株主総会」を取り上げたいと思います。

ところで、皆さんは株主総会に参加されたことはありますか?
株主総会は、株主による議決権行使の場であると同時に、経営陣が株主と意見交換を行う場でもあります。

特に最近は、個人投資家向けIRが注目されるようになってきたので、株主とのコミュニケーションを大事にした株主総会を行う会社が増加していますね。
私は株主総会に参加するのが好きです。

それは会社に関する様々な情報を入手できるからです。また、株主総会を開催する側の立場として勉強させてもらう意味で参加しています。
そこで今回は、株主総会に参加する際、私なりに気をつけていることをご紹介したいと思います。

ポイントは大きく3つです。

1.株主総会の運営状況を確認する 
株主総会の運営状況を確認するというのは、「総会をどのような会場で行うのか」、「株主に対するお土産の有無」、「社員株主等の動員状況」等をチェックします。
ここでのポイントは会社の「コスト意識」です。
例えば、まだ事業規模の小さい会社や赤字が続いている会社が、やたらと豪華なホテルで開催したり、事業と関係ないお土産を株主に配っていたりすると、「どうなの?」って思います。それより、簡素な施設で最低限の機能を追求している会社の方が信頼できます。

本来の趣旨である「株主に対する情報開示&意見交換」は、お金かけなくてもできますよね。経営者がしゃべればいいんですから(笑)
要は「意義あるコストの使い方をしているか?」ということですね。
優秀な投資家は外で食事をしたり、何かのイベントに参加した時、すぐに主催者(お店)がどのぐらい儲かるか、無駄なコストを使っていないかをおおまかに把握することができます。

開示書類からも「会社のコスト意識が高いかどうか?」はある程度読み解くことができますが、会社のお金の使い方を自分の目で確かめてみるのも面白いと思いますよ。
ちなみに、トヨタ自動車の株主総会会場は、
今年も「愛知県豊田市トヨタ町1番地 当社本店」です。

昨年は2,050人の株主が総会に参加したそうですが、ホテルなんて使わずに「当社本店」って渋いですよねぇ。まさに「トヨタ」って感じです。
トヨタの株主総会には行ったことがないので、どんな総会なのか興味あります。行ったことがある方は誰か教えて下さい(笑)

2.(前半)報告事項の内容 
株主総会の進行は、大きく2つの流れに分かれます。
前半は、招集通知の添付書類に沿って議長(経営者)が事業報告を行います。招集通知の添付書類は法律で定められた記載内容なのですが、会社によってはオリジナルで様々な情報を追加して説明します。

いわば会社側からの1年間の活動報告ですね。
この段階では、株主は黙って聞くだけです。
質問しようとしても、たいていは議長から「後で質疑応答の時間に質問してください」って、あしらわれます(笑)
なので、この間は、議長の説明内容を吟味しつつ、質疑応答で何を質問するかを考えましょう。

説明内容のチェックポイントは、
「自社にとって都合の悪いことをきちんと説明しているかどうか」です。
経営者は、プレゼンにおいて自社にとって都合の悪いことにはあまり触れたがりません。

特に、経営者にとって、株主総会は株主の心象を悪くせずに、なるべく穏便に終わらせたいイベントであるため、その傾向が顕著です。
しかし、どんな会社にも経営課題はあります。

事業内容に関することだったり、資本政策に関することだったり・・・。
想定される経営課題や自分が疑問に思っている点を事前にピックアップしておいて、事業報告の際に説明がなかった事項については後半で質問できるようにまとめておくと良いと思います。

3.(後半)質疑応答及び議案の決議
そして、後半は質疑応答&議案の決議に移ります。
議案の決議のポイントは前回のエッセイでお伝えしたので、今回は質疑応答について触れますね。

質疑応答は、株主総会に参加した際の満足度を左右する重要な時間です。
例えば、株主からの質問がストレス解消目的の質問(例:「株価が下落したのはオマエらがたるんでいるせいだ。どうしてくれる!」等)ばかりだと、経営者も内心で「あぁ・・・なんてくだらない質問なんだろう」と思いながら、当り障りのない回答に終始します。
せっかくの質疑応答の場なのに、経営者・株主双方にとって得るものが少ないですよね。

しかし、株主からの質問内容がその会社の実態を把握した上での真っ当な質問であれば、たとえ耳の痛い質問であったとしても、真っ当な経営者はきちんと回答します。
このやり取りから得られる情報は株主にとって有益です。
そして、説明する経営者側にとっても意義が大きいです。
なぜなら、企業価値の最大化をミッションとする経営者は、このやり取りを通じて以下のサイクルで企業価値の向上を目指す必要があるからです。

株主が懸念している点について質問
→ 経営者が真摯に説明 
→ その説明に対して株主が納得、経営者への信頼度UP 
→ WACC低減
→ 企業価値向上 
(上記の展開を考えると、経営者が質問にまっすぐ回答しなかったり、キレたりすると、企業価値を毀損しているとも言えますね。)

良い見本は、バフェット率いるバークシャーの株主総会です。
今年の総会には約2万7,000人の株主が参加し、6時間にわたってバフェットとのやり取りを楽しんだそうです。
日本の会社であれば、途中で打ち切ってしまいそうなくらい長いですね。
しかし、バフェットが株主に語りかけることでWACCが低減するとしたら、たった6時間でどれだけ企業価値が増加するのでしょうか?
バフェットはそれを理解しているから、いくらでも付き合うのではないかと思います。(単に理念を共有した者同士の会話を楽しんでいるのかも・・・?)

参照エッセイ:SMU 第170号「アホな株主が企業をだめにする」

このエッセイをご覧の皆さんには、臆せずに真っ当な質問を投げかけて欲しいと思います。それが、他の株主のためにもなりますからね。

そして、ストレス解消目的の質問は極力控えましょう。
株主総会を開催する立場でもある私からのお願いです(笑)
株主総会って平日開催が多いのでなかなか参加しにくいですが、
皆さんも参加してみてはいかがですか?
きっと、その会社に関する新しい気づきがたくさんあると思いますよ!

PS 上記の実践例が↓のエッセイです。ご参考まで!

IR物語 第6回「IRを活用しよう!実践編」

2007年6月5日  S.Yoshihara

ご意見ご感想、お待ちしています!
次回パートナーエッセイは、6月7日(木)にShimoda氏が担当します。





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