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IR物語 第18回「若手お笑い芸人と新規上場企業」


板倉雄一郎事務所パートナーの吉原です。

いきなりどうでもいい話ですが、私は若手お笑い芸人のネタが好きです。

若手お笑い芸人って、次から次へと登場してますね。
最近ツボにはまったのは、小島よしおのネタです。

皆さん、ご存知ですか?賛否両論ありそうなネタですが・・・。
若手お笑い芸人のネタを見ていると、彼らの姿に上場したばかりのベンチャー企業の姿がダブります。

両者はすごく似ていると思うんです。
それってどういう意味かと言うと・・・
TVに出る若手お笑い芸人(上場する会社)って、ひとつくらいは面白いネタを持っているワケです。

でも、常に新しいネタを仕込んだり、司会業や俳優等にポジションを変えていかないと(新規事業を創出しないと)、一発屋で終わってしまいます。

それに加えて、ライバル(新規上場企業)は毎年たくさん(150社前後)デビューします。

デビュー仕立てのライバルはチヤホヤされる一方で、デビューから時間が経過したお笑い芸人は結果を出し続けないと忘れられてしまいます。

ベテランの大物芸能人や続々デビューする若手と戦いながら、お客さんの評価を得て、芸能界(株式市場)で生き残っていかなければなりません・・・
最近は、そうした状況に嫌気がさして、芸能界(上場)やめて一般人に戻るケースもあります。

上記のとおり、両者はとても似ていると思いませんか?
大きな可能性を秘めている一方で、勝ち残るのは一握りだけ・・・。
新興市場における上場企業の経営陣の一員として悪戦苦闘している私は、若手お笑い芸人に対して同志意識を感じます。

先日、ある個人投資家向け説明会に参加して、将来が期待される若手お笑い芸人(新規上場企業)と出会いました。

今回のエッセイでは、皆さんに新ネタをご紹介したいと思います!
今回、私が参加した個人投資家向け説明会は、
「インタースペース(証券コード:2122、マザーズ)」、
「夢の街創造委員会(証券コード:2484、ヘラクレス)」、
「オウケイウェイヴ(証券コード:3808、セントレックス)」
による3社共催でした。

この3社には多くの共通項があります。
経営者が若く(30~40代)、
昨年上場したばかりのベンチャー企業であり、
上場時に急騰した株価はその後低迷が続いており、
現在の時価総額は50億円前後、ということです。
ここからは、この3社のプレゼンを受けて私なりに感じたことについて、僭越ながらコメントしてみたいと思います。

【インタースペース】

<事業内容>
主に、アフィリエイト(成果報酬)型広告『アクセストレード』を運営。
アフェリエイト広告市場は拡大基調にあり、業績は順調に拡大中。
今後は、アフェリエイトサービスに加えて、「ペイパーコール(着信課金型広告)」サービスに注力するそうです。
2006年9月期実績 売上高 3,131百万円 経常利益 226百万円
2007年9月期予想 売上高 5,044百万円 経常利益 406百万円

<経営者:河端伸一郎氏>
「元大和證券出身=イケイケタイプ」かと思いきや、物静かで人当たりが非常にソフト。カリスマ的な雰囲気を醸し出すような いわゆる「ベンチャー経営者」とは対極のタイプです。
様々な情報を積極的に吸収しながら、市場動向や自社の状況を客観的に把握し、次に打つべき手を常に考えている印象を受けました。
そして、河端社長を語る上で外せないのは、「板倉雄一郎事務所の合宿セミナー卒業生」であることです!
ぜひ、河端社長には当セミナーで学ぶ「企業価値創造のメカニズム」を実際の経営に活かして欲しいと思います。

【夢の街創造委員会】

<事業内容>
主に、出前フード専門のWebサイト『出前館』を運営。
大手ピザチェーン等が加盟店に加わることで、業績は順調に拡大中。
今後は地域の中規模チェーンや個店の取り込み&サービスラインの拡大によりさらなる成長を目指すとのことです。
2006年8月期実績 売上高 649百万円 経常利益 149百万円
2007年8月期予想 売上高 901百万円 経常利益 262百万円

<経営者:中村利江氏>
中村氏は今回の説明会で唯一の女性経営者です。
コンサルタントとして現在の会社に携わった後に、前社長に請われて社長に就任。月給10万円で「出前館」立ち上げの苦しい時期を乗り切ったそうです。
事業内容や将来戦略等を具体的な数値を用いて論理的に説明することについては、3人の中では最もよかったと感じました。
また、プレゼン前の準備時におけるスタッフとのやり取りから、仕事に厳しい雰囲気が伺えました。

【オウケイウェイヴ】

<事業内容>
ネット上でユーザー同士が質問・回答するQ&Aサイトを運営。
企業へのQ&Aに関するシステム提供及びQ&Aサイトの広告収入の増加により、業績は順調に拡大中。
最近、アメリカではネット上でユーザー同士が質問・回答するQ&Aサイト関連の市場が大きくなり始めていることから、日本及び世界で事業を拡大していく計画だそうです。
2006年6月期実績 売上高 664百万円 経常利益 107百万円
2007年6月期予想 売上高 925百万円 経常利益 167百万円

<経営者:兼元謙任氏>
今回登場した経営者の中で、最もベンチャー経営者らしい雰囲気を持った方であり、多くの方から支援を得られるキャラクターだと感じました。
実際、オウケイウェイヴの社外取締役や取引先には著名なメンバーが参加しています。
これまでご紹介した2社の経営者に比べると、具体的な数値を用いた論理的な説明は乏しかったのですが、「Q&Aサービスで世界に進出することで世界中の困っている人達を助けたい!」という熱いメッセージは伝わってきました。

【全体を通じての感想】

3社はいずれもインターネットを活用した仲介事業であり、事業効率が高い(利益率が高い)点が良いと思いました。
しかし、これらのビジネスは事業規模を拡大しにくいのが難点です。
今回の説明会では、どの会社も将来業績に関する具体的な数値目標の説明を避けていたので、それぞれの会社が将来ビジョンをどこまで具体的に描けているのかについては判断しかねました。
また、3社の事業はいずれも、一般ユーザー(サイト運営者、宅配を注文する人、Q&Aに参加する人)としては無料で参加できるので、まずはユーザーとして参加してみたいと思いました。
上記の会社は「ダウンタウン」や「ナインティナイン」、はたまた「チャップリン」になるのか?
それとも、「テツアンドトモ」や「波多陽区」になるのか?
(まだ現役なので、失礼ですかね・・・)
上記3社の将来に注目です。

PS
今回のエッセイではベンチャー企業を若手お笑い芸人に例えて書きましたが、上記3社を揶揄する意図はありません。

むしろ、私はベンチャー企業経営の難しさを痛感しているので、上記3社に対して敬意を表するとともに、同じ立場としてエールを送りたいと思います。

2007年7月31日  S.Yoshihara

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