板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

企業価値評価・経済・金融の仕組み・株式投資を分かりやすく解説。理解を促進するためのDVDや書籍も取り扱う板倉雄一郎事務所Webサイト

feed  RSS   feed  Atom
ホーム >  エッセイ >  パートナーエッセイ >  By S.Yoshihara  > IR物語 第33回「通期業績予想の動向を占う」

IR物語 第33回「通期業績予想の動向を占う」

(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

板倉雄一郎事務所パートナーの吉原です。

もうすぐ3月決算企業の決算発表シーズンですね。
投資家にとって決算発表の一番の見どころは「通期業績予想」ではないでしょうか。

今回のエッセイでは、「通期業績予想」に関する開示情報の活用方法を解説した上で、今年の各企業による通期業績予想の発表が株式市場にもたらす影響について占ってみたいと思います。
(後半は全くの私見ですので、競馬場のオヤジの予想を聞くのと同じようなノリで読んでくださいね・・・)

【 「通期業績予想」って何? どこに記載されているの? 】

まず、「通期業績予想」とは、「決算発表時に開示する「決算短信」に記載されている新年度業績の予想数値」を表します。

「通期業績予想」は該当する企業のことを一番よく知っている(であろう)経営者が発表する数値です。また、企業価値評価をDCF法で行うにあたり、将来業績予測の1年目の数値は2年目以降の数値と比べて企業価値に与える影響が大きい(※)ですし、2年目以降の将来業績を予測する上でも有益な情報となります。
(※)WACC(資本コスト)による割引度合いが小さいため

そのため、企業が発表する「通期業績予想」は非常に重要な情報として扱われているわけです。

ちなみに、「決算短信」とは、決算が確定した段階で(有価証券報告書より前に)速報として開示する資料です。
メディアが取り上げる決算情報の多くは決算短信を情報源としています。
(参考)「平成20年2月期 ファミリーマート決算短信

上記の例では、ファミリーマートの平成20年2月期(前期:平成19年3月1日?平成20年2月29日)に関する決算情報(実績)と平成21年2月期(今期:平成20年3月1日?平成21年2月28日)に関する「業績予想」が掲載されています。
(通期業績予想は、決算短信1枚目の1番下に記載されています)

【通期業績予想をどのように読み解けばよいの?】

通期業績予想は、経営者が投資家へ送る「今期業績の方向性を示すメッセージ」であり、その数値に経営者による今期の経営戦略や外部経営環境に対する認識が現われます。

こうした経営者によるメッセージを読み解くために、業績予想の方向性(増収or減収、増益or減益)を確認した上で、その理由を検証しましょう。

その際に参考になる資料は主に下記の2つです。

(1)決算短信
決算短信の添付資料には、業績予想の根拠について説明する記載箇所があります。
(先ほどの「ファミリーマート平成20年2月期決算短信」の場合にはP.7に記載があります。)

(2)パワーポイントによるIR資料
最近、多くの企業は、決算短信等の法定開示書類以外にパワーポイントを用いた分かりやすい決算説明資料を開示しています。
例:「ファミリーマート平成20年2月期決算説明会資料」

これらの資料を活用し、それでも分からなければIRに質問することで、業績予想の前提条件をより深く理解することができます。

また、ある企業のある年度の業績予想だけを分析していても、なかなかその意味を理解するのは難しいので、過去の業績の推移や同業他社の業績予想と見比べてみましょう。これにより、その業績予想の特徴がより理解しやすくなります。

【業績予想の方向性を予想する】

通期業績予想は将来業績予測に重要な影響を及ぼすことから、発表の内容によっては株価水準が大きく変動することがあります。

その点を踏まえると、「通期業績予想が発表された後にその内容を吟味して投資する」よりも、「あらかじめ発表される業績予想の内容を予想した上で投資する」方がリターンを得るチャンスは大きくなります。
(その分、リスクを取ることにもなりますけどね)

そのため、私は、自分が投資している各企業について、必ず決算発表前に「発表される業績予想の方向性」(増収or減収、増益or減益)を予測するようにしています。

ここからは、全くの私見による予想なのですが、今年の各企業の業績予想は相当弱気な数値であり、それを受けて株式市場はさらに下落するのではないかと思います。

IR担当者の心理からすると、現在のネガティブな経営(相場)環境の中では、どうしても業績予想を保守的に出したくなります。
なぜなら、相場環境が悪い中で下方修正を出すと、実態以上に大幅に売られることがあるからです。

投資家のマインドが弱気な時って、既に実態は悪いと予想されていて株価がそれに応じて下がっていても、実際にネガティブな見通しが会社側から発表されると、なぜかさらに下げる傾向があります。
(完全に個人的な経験則で根拠はありません・・・)

以前、日経平均株価が7,000円台まで下落したのは2003年の3月から5月の間でした。最安値は4月28日7,603.76円であり、主要3月決算企業の決算発表時期です。そして、そこが過去5年の底値でした。

というわけで、既に日本株式は割安だという指摘も多いですが、私はさらに下がるのではないかと予想しています。

しかし、保守的な予想を出す(と予想される)ので、四半期が進むごとに上方修正を発表する企業が必ず出てきます。

今年は、「サブプライムローン問題による金融機関の混乱が落ち着きを取り戻す(であろう)年の後半頃に、上方修正を発表できる会社」が狙い目だと思います。

特に、
「提供しているサービス(製品)が世界的に評価の高い大型株」、もしくは、
「内需関連でも既存のサービスに置き換わる新サービスを提供することで成長し、マクロの影響を受けにくい中小型株」
は立ち上がりが早いのではないでしょうか。

あんまりにもシンプルな(もっと言えば稚拙な)ロジックだと感じた方もいらっしゃるかもしれません。
私も「必ず」そのとおりになるとは思っていません。
予想が外れたと感じたらすぐに方向転換します・・・。
自分の考えを過信しないことも投資でパフォーマンスを出し続けるためには重要ですからね。
(なので、競馬場のオヤジの予想だと思って読んで下さい(笑))

ただ、自分はこのシナリオになる可能性があると思っているので、4月末から5月にかけて株式を買おうと思います。
(そのため、今の私は現金ポジションを高めにしています。)

すぐに株価が上昇することは期待薄ですが、「年」単位でじっくり持てる方であればチャンスだと思いますよ。

PS^1
東証上場企業の決算発表予定日はこちらでチェックできます。
また、様々な企業の決算短信を一度にチェックしたい場合はこちらがオススメです。
皆さんも気になる企業の決算発表をチェックしてはいかがでしょうか?

PS^2 
5月10・11日の合宿セミナーは既に30人以上のお申込みを頂いております。ご参加ありがとうございます!
この時期はちょうど3月決算の大手企業が決算発表する時期なので、それらについても皆さんとディスカッションできるのを楽しみにしています。


2008年4月17日  S.Yoshihara
ご意見ご感想、お待ちしています!

IR物語バックナンバー
IR物語 第32回「企業価値評価を就職に活かす!」





エッセイカテゴリ

By S.Yoshiharaインデックス