板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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IR物語 第20回「メッセージが人を集める」


(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)
板倉雄一郎事務所パートナーの吉原です。

先日の3連休、皆さんはいかがお過ごしでしたか?
私達は合宿セミナーin大阪を開催しました。

東京以外の地域で合宿セミナーを開催するのは初めてだったにもかかわらず、約70人の方々が参加してくださいました。

合宿セミナーも通算で27回目になる中で毎回感じることがあります。
それは、合宿セミナーに参加されている方々が醸し出す雰囲気がすごく良いことです。これは、このセミナーに参加する皆さんが、自分の頭で考えて自発的に行動する方ばかりだからだと思います。

このような良い雰囲気を持った方々が集まり続けてくれるのはなぜだろうかと考えると、セミナーの運営方針に突き当たります。

板倉雄一郎事務所が開催するセミナーは当WEBでしか告知を行いません。
したがって、参加してくださる方は、WEBのエッセイ等を読んで当事務所の考え方に共感してくださった方か、(2)過去に受講してくださった方々から紹介して頂いたかのいずれかになります。

セミナー主催者と受講者が基本的な考え方について共感していることが、このセミナーの雰囲気を生み出していると思うのです。

これって実は、経営者と株主の関係と一緒です。
よく上場会社(経営者)は、株主を選ぶことはできないと言いますよね。
確かにそれはそのとおりです。

そして、セミナー主催者も参加者を選ぶことはできません。
しかし、経営者(セミナー主催者)の基本方針や言動は、集まってくる株主(受講生)に影響を与えます。

例えば、短期取引の投資家が望む資本政策を打ち出せば、短期取引の株主が集まってきます。一方、株主の長期的な利益を重視する方針を打ち出している会社には長期保有を前提とした株主が集まってきます。

先日の合宿セミナーで取り上げました任天堂を例に考えてみましょう。
任天堂は約8兆円の時価総額でありながら、株主数は同じ規模の時価総額の会社と比較して株主数が少ないです。ちなみに、任天堂と同規模の時価総額の会社と株主数を比較したデータは下記のとおりです。

NTT    時価総額 8兆2,641億円 株主数 1,134,306人
キャノン  時価総額 8兆2,018億円 株主数  120,770人
任天堂   時価総額 8兆1,318億円 株主数   28,873人
NTTドコモ 時価総額 7兆6,619億円 株主数 326,839人
(時価総額は07年9月21日現在、株主数は直近事業年度末のデータ)
これは最低投資単位が非常に大きい(現在は500万円以上必要)からということが大きいのですが、会社の方針として株主の数を追い求めていない印象を受けます。

このように表現すると、株主に優しくないかのような印象を受けますが、私は決してそうではなく、むしろ、(既存)株主利益を重視した合理的な判断だと思いました。
任天堂は投資単位の引き下げに対する考え方について、以下のようにコメントしています。

「当社は、投資単位の引下げは、投資家層の拡大ならびに株式の流動性を高めるための有効な施策のひとつであると認識しています。しかしながら、現行の投資単位からのさらなる引下げについては、多額の費用が発生します。(一部省略)従いまして、現時点では投資単位の引下げは予定していません。」(任天堂リリースより一部抜粋)
要は、投資単位の引き下げは費用面も含めて考えると、株主利益につながらないと考えているわけですね。

参照エッセイ:BTB 第4回「株式分割、配当

また、最低投資単位が高いということは、投資する側にそれだけの真剣さを求めていることの裏返しであり、価格の変動だけに注目して安易に投資する株主の参加を減らす効果があると思います。

こうした株主に対応することは会社にとってコスト負担になるため、その意味でも株主利益につながると言えます。

この他、ストックオプション制度や株主優待制度を導入していない点や、株価水準に応じて自己株式の取得を実施している点にも、株主利益に配慮している印象を受けました。

もっとも、このことだけで「任天堂の株をすぐに買うべき!」という結論にはならないですけどね。

任天堂の理論株価と現在の株価の比較は、先日の合宿セミナーに参加してくれた皆さんだけが知っています(笑)
ちょっと話がそれてしまったので、元に戻しますと・・・
こうした資本政策の方針やオペレーションって会社からのメッセージのひとつであり、参加する株主の構成に影響を及ぼすと思うのです。

そして、我々が日々書いているエッセイも上記の資本政策と同様に、セミナーに参加してくださる皆さんに何かしらの影響を与えているのだと思います。

これからも自分の頭で考えて行動する多くの方々に参加して頂けるよう、エッセイを通じて皆さんに私達の考え方や日々感じていることを伝えていきますので、どうかよろしくお願いします!

PS
株式相場が軟調な時に、一般的にはマネー系のセミナーに分類されがちな(本当はそれだけではないのですが・・・)当事務所のセミナーに参加してくださる方々の考え方って、投資に向いていると思います。

2007年9月25日  S.Yoshihara
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