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IR物語 第36回「日経平均株価に関するトリビア」

(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

板倉雄一郎事務所パートナーの吉原です。

気がつくと、今年も半分が過ぎようとしていますね。
今年における皆さんの投資パフォーマンスはいかがでしょうか?

ちなみに、日経平均株価について、昨年末と(6月10日)現在の水準を比べるとマイナス8.4%という結果になっています。
(昨年末:15,307.78 → 現在:14,021.17)。

こんな風にメディアでも取り上げられることの多い日経平均株価。
ご自身のパフォーマンスを図る上で、日経平均株価をひとつの目安とされている方も多いのではないでしょうか。

私もその一人だったのですが、最近、自分が「日経平均株価」について意外と知らない点が多いことに気がつきました。

そこで、今回のエッセイでは、日経平均株価に関する様々なトリビアをご紹介したいと思います。

【初級者編】

Q.「日経平均株価」って何ですか?

A.東京証券取引所第一部に上場する株式銘柄のうち225銘柄を対象として算出する株価指数であり、日本経済新聞社が算出・公表しています。

(日経平均株価の詳細についてはこちらをご覧ください)

日経平均株価は流動性とセクターバランスを考慮して選定された「225銘柄」より構成されており、「TOPIX」(東京証券取引所第一部上場の内国普通株式全銘柄を対象にした株価指数)とはコンセプトが異なります。

(TOPIXの詳細についてはこちらをご覧ください)

ここまでは良く知られた話ですね。
それでは、もう少し突っ込んでみましょう。

【中級者編】

Q.日経平均株価の225銘柄はどのような業種により構成されているか?
また、採用銘柄の中でどの業種が最も多い?

A.日経平均株価は35の業種で構成されており、全ての業種のバランスを考慮して銘柄が選定されています。
(ちなみに、これは日本経済新聞による分類であり、各証券取引所で採用されている業種の分類は33業種です。)

1位「電気機器」 29社(12.9%)
2位「化学工業」 16社(7.1%)
3位「機械」 14社(6.2%)
4位「銀行」・「食品」・「非鉄金属・金属製品」各12社(5.3%)

(業種及び採用銘柄の詳細についてはこちらをご覧ください)

採用銘柄上位の業種を見ると、「モノ作り日本」の特徴を良く表しているといえます。

ちなみに、某投資銀行マンの話によると、投資銀行のトレーダーには225銘柄の証券コードを全部覚えている人もいるそうです。
全部覚えたからって何だという話ですが、さすがですねぇ・・・。

これを見ると、採用銘柄数の多い業種の値動きが日経平均株価に与える影響が大きそうに感じられます。
確かにその要素は大きいのですが、実はそれだけではありません。

【上級者編】

Q.日経平均株価に大きな影響を与える銘柄 TOP10は?

A.日経平均株価に採用されている銘柄の値動きは、日経平均株価に等しく影響を及ぼすわけではありません。

例を挙げると、同じ採用銘柄の「ファナック」と「双日」では、それぞれの株価が等しく1%値動きしたとしても、日経平均株価に与える影響は約300倍異なります。
(ここからの議論は08年6月6日現在のデータを使用しています。)

これは、それぞれの銘柄の1株当たり価値が異なるから、そして、日経平均株価を算定する上で、各銘柄の株式における額面の違いを調整しているからです。

(この計算式の詳細に興味のある方はこちらをご覧ください)

なお、日経平均株価に大きな影響を与える銘柄 TOP10は下記のとおりです。
下記表のウェイトを1位から225位まで合算すると100%になります。
S.Y_036_E0.JPGやはり電気機器の銘柄が多いですが、それ以外の業種もランクインしています。
このランキングは、いわゆる時価総額の大きさではなく、みなし額面50円相当の1株当たり価値の高い銘柄が上位に来ています。

この上位銘柄の傾向から、
「日経平均株価は国際優良銘柄(特にハイテク銘柄)の影響を受けやすい」なんて言われることがあります。

そして、その特徴を理解しつつTOPIXと比較することで、相場の状況を把握することができます。いわゆる「NT倍率」という指標です。

「NT倍率 = 日経平均株価 ÷ TOPIX」

例えば、6月10日現在の日経平均株価は14,021.17、TOPIXは1,383.20なので、

14,021.17 ÷ 1,383.20 = 10.1367626
NT倍率は「10.14」になります。

この指標は、NT倍率が高くなる時は国際優良銘柄(特にハイテク銘柄)のパフォーマンスが相対的に良い時で、NT倍率が低くなる時はその反対というように、相場全体の中でどの属性の銘柄のパフォーマンスが相対的に良いかを把握するために用います。

ちなみに、2008年のNT倍率は、概ね10.1倍~10.4倍の間で推移しています。

以上、日経平均株価に関するトリビアのご紹介でした。

最近の株式市場はこう着状態が続いているので、何を保有していてもパフォーマンスの良い上昇相場と違って、どの属性(業種・企業規模・輸出/内需等)の銘柄を保有しているかによってパフォーマンスが変わります。

日経平均株価の内容を理解すれば、日経平均の上げ下げに一喜一憂することなく「どの属性の銘柄が元気良いか」を把握することができますので、皆さんも参考にしてみてはいかがでしょうか。

P.S.
6月29日(日)開催のオープンセミナー「有価証券報告書の読み解き方」での対象企業の募集にご協力頂き、ありがとうございました!

皆様のご意見を踏まえ検討した結果、「アデランスホールディングス」を選定いたしました。

話題も豊富で面白いコンテンツになると思います。また、代表の板倉の講演内容もとても興味深いテーマなので、ご興味のある方は是非こちらまで!

2008年6月12日  S.Yoshihara
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