板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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IR物語 第19回(番外編)「ミスターマーケットとの付き合い方」

(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

板倉雄一郎事務所パートナーの吉原です。

8月にお休みを頂いている間に、株式市場が大きく下げましたね。

皆さんはどのように対処しましたか?
今回は休み明けのエッセイということで、IR物語の番外編として「ミスターマーケットとの付き合い方」について触れてみたいと思います。

私は仕事でIR業務を担当していることもあって、株式市場の動向を興味深く見ています。
その中で、株式市場が大きく下落する時にいつも感じることがあります。
それって何かと言うと、上がる時はじりじり上がって、下がる時は一気に下がる。

ということです。
皆さんも、時間をかけて少しずつ積み上げてきた含み益をあっという間に溶かしてしまった経験はありませんか?
人間心理が色濃く反映された「ミスターマーケット」の動きを読むことは、一筋縄ではいきません。

そして、「ミスターマーケット」に翻弄されないためには、マーケットに対する心構えが重要だと思います。

まず、ミスターマーケットと付き合うにあたり、私が自分に言い聞かせている格言が2つあります。

ひとつは「人の行く裏に道あり、花の山」であり、
もうひとつは、「アタマとシッポはくれてやれ」です。
「人の行く裏に道あり、花の山」は野村證券のWEBサイトで紹介されているほど有名な格言です。

要は他人と逆の行動を取れってことですね。

先ほどの「上がる時はじりじり上がって、下がる時は一気に下がる。」というマーケットの性質を考えると、投資でリターンを上げるためには「一気に下がっている時に買いを入れて、じりじり上がっている時に売りを入れる」のが望ましいです。
これって、まさに他人と逆の行動を取る必要があります。

そして、「アタマとシッポはくれてやれ」も有名な格言です。
自分の持ち株がじりじり上がっていく中で「そろそろ売ろうかな・・・でも、まだ上がりそうな気がする・・・」と思っているうちに急落に見舞われ、結果的に直近の株価より安い株価で売ってしまうことってよくある話です。

また、マーケットの暴落時に「ここは買い場だ!」と思っても、「相場の底を見極めてから買おう」なんて思っているうちに反発してしまったりすることもよくある話です。

この格言は上記のような事態を防ぐために語り継がれている格言です。
私が思うに、この2つの格言を忠実に実行すると投資リターンに好影響をもたらします。

投資経験の豊富な方にしてみれば、「そんなの当たり前の話だよ」っておっしゃると思います。

しかし、このシンプルかつ強力な2つの格言をもってしても、ミスターマーケットとうまく付き合うには十分ではありません。

なぜなら、この格言だけでは2つの点において問題が生じるからです。
ひとつは、「誤って解釈する可能性があること」であり、
もうひとつは、「不安がその実行を妨げてしまうこと」です。

「誤って解釈する可能性があること」とは、例えば下記のような例です。

最近、新興市場の銘柄が長期間にわたって下落しています。
これって、過去に割高な水準まで上がってしまった株価が下落しているわけですが、この下げ過程において「みんなが売っているから買いだ!」と
と言ってまだ割高な段階で買ってしまうと、さらなる下落に付き合わされるハメになります。

また、自分の保有している銘柄の株価が順調に上がっている時に「そろそろアタマは捨てて売る頃だな」と思って売ったとしても、まだ割安だったとしたら、自分が売ってからの上がり幅の方が大きかったなんていう悔しい話になることもあります。
もうひとつの「不安がその実行を妨げてしまうこと」とは、
そもそも2つの格言を頭では理解していても、実際に行動に移す段階になると、「不安」という人間心理がその実行を妨げるということです。

「みんなと逆の行動をとって間違いだったらどうしよう・・・」
「この下げ局面で買いを入れた後にまだ下がったらどうしよう・・・」

この点については、先日の下田さんのエッセイでも説明がありましたね。
その不安を振り払うには自分なりの根拠が必要です。

それでは、これらの問題を解決するためにはどうすればよいか?
賢明な読者の皆さんは既にお気づきかもしれませんが・・・
やはり、『価値と価格の違いを理解する』しかないと思います。

参照エッセイ:Deep KISS 第40号「価値と価格

この2つの格言が有効なのは、1つの前提があるからです。
その前提とは、「株式市場は熱狂や総悲観によって実態(価値)と乖離した株価(価格)をつける」ということです。

そのため、この格言を有効に活用するには、妥当な「価値」を把握する考え方を身に付ける必要があります。

逆にいえば、妥当な「価値」を把握できる方が株式投資を行う際には、必然的に2つの格言に則った売買になります。

そして、『価値と価格の違いを理解する』という考え方は、株式投資に限らず、個人が直面する様々な意思決定に活用できます。

個人的には、株式投資もさることながら、この点が一番重要だと思います。

参照エッセイ:Deep KISS 第53号「価値と価格・シリーズ3
株式市場が低調であり、個人の将来不安を煽る様々な報道がなされている中、板倉雄一郎事務所では、多くの方に「妥当な価値を把握する考え方」を身に付けて欲しいと考えています。

そのために当事務所が開催している合宿セミナーは、9月大阪・10月東京を予定しています。
将来につながる様々な知識や知恵、そして様々な出会いがありますので、是非ご参加下さい。
皆さんとの出会い、そして一緒に学ぶことを楽しみにしています!

2007年9月11日  S.Yoshihara

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